短編小説の佳作、「迷子のままで」と「いまから帰ります」を収録。
「迷子のままで」は、ある子どもの虐待死を軸に、女と男、女の連れ子と男とのあいだの、葛藤と憎悪が、冷たい文体で綴られている。
「いまから帰ります」は、震災死による喪失が主題である。実際にこのようなことがあったのかもしれないと読む者に思わせる、リアルな筋たてが秀逸だ。
津波で失われたはずの手帳。行方不明のまま永い時を経た少年からの伝言。そこからは強いメッセージが発信されていた。騙されるということ自体が一つの悪なのだ。やられっ放しで判断力を失う前にやれることがある。僕たちはもう迷子のままではいられない。やけに心に沁みる、再生の歌ふたつ。
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