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本と音楽とねこと

横浜発助けあいの心がつむぐまちづくり

横浜市社会福祉協議会企画・監修、西尾敦史著,2017,横浜発助けあいの心がつむぐまちづくり──地域福祉を拓いてきた5人の女性の物語,ミネルヴァ書房.(2.15.2023)

 上野千鶴子さんがかつて調査で明らかにしたように(『女縁が世の中を変える』・『「女縁」を生きた女たち』・『ケアの社会学』等)、団塊世代とその前後の世代の女性のなかから、「活動専業主婦」が生まれ、彼女たちが、1980年代から1990年代にかけて、いわゆる「住民参加型在宅福祉サービス」を起業しその担い手となった。
 高度経済成長期は国民皆婚の時代でもあり、多くの女性たちが、社会で活躍する能力をもちながら、家庭の主婦となり、学生運動の余韻が残るなか、「子どもに安全な食べものを」といった願いをもちながら、消費生協の共同購入班のネットワークをつくりあげ、地域社会で高齢化がすすむなか、ある者は消費生協を母体としたワーカーズ・コレクティブを組織し、ある者は会員制の、有償ボランティアによる相互扶助組織を立ち上げていき、それらが「住民参加型在宅福祉サービス」の本流を形成していくことになる。高度成長期には、急激な都市化によるスプロール現象が深刻化し、反開発と生活のインフラ整備を要求する住民運動(「たたかう丸山」(行政の宅地開発に反対し道路整備を要求した神戸市長田区丸山地区))が激化したが、1980年代以降の高齢化する地域社会においては、「活動専業主婦」を中心とした生活拡充運動が展開していくことになる。
 2000年の介護保険制度施行以降は、「住民参加型在宅福祉サービス」団体の多くが法人格を取得し、福祉NPOとして介護保険指定サービス事業に参入し、また、既婚女性の就業者増加により、「活動専業主婦」はもはや地域福祉の主要な担い手とはなくなっていくが、近年の「子ども食堂」の担い手の多くがかつでの「活動専業主婦」であることも考えると、わが国の地域福祉の進展において、団塊世代とその前後の世代の女性が果たしてきた役割は、きわめて大きいといえる。
 本書では、地域福祉における行政、社協、民間福祉団体、地縁団体等の協働が先駆的にはかられていった横浜市で、上記のような民間福祉活動において多大な功績をあげてきた女性たちとその活動の経緯が詳述されており、たいへん参考になった。

時代を切り開いた大都市・横浜の地域福祉実践の記録。子育てや介護など暮らしの苦労を共にする中で、助けあい活動を生み出し、地域を耕し続けた女性リーダーと仲間たちの物語。

目次
第1章 「させていただく」は必ず「ありがとう」で返ってくる―半径五〇〇メートル地域での「茶卓」の活動
第2章 この町を子どもたちの「ふるさと」に―羽沢西部自治会長としての住民とのまちづくり
第3章 必要なものをみんなで創りつづけてきた―団地「ドリームハイツ」での住民主体の地域活動
第4章 介護保険は人を育てない、「たすけあい」は人を育ててきた―「グループたすけあい」での切れ目のない支援
第5章 福祉は人と人との関係のなかで営まれる―生活感覚を大事にした「たすけあい ゆい」の支援
第6章 女性たちの実践が示唆する、大都市の地域福祉の未来―横浜市の暮らしの変化と実践を読み解く

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