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本と音楽とねこと

新平等社会

山田昌弘,2006,『新平等社会――「希望格差」を超えて』文藝春秋(¥1,500,※文庫版有り)09.10.21

 『希望格差社会』の続篇。
 経済格差・貧困問題のみならず、「希望格差」はもちろん、少子化、社会保障、教育問題にも切り込んだ好著だ。
 ミクロからマクロへ、マクロからミクロへ、自在に視点を転換させる現状分析はさすがだと思う。とくに目新しい知見が得られたわけではないが、思考を整理するのに役立った。

「家族社会学」という学問の視点から格差問題に取り組むのは、東京学芸大学の山田昌弘教授だ。生産性の高い仕事に就く者と就けない者、その結果として豊かな生活を築く者と築けない者の違いを単純に比較するだけでは、格差問題の本質は見えないと言う。
深刻なのは、生産性の低い仕事に就くが故に生活に窮している状態から、「いくら努力しても、いつまで経っても脱することができない人」が増えていることだと指摘する。さらに、こうした者同士が家族を形成すれば、自分の子供の将来にすら、希望が持てなくなる。著者はこうした負の連鎖を「希望格差」と呼び、この国の活力を急速に奪い取っていると憂える。
では、現在の日本社会に必要な平等性とは何か。著者は自由経済がもたらす「結果の格差」を認めつつも、市場原理にすべてを委ねることをよしとしない。競争原理を前提とする一方で、参入機会の平等、及び能力開発機会の平等をあらゆる人に担保することが、「希望格差」を緩和すると説く。収入の格差については、税や社会保障以外に、家族形態別に生じる不平等を補うような分配のシステムが必要だと訴える。非婚化や少子化、高齢化は、「希望を喪失した家族」の増加を加速させると警鐘を鳴らす。
(日経ビジネス 2006/10/30)

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