桐野夏生,2023,真珠とダイヤモンド 上・下,毎日新聞出版.(12.20.24)
上
1986年春。二人の女が福岡の証券会社で出会った。一人は短大卒の小島佳那、もう一人は高卒の伊東水矢子。貧しい家庭に生まれ育った二人は、それぞれ2年後に東京に出ていく夢を温めていた。野心を隠さず、なりふり構わずふるまう同期、望月昭平に見込まれた佳那は、ある出来事を契機に彼と結託し、マネーゲームの渦に身を投じていく。
下
時代はバブル全盛に。東京本社に栄転が決まった望月と結婚した佳那は、ヤクザの山鼻の愛人・美蘭のてほどきで瞬く間に贅沢な暮らしに染まっていく。一方の水矢子は不首尾に終わった受験の余波で、思いがけない流転の生活がスタートする。そして、バブルに陰りが見え始めた頃、若者たちの運命が狂い出す…。
冒頭、主人公の一人でホームレスの水矢子は、厳寒の公園で夜を明かす。
と、そこに、親友、佳那が現れ、昔ばなしに花を咲かせる。
巻末、その佳那は、ヤクザに追いつめられて、夫とともにマンションから身を投げすでに死んでいることが明かされる。
公園をさまよう水矢子は、2020年11月16日、東京都渋谷区幡ヶ谷で殺害されたホームレスの女性をモデルとしたものであろう。
福岡の証券会社を主要な舞台とした上巻、東京を舞台とした下巻ともに、一気に読ませる濃厚なストーリーテリングに圧倒される。
バブル経済の狂奔と、その崩壊による人心の荒廃、醜い欲望、復讐、諍い、そして死、とくに、下巻後半部の容赦のない救いようのなさは徹底している。
読後に、底知れぬ悲しみだけが残る。
それにしても、スゴい小説だ。