お粗末な発想と筆致に首をかしげる部分も少なくないが、それ以上に、就職難民世代を見殺しにしてきた、労組も含めた既得権益層やジャーナリズムの不誠実さを手厳しく批判する内容に共感した。第二の永山則夫事件(連続ピストル射殺事件)とでもいうべき「秋葉原無差別殺傷事件」が発生したいま、肥大化した自己愛をもてあましたまま社会から疎外され自らを追いつめる若者たち、そのマグマだまりのようにため込まれた怨恨と狂気とに戦慄する思いだ。
「『丸山眞男』をひっぱたきたい----31歳、フリーター。希望は、戦争。」
赤木智弘の衝撃的な論考が、月刊誌「論座」2007月1月号に掲載された。
フリーターである自分が、なぜ戦争に希望を見いだすにいたったのか。
それは、俗流若者論を通して、社会全体がすべてを「若者がおかしいから悪いのだ」というイメージで了解していること。
バブル崩壊後に何の責任もとらず、正社員として安定した生活を送ってきた「おとな」たち。彼らが、一部の世代を見殺しにしている現状から、必死に目を背け続けていること。
見殺しにされている団塊ジュニア世代の自分が、人間としての尊厳を得るためには、まず国民全体に「見殺しの罪」を直視させなければならない。
赤木は、若者を見殺しにするこの国の現状を、右派も左派も含めたかたちで、徹底的に批判する。そして、彼に説教をする知識人に対して、こう訴える。
説教するなら、職をくれ!
ひっそりと「声を押し殺して生きる若者」たち。その当事者のひとりが声をあげた。
その声が、行き詰まる若者の姿を、私たちの目に見えるようにした功績は大きい。
「論座」に掲載されたふたつの論文のほかは、すべて書き下ろしで構成。
赤木智弘。32歳、フリーター。希望は、戦争。
衝撃のデビュー作。
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深夜のシマネコ
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yutakarlson
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