ナチズムが大量殺戮したのはユダヤ人やジプシーだけではなかった。薬殺、あるいは人体実験により殺戮された障害児たちの足跡と、子どもたちを救おうとした施設職員たちの苦闘が、人物群像を再構成するという手法で綿密に描かれている。
優性思想の行き着く先にあるものがなんなのか、深く考えさせられる作品だ。
こんないい本が絶版になっているのは実に惜しい。ぜひ復刊してもらいたいものだ。
大戦中、ナチが組織的に殺害していったのはユダヤ人ばかりではない。ドイツ本国と占領地のすべての障害者もまた、「安楽死」の名の下に整然と殺されていった。その数は25万人といわれている。にもかかわらず、近年になるまでこの「事実」はあまり知られてはいなかった。本書の著者は、西部ドイツのある障害児施設の沿革を取材するうちに、このナチによる障害者殺戮の恐るべき記録に出くわした。この施設からだけでも800名近くの収容者が、「灰色のバス」に乗せられて行く先もわからぬ地へと強制移送され、そのほぼ全員が、二度と帰っては来なかったという。本書は、それらの犠牲者たちのたどった運命を、すべて事実にもとづいて生々しく再現したノンフィクション・ノヴェルである。
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