本と音楽とねこと

環境平和学三部作

 ほぼ全世界を席巻し、回復不可能な環境破壊、汚染有毒物質の拡散、絶対的貧困に陥り生存権さえ剥奪される人々の増加、こうした問題群を生み深刻化させてきた「持続可能な開発」主義の欺瞞に深く気づかせてくれる作品だ。構築主義の視点からすると、一つには、生命と人間社会の持続可能な再生産のあり方を示す「サブシステンス」概念は、その「本質主義」的な実体概念ゆえの論理的無限後退によりもとより破綻せざるをえないわけだが、「だったらこのまま滅びていいのか」という危機意識から、「サブシステンス」をめぐる過去の知的資産を掘り起こし、脱開発主義の視点から、人間、コミュニティ、社会システム、自然環境の持続可能な連関のあり方を構想するのは、とても価値のあることだと思う。市井三郎の「最小不幸の社会」のアイディアは、脱開発主義の社会を構想するうえで強力な論拠となることにも気づかされた。


戸崎純・横山正樹編著.2002,『環境を平和学する!―─「持続可能な開発」からサブシステンス志向へ』法律文化社 (¥2,205)('13.11.12)

目次
「サステイナブル・ディベロップメント」を超えて
第1部 環境と開発の平和学
暴力は本来性(サブシステンス)を奪う
生命系として環境を考える
グローバリゼーションを超える平和学の試み
「開発パラダイム」から「平和パラダイム」へ
第2部 世界をとらえる
世界経済をとらえる
国際政治をとらえる
現代社会をとらえる
第3部 生命を平和学する
平和学から見たリプロダクティブ・ヘルス/ライツ
生殖医療技術の現在
エコ・フェミニズムの現在
第4部 周辺に学ぶ
巨大資源開発を超えて―フィリピンの現場より
熱帯林―海の向こうと私たち
フィリピン・バナナ村の歩み
人が人でなくなっていく―人間関係の危機
第5部 世界を変える
平和NGO
国際協力NGO
「グローバル化」と向きあう人びと
サブシステンスと世界システム

環境を平和学すると、何かが違って見えてくる! サブシステンス概念を軸に環境問題をとらえて、平和学の展開を試みる。2001年度に立教大学で行われた「平和学から見た環境問題」の共同講義を下敷きにまとめる。


郭洋春・戸崎純・横山正樹編著.2004,『脱「開発」へのサブシステンス論――環境を平和学する! 2』法律文化社 (¥2,205)('13.11.12)

サブシステンスで世界を見ると見えないモノが見えてくる! 近代を形成してきた開発主義の脱却をめざす環境平和学の立場から、新たな分析枠組みと理論を提示する。2002年刊「環境を平和学する!」の続編。


郭洋春・戸崎純・横山正樹編著.2005,『環境平和学――サブシステンスの危機にどう立ち向かうか』法律文化社 (¥2,100)('13.11.12)

目次
第1部 開発主義世界への問題提起
維持可能な社会への架橋のために―サブシステンス視座の含意
グローバルエコノミー(開発経済学)に対する史的・理論的批判―平和のための経済学をめざして
潜在能力アプローチの批判的検討 ほか
第2部 サブシステンス志向の実践的課題
飢餓問題の解決とサブシステンス志向―エンタイトルメントと暴力概念によるフィリピンの山村・漁村の飢餓分析
開発のディレンマを越えて―大規模資源開発とグローカルネットワーク
サブシステンス志向のコミュニケーション―フィリピン民衆宗教行事にみる実践と課題 ほか
第3部 環境平和学の構築
開発・安全保障からサブシステンスへ―脱安全保障論序説
サブシステンスと世界システム論
環境平和学としてのサブシステンス論

生存のための自然環境と社会基盤崩壊の危機、すなわちサブシステンスの危機に有効に立ち向かうための理論構築と実践のあり方をめざす「環境平和学」を、新たな分析ツールとして提唱する。

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