本書の半分の論考が「地域包括ケア」とは関係のないテーマで書かれている実に不誠実な本だ。
それはおいておくとしても、厚労省官僚の作文であるかのような、無味乾燥な論考群に辟易した。厚労省の御用学者が書いたような書物を出して恥ずかしくないのか?
厚労省は、かつて、障がい者福祉において、支援費制度の施行により急増したサービス需要を抑制すべく、「自立支援」とは名ばかりの法令を施行し、障がい者を再び親元もしくは施設へと幽閉した。「地域包括ケア」も、介護保険制度の施行により急増したサービス需要を抑制すべく、「共同体」としても「協同体」としても空洞化した地域社会へ高齢者の介護と福祉を無責任にも丸投げするために捏造されたコンセプトに過ぎない。「地域包括ケア」は、1979年に自民党のクソどもがでっち上げた「日本型福祉(社会論)」の焼き直しでしかない。
もちろん、病院、社協、NPO、そして地域住民が実践してきた「地域包括ケア」の事例は多々ある。それらの実践の成果を再評価し、近年の小規模多機能共生ホームや子ども食堂の展開を踏まえて、「地域包括ケア」の可能性を展望するのだったらまだわかる。しかし、本書はそうした内容ではない。厚労省のご都合主義的な制度欠陥の隠蔽策を、税の逆進性の強化と法人税減免優遇施策により社会保障の財源を切り詰めてきた政府の出鱈目をなぜ真っ向から批判しない?
御用学者呼ばわりされるのが不本意なのだったら反論してみろこのタコ。
目次
序――地域包括ケアと生活保障
第一章 地域社会をいかに支えるのか――生活保障の再編と地域包括ケア[宮本太郎]
一 .地域社会の三つの困難
二 .生活保障の新しいかたち
三 .手がかりとしての地域包括ケアシステム
四 .生活保障の再構築と地域包括ケア
五 .むすびにかえて
第二章 「関係の自治体」の再建に向けて――東日本大震災と市町村合併の経験から[今井照]
一 .自治の原点、自治体の本質
二 .平成の大合併の終焉
三 .東日本大震災と自治体
四 .生命と安全を守る自治体の創出
第三章 生活保障システムの転換と地域包括ケア[井上信宏]
一 .問題の所在――新しい社会的リスクと地域包括ケアの焦点化
二 .生活保障システムと高齢者介護
三 .介護の社会化とケアの配分
四 .地域包括ケアシステムの系譜
五 .地域包括ケアを新しい社会システムにするために――おわりにかえて
第四章 地域包括ケアシステムにおける自治体行財政運営の課題[沼尾波子]
一 .はじめに
二 .介護保険財政の現状と地域包括ケアシステム
三 .ケアの計画とそのジレンマ
四 .事例にみる地域包括ケアの課題
五 .地域包括ケアシステム構築に向けた課題
六 .むすびにかえて
第五章 自治体病院の経営再生[伊関友伸]
一 .全国で起きる自治体病院・地域医療の危機
二 .医師や看護師不足はなぜ起きたのか
三 .病院の二極分化
四 .自治体病院のお役所体質
五 .質の高い病院経営に必要なもの
六 .自治体病院の存在意義
七 .地域医療再生に必要なこと
八 .地域医療再生における「共感」の重要性
九 .地域医療の再生と民主主義の再生
第六章 日本における社会的企業の現状と課題[大門正彦]
一 .はじめに
二 .社会的企業とは何か
三 .社会的企業の現状と課題
四 .社会的企業による就労支援の具体的実践例
五 .まとめ
座談会 地域包括ケアと地域共生のこれから[宮本太郎・猪飼周平・沼尾波子・堀田聰子]
●地域包括ケアと地方行財政の現状
●地域包括ケアの二つのディスコース
●地域包括ケアと新たな転換の可能性
●地域包括ケアのマネジメントとサービス提供体制
あとがき
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