本と音楽とねこと

さすがは作田センセ

 作田啓一センセとは、なんの面識もないんだが、学部学生のとき、『価値の社会学』と『個人主義の運命』を読んで以来、日本の社会学者のなかでもっとも敬愛する人物の一人となった。北大、東北大、東大、京大(文)、阪大、九大等の社会学の重鎮がパワーゲームに興じ、そのあまりに傲慢な振る舞いによからぬ噂が飛び交うなか、京大(旧教養部)の作田センセだけはその手の話を聞かなかった。85歳を超えたいまも、更新はまれながら、激高老人のぶろぐで、健在ぶりを示されている。とても元気がもらえるブログだ。以下、本日追加された記事を転載しておきたい。

北九州市の役人と赤城農水相
 北九州市で生活保護を廃止された52歳の男性が孤独死した。本人が辞退届を出したから廃止するのは合法的だったと役人は言う。しかし無理やりに辞退届を出さされたというのが実状らしい。何しろこの市は生活保護の適用を極度に制限することで有名な市である。ここでは届けを出す前にまず申請書を書かされ、希望者は受付の窓口にさえなかなか到達できない仕組みを作っている。この市は小泉内閣当時構造改革のモデル特区となった。貧乏なこの市が生活保護の枠を狭めざるをえない理由は分かる。小泉以来の政府がもたらした地域格差の増大の結果だ。だが被受給者の収入などをよく調べもしないで生活保護を廃止するのは不法の疑いがある。
 この市ではまた、32歳の病身の女性が国民健康保険料を納める余裕がないために保険証を取り上げられ、治療が行えず、病に苦しみながら死亡したケースがあった(小野寺光一の「政治経済の真実」7/12付メールマガジン)。この事件--あえて事件と呼びたい--は、2年前の保険料は支払い免除となる規定があるにもかかわらず、市の職員がその規定を本人に教えずに、滞っていた保険料を支払うという誓約書を書かせたケースである。誓約書を書いた以上、免除対象の保険料でも支払わなければならないという仕組みが導入されていたので、誓約に違反した彼女は保険証を取り上げられたのだ。免除規定を教えなかった役人は詐欺に等しい「罪」を犯しているのだが、誓約書が出た以上、あとは「ルールにのっとって」、保険証は取り上げられたのである。
 一方、赤城農水相は実家を後援会の事務所であるとして高額の事務所経費を計上していた。任命責任を問われた安倍首相は、事務所の光熱水費が或る年には月平均805円であったことを楯に取り、たった800円で辞めさせると言うのですかと、せせら笑った。月800円の年があってもその10倍以上の年もあり、10年を合計すれば相当の額である。これらを含めた事務所経費は何に使われたのか。詳細は明らかにしないまま、赤城農水相は「法律に従って」あるいは「ルールにのっとって」報告していると繰り返すだけである。この人はまた東京都23区内に自宅を所有しているにもかかわらず、議員会館にも居住権を取得していた。特別の事情を認められたためかと思われるが、その事情は明らかではない。また、私生活においては妻と共に3台の高級車(約2000万円)を所有している。
 現職の大臣の生活と一般の庶民の生活とを比較するのは単純に過ぎるという声もあるだろう。しかし、北九州市で「ルールにのっとって」の役人の処置により、生活保護を剥奪され、あるいは健康保険証を取り上げられて悲惨な死に追い込まれた人々のことが、拙者の念頭にどうしても浮かんでしまう。同じ日本人が次々に窮死し、あるいは窮死に近づいているのを、経済成長の名のもとに黙認してよいのか。小泉前首相はあい変わらず、日本は格差の小さい国だ、などと演説して回っているようだ。しかし先進国の中で日本はアメリカに次いで貧困率が世界第2位であるという事実をこの人は黙殺している。構造改革のためには貧困拡大・深化はやむをえないと思っているのだろう。
 モデル都市である北九州市で「ルールにのっとって」窮死させられた人々のことを思うと、外車3台と2つの住居をもつ赤城農水相の、「ルールにのっとって」報告していると言う「トッチャン坊や」顔が、拙者には厚かましく見えて仕方がない。
2007/07/15 02:32

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