これ一冊で、先進産業社会各国におけるワークフェア施策の特徴が俯瞰できる。一口に、ワークフェアといっても、手厚い生活保障のうえに行政が積極的に就労支援を行う北欧型から、ワーキングプアを量産し、貧困層の生活を給付付き税額控除で支援するだけのアングロサクソン型(ワークファーストモデル)まで、多種多様だ。日本は、後者に近いが、給付付き税額控除さえ実現していない。「ウェルフェアからワークフェアへ」という政策転換は、行政による最低限度の生活保障がなされた福祉国家において、手厚く積極的な就労支援が行われるに至ることをいう。その意味では、未だ福祉国家のミニマムさえ充足されていない日本社会において、この転換を唱えるのは噴飯物だろう。
目次
ワークフェアの全体像把握を目指して
第1部 国際的動向と理論的諸問題
ワークフェアの国際的席捲―その論理と問題点
規律訓練型社会政策のアポリア―イギリス若年就労支援政策からの教訓
ワークフェアと所得保障―ブレア政権下の負の所得税型の税額控除の変遷
アメリカにおける福祉離脱者とワーキング・プア―ワークフェアとの関連で
非正規(非典型)労働の国際比較―経済のグローバル化と非典型労働増大
第2部 日本におけるワークフェアとワーキング・プア
日本における母子家族政策の展開―福祉と労働の再編
日本における障害者福祉と就労支援
生活保護改革論議と自立支援、ワークフェア
就職困難者問題と地域就労支援事業―地域から提案されたもうひとつのワークフェア
究極のコスト・パフォーマンス=「雇用のない経営」―拡がる「労働法のない世界」
ワークフェア(雇用志向社会政策)は貧困克服の有効な手段となりうるか。登場してきた背景からその特徴、波及効果と帰結までを検証。ワーキング・プアや就職困難者など今日的課題にせまる。
最新の画像もっと見る
最近の「本」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
人気記事