文句なしの傑作だ。
京都で臨床心理学の博士号を取得した作者は、沖縄の精神科クリニックで働く。実際の業務は、カウンセリングよりもデイケアでの利用者との関わりが主要なものとなる。
セラピーは、クライアントに「傷つけても問題を直視し前に進む」ことを強いる。それに対し、ケアは、「傷つけることなくあるがままの状態を肯定し、ただいるだけで充足される安心」をつくり出す。この差は、大きい。その大きな落差に、作者は、「これでいいのか」と自問自答を繰り返していく。
最後に論じられる、「アジールのアサイラム化」も大きな問題だ。
わたしたちは、「居るのがつらくない」場所を確保していく努力をし続けるべきなのだろう。ソーシャルワークの生命線はそこにしかないと思う。
目次
プロローグ それでいいのか?
第1章 ケアとセラピー
ウサギ穴に落っこちる
第2章 「いる」と「する」
とりあえず座っといてくれ
第3章 心と体
「こらだ」に触る
第4章 専門家と素人
博士の異常な送迎
幕間口上 時間についての覚書
第5章 円と線
暇と退屈未満のデイケア
第6章 シロクマとクジラ
恋に弱い男
第7章 治療者と患者
金曜日は内輪ネタで笑う
第8章 人と構造
二人の辞め方
幕間口上、ふたたび ケアとセラピーについての覚書
最終章 アジールとアサイラム
居るのはつらいよ
最新の画像もっと見る
最近の「本」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
人気記事