ICTの発展と、製造業の拠点たる工場の海外移転を含むグローバルなアウトソーシングにより、人口のごく一部の富裕層、ワーキングプアに堕とし込まれるアンダークラス、そしてアンダークラスへの転落に怯える中層、下層へと、社会は分解した。
アンダークラスの、「階級政治」、「アイデンティティポリティクス」両面での「排除」は、同時に、当のアンダークラスが、「セレブリティ」に憧れ、消費文化に「過剰包摂」されてしまう事態にも通じている。
ウェルフェアソサイエティからワークフェアソサイエティへの転換は、中間層、下層による、社会福祉の恩恵を受ける(と思われた)アンダークラスへの憎悪の現れであり、中間層、下層もまた、アンダークラス同様、消費社会の頂点にいるセレブリティへの跳躍という、見果てぬ文化的目標に、駆り立てられている。
家族と地域コミュニティの溶解により、アイデンティティは拠り所を失い、アンダークラスへの転落もしくはその恐怖が、階層・階級、エスニシティ、ジェンダー間での他者化、すなわち憎悪と分断の強化につながっている。
本書は、社会学の知見を総動員した力作である。読みやすく翻訳した人たちの功も評価したい。
テロリズムへの不安、移民、暴動、厳罰化。仕事やコミュニティや家族の急速な変化。セレブリティとワーキングプア―『排除型社会』で社会的排除を尖鋭に描いた社会学者が、経済的・社会的な不安定さと剥奪感をもたらす「過剰包摂」の問題を摘出し、新たな政治への理論基盤を提示する。
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