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本と音楽とねこと

【名著】灰色のバスがやってきた【再び】

Lutzius,Franz,1987,VERSCHLEPPT: Der Euthanasie‐Mord an behinderten Kindern im Nazi‐Deutschland(=1991,山下公子訳,『灰色のバスがやってきた』草思社(¥2,242)10.6.23

 ナチズムが大量殺戮したのはユダヤ人やジプシーだけではなかった。薬殺、あるいは人体実験により殺戮された障害児たちの足跡と、子どもたちを救おうとした施設職員たちの苦闘が、人物群像を再構成するという手法で綿密に描かれている。
 優性思想の行き着く先にあるものがなんなのか、深く考えさせられる作品だ。
こんないい本が絶版になっているのは実に惜しい。ぜひ復刊してもらいたいものだ。

大戦中、ナチが組織的に殺害していったのはユダヤ人ばかりではない。ドイツ本国と占領地のすべての障害者もまた、「安楽死」の名の下に整然と殺されていった。その数は25万人といわれている。にもかかわらず、近年になるまでこの「事実」はあまり知られてはいなかった。本書の著者は、西部ドイツのある障害児施設の沿革を取材するうちに、このナチによる障害者殺戮の恐るべき記録に出くわした。この施設からだけでも800名近くの収容者が、「灰色のバス」に乗せられて行く先もわからぬ地へと強制移送され、そのほぼ全員が、二度と帰っては来なかったという。本書は、それらの犠牲者たちのたどった運命を、すべて事実にもとづいて生々しく再現したノンフィクション・ノヴェルである。

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コメント一覧

通りすがりの小心者
最近、臓器移植推進者が安楽死施設創立をしきりに煽っている。
賛同者の中には自殺志願者を装って「楽園」と錯覚するような美辞麗句を並べて社会的弱者に擦り寄ろうとしているようだ。
彼らの主張を聞いているとナチスの優生学で用いられた表現が多く出てくる。
国家規模での間引きも是とするその姿勢は自殺願望ではなく破壊衝動の表れなのではないかと感じる。
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