本書は、『痴呆老人が創造する世界』を改題、加筆して出版された作品であるが、時代を超えて読み継がれていってほしい名著である。
認知症の人々にとって、施設は一つのまちであり、他の人々は配偶者、家族、親友であったりする。それをたんなる妄想と切って捨ててしまうのは惜しい。それほど認知症の人々が生きる世界は豊饒だ。
高齢者介護の場での人手不足は深刻で、職員がそのゆたかさに触れる余裕はなかなかないだろうが、本書で描かれているようなユニークな人々とのかかわりは他の職場では得られない貴重なものであろう。
本格的な高齢社会到来で、認知症の人々は増えていくと予測されている。彼ら、彼女らは、どのような世界を創りあげているのだろうか。認知症の介護施設で、看護職の著者が出会ったお年寄りたちの暮らしを細やかに再現することにより、何を大切にしているのか、人間関係のありかたは、過去と今の生活をどのように結びつけているのかを解き明かしていく。
目次
第1章 フィクションを生きるお年寄りたち
亭主は厄介者か?かわいいひとか?
私のパートナー、僕のパートナー
第2章 世間という社会
仲間たちと世間さまウチとソト
第3章 それぞれが抱える事情
お友だちプレステージ
放浪こそ我が人生
第4章 会話アラカルト
エンドレス・ストーリー
会話はフィーリング ほか
第5章 行動は語る
「さわる」行為の不思議さ
裏技の開発 ほか
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