あまりに時宜に適った若手社会学者の作品として話題となった本であるが、中央と地方、ムラの隠された戦後史を、フクシマをフィールドにして再構成、呈示してみせた労作だ。
本書と中央で語られるフクシマとの格差に読む者は驚くだろう。歴史探究とフィールドワークにより、複雑怪奇な現実について細部を捨象せずに構成されたフクシマ論には迫真の現実性が宿る。
目次
「フクシマ」を語る前に
第I部 前提
序章 原子力ムラを考える前提――戦後成長のエネルギーとは
1 はじめに
2 「翻弄される地方・地域の問題」の複雑さ
3 『田舎と都会』
4 地方の服従と戦後成長という問い
第一章 原子力ムラに接近する方法
1 原子力ムラという対象
2 これまでの原子力がどう捉えられてきたか
3 どのように原子力を捉えるのか
第II部 分析
第二章 原子力ムラの現在
1 原子力の反転
2 原子力を「抱擁」するムラ
3 原子力ムラの政治・経済構造
4 佐藤栄佐久県政――保守本流であるがゆえの反原子力
第三章 原子力ムラの前史――戦時~一九五〇年代半ば
1 戦時体制下のムラ
2 戦後改革と混乱するムラ――常盤炭田と大熊町
3 中央とのつながりの重要性
4 変貌するムラと原子力――原子力ムラ誕生への準備
第四章 原子力ムラの成立――一九五〇年代半ば~一九九〇年代半ば
1 反中央であるがゆえの原子力
2 原子力ムラの変貌と完成
3 原子力ムラと〈原子力ムラ〉――メディアとしての原子力
第III部 考察
第五章 戦後成長はいかに達成されたのか――服従のメカニズムの高度化
1 中央‐ムラ関係におけるメディエーター(媒介者)としての地方
2 ムラの変貌と欲望
3 戦後成長とエネルギー
4 内へのコロナイゼーション
第六章 戦後成長が必要としたもの――服従における排除と固定化
1 他者としての原子力ムラからの脱却
2 排除と固定化による隠蔽――常盤炭田における朝鮮人労働者の声から
3 成長のエネルギー
終章 結論――戦後成長のエネルギー
1 原子力ムラから見る服従の歴史
2 統治のメカニズムの高度化
3 成長に不可欠な支配の構図
4 幻想のメディア・原子力と戦後成長
補章 福島からフクシマへ
1 「忘却」への抗い
2 「4・10」
3 忘却の彼方に眠る「変わらぬもの」――ポスト3・11を走る線分
注
参考文献
あとがき
関連年表
索引
原発は戦後成長のアイコンだった。フクシマを生み出した欲望には、すべてのニッポンジンが共犯者として関わっている。それを痛切に思い知らせてくれる新進気鋭の社会学者の登場。
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