証拠金規制とは米FRBが保有する、証券市場の証拠金規制のこと。しかし数字は1974年に固定されてから久しく変更されていない。なお証拠金規制とは、日本でいう信用取引の委託保証金規制のこと。この当初比率規制権限を中央銀行であるFRB自身がもっている(Regulation T)。中央銀行が株式市場に直接規制権限を持つということ自体、とても興味深い。しかしこの規制はなお存在はするが、長年変更しないこと自身がFRBが有効性を否定しているともとらえられる。あるいは有効だとしても、FRBがこの数値を動かすのは、余程の場合と考えるのか。これらの点は実は明確でない。
ところで以下は実証研究から、規制比率が変更された場合の極めてはっきりした市場の反応をとらえて、改めて規制の有効性を確認した。
margin 規制は FRBが行っているだけではなく それぞれの取引所 各証券会社レベルで行われている。つまりFRBが決めているのは外枠の規制でFRBが規制しなくても、実際には規制が働いている、操作されているともいえる。
これに対して以下は、その有効性に疑問を呈している。証券市場で派生市場が発達して、現物市場だけの規制では有効でないこと。証券投資で借入資金を得るのは証拠金取引とは限らないことなどを上げている。
Simon Kwan, " Margin Requirements as a policy tool? ," FRBSF Economic Letter, Mar.24, 2000
仮にそうだとすると、議論されるべきなのはこの規制がなお残されていることの意義である。というのもこの規制をめぐっては、1960年代に論争が記録され、そしてその末に数値の変更が停止されているからである。次の論文は、この問題の包括的な評価になっているようだ。
以下の私の論稿(2003)はその1960年代から70年代にかけての論争をまとめたもの。現在の時点では、証拠金規制を業者側のリスク管理の問題として把握することを主張している。しかしこの論稿は今振り返ると、Hardouveillsの研究を文献に言及してはいるが、1960-70年代の論争のまとめに傾斜しすぎていた。サーベイとしては以上の2000年代の文献を、検討する必要があるだろう。また株式現物市場以外での証拠金規制の意義についても言及が足らない。最近問題になる、派生商品市場での証拠金規制では、規制対象は個人投資家ではなく金融機関であり、焦点は相場の変動ではなく決済問題である。したがってそれは、株式現物市場の証拠金規制の問題と連続した脈絡でとらえることはできないように見える。
市場と規制 証拠金規制をめぐって 成城大学経済研究161号, June 2003, 113-146
参考