「路地」とは、かつてあった「被差別」のことである。
「かつてあった」というのはわたしの主観であって、地域によっては、また人によっては「いまもある」のかもしれない。
さて、本書は小説仕立ての作品であるが、実際は、ノンフィクションに近い。筆者の父親、上原龍造が「路地」で食肉業者として成り上がっていく一代記である。
「牛を割る」龍造等、荒くれ者たちが、牛刀ふりまわしてケンカするところがすさまじい。解放同盟と旧社会党、解放運動連合と共産党、そしてそれら利権団体と暴力団の暗躍と、これまたえぐい話のオンパレードである。
暴力、カネ、覚醒剤が「路地」を飛び交い、血が流される。事実は小説より奇なり、なにより生々しくおもしろいし、地域によってはいまもなお蠢く利権の一水脈を知るためにも、有益な書物である。
昭和39年、大阪―。中学三年生の龍造少年は学校にはいかず、自らの腕だけを頼りに、天職と信じた食肉の道へと歩み始めた。時に暴力も辞さない「突破者」と恐れられ、利権団体や共産党、右翼やヤクザと渡り合いながら食肉業界を伸し上がった一匹狼―。時代の波に激しく翻弄されながら、懸命に「路地の人生」を生き抜いた人々の姿を、大宅賞作家が活写した、狂おしいほどに劇的な物語。
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