なかなかおもしろい世代論であり、マーケッティングのうえでもけっこう役に立つ本だと思う。
ディルタイ、マンハイム、オルテガらの世代論を下敷きに、切れの良い調査データの分析から、7つの世代類型、それぞれの消費者特性を描き出す手腕は見事だ。
ただし、「嫌消費」世代たる「バブル後世代」の不安が、この世代特有の「劣等感」に由来するというのは妥当性に欠けるのではないか。人生がリスク化の度を増すなかで、環境問題(の構築)とゆたかさの定常化を背景にし、「消費は悪徳」という意識が蔓延している、要するにそんなことではないのだろうか。
「クルマ買うなんてバカじゃないの?」
若者の消費が変化している。若者はなぜ、物を買わなくなっているのか。
そこには巷間ささやかれている「低収入」「格差」「非正規雇用の増加」以上に深刻な、彼ら独特の心理=「劣等感」が強く影響している。
本書では「収入が十分あっても消費しない」傾向を「嫌消費」と名付け、大規模な統計調査と聞き取り調査をもとに、「嫌消費」を担う世代=20代後半の「買わない心理」の原因と深層に鋭く迫る。ビジネスパーソン必読の一冊。
目次
第1章 嫌消費の時代
「クルマ買うなんてバカじゃないの?」
嫌消費の人々
消費好きの時代
嫌消費の世代
嫌消費の日本経済へのインパクト
第2章 嫌消費世代の登場とプロフィール
バブル後世代とは
生活史
特徴的な価値意識――4つのC
劣等感の深部を読む
バブル崩壊が生んだ世代
第3章 嫌消費の要因は世代特性か、低収入か
消費支出意向はなぜ低いのか
消費支出減の7つの要因
3つの要因
低収入層の増加による消費減少説
平均消費性向の動向
バブル後世代のマクロな消費への影響
ライフサイクル恒常所得仮説
第4章 世代論はどこまで有効か
日本の世代
世代の理論とは何か
ディルタイの世代論の原点
マンハイムによる世代論の緻密化
オルテガの危機論としての世代論
実感の歴史理論としての世代論
日本の世代論――世代の理論の応用
世代論の有効性と限界
現代日本の世代分析の原則
世代の均衡分析による将来の日本
第5章 嫌消費世代のマインドと市場攻略
バンドワゴン消費とみせびらかし消費
欲しくても買えない消費マインドの謎
3つの選択肢
関心のあるものと買ったもの
商品カテゴリーマップの世代比較
商品カテゴリーの好き嫌い
買わない理由――みせびらかしと先延ばし習慣
停滞需要下の需要刺激の基本パターン
終章 未来の消費社会
最新の画像もっと見る
最近の「本」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
人気記事