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本と音楽とねこと

ヤバい社会学

Venkatesh, Sudhir,2008,Gang Leader for a Day: A Rogue Sociologist Takes to the Streets,Penguin(=2009,望月衛訳『ヤバい社会学』東洋経済新報社)(¥2,310)'09.11.7

 シカゴ大学の学部生だったヴェンカテッシュが大学院で博士論文を書き就職するまでの、とても貴重な調査記録である。
 読み物としてもおもしろいが、参与観察の内省的な記録としても興味を惹かれた。質的調査法の参考文献としても役に立つ本だ。

シカゴの麻薬売人ギャングの懐に飛び込んだ社会学者ヴェンカテッシュの話は、ベストセラー『ヤバい経済学』で取り上げられて世界中の注目を集めた。本書は、彼がギャングとつるんだ冒険と災難の日々の全貌を明らかにした地下経済ノンフィクションだ。
アメリカ最悪のゲットーの一つ、シカゴのロバート・テイラー・ホームズで、ヴェンカテッシュはギャング・リーダー、ヤクの売人、ヤク中、ホームレス、売春婦、ポン引き、活動家、警官、自治会長、役人たちと知り合う。貧困の連鎖、麻薬の蔓延、相次ぐ発砲・暴力事件のなか、警察も救急車も来ないスラムで、ヴェンカテッシュは、ギャングと住民は複雑に絡み合って共生していることを知る。
ゲットーに生まれ、大学を出て就職しながらギャング・リーダーとしてゲットーに戻って来たJTと、中流家庭出身で、怖いもの知らずの社会学者ヴェンカテッシュの間の不思議な友情を描いた話題の書。

『一日だけのギャング・リーダー』は信じられないぐらいすごい本だ。スディール・ヴェンカテッシュがシカゴのスラムの生活を観察していたころを振り返ったこの回顧録は、これまでぼくが読んだどの本とも違った、喜劇でもあり、悲劇でもある。郊外で育った世間知らずのぽっと出が、(一日だけだけど)クラック売人ギャングを取り仕切った挙句、世界でも最先端の学者になんて、どうやって行き着いたんだろう? それはみなさんが自分で読んで見つけてほしい。でも気をつけて。何時間か取れるときしかこの本を開いちゃだめです。保証するけど、いっぺん読み始めたら、ぜったい途中でやめられないよ。
――スティーヴン・レヴィット『ヤバい経済学』著者

『ヤバい社会学』は、貧しい黒人のけばけばしくも乱雑だと思われがちな生活を覗き見してスキャンダラスに描く、よくある本とは違う。ヴェンカテッシュは、クラックの蔓延が頂点に達していた時期にシカゴのギャングの世界へ足を踏み入れた。そこで彼が発見したのは、友情、思いやり、そして力で強く結ばれたコミュニティだった。私は読むのをやめることができず、この勇敢で無謀な若い学者とギャング・リーダーのJTを好きになってしまった。JTは、これまでの社会学の研究と呼べるものに登場した人物の中で、最も偉大なキャラクターの一人だ。
――バーバラ・エーレンライク『ニッケル・アンド・ダイムド』著者

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