最近の本の傾向だが副題が長い。「一生おカネに困らないために、親が子供に伝えるべき「おカネの話」」
おカネについての入門の本は多いが子育てに絡めた本は珍しい。内容はおカネの話ではあるけれどまた子育ての本でもあるけれど、2つを組み合わせるとそれだけでないことがわかる。原著は Beth Koblinger, Make Your Kid a Money Genius, 2017
よくあるおカネの知識入門本と少し違うのは 子育ての知識が入っているところ。それも最近の学術的研究を踏まえていて説得力がある。
子育てとの親の関わり方への注意が沢山入っている。その注意がありがたいのが、教育に関するさまざまな「研究」をかなり幅広くカバーして根拠付けていること。他方、著者自身の経験も随所に入っていることが著者の人柄を感じさせる。
子供に何もかも教えなくていい。親の所得の具体的な金額は教えなくていい。世間の所得との比較でどのあたりかは教えればよい。両親のどちらがより稼いでいるかも教えなくていい(上下とみてしまうので)。おカネの問題で両親は一致した態度を示すべき。私たちはチームだと。退職年金口座の額も教える必要はない。子供はそれが長い間取り崩すものだということが理解できない。親戚に関する悪口、おカネに関するゴタゴタを子供の耳に入れてはいけない。ベビーシッターや家庭教師にいくら支払っているか、子供はそれを上下関係(支払っている自分が偉い)と誤解するもの。プレゼントにいくら使ったかも教えなくていいー贈り物の喜びが失われるから。学費の不安―空手形はいけないが だからといって学費の不安を言って将来への不安をあおるべきではない しかし子供の未来のために貯金するのは親の喜びだと伝えるべき。pp.27-33
貯金について
ここでマシュマロテスト(マシュマロ実験)の話が出てくる。2個目を我慢できた子は 大人になって成功する子が多い。我慢強い子はどうしたらできるか。p.34
なお貯金の一部を学費にあてさせると 勉学に励む可能性が高くなる p.70
そしてこの本で一番大事なアドバイス。おカネがたまるまで高価なものを買ってはだめだ。p.74
努力には見返りがある。
ペンシルバニア大学のダックワース教授のやり抜く力 グリット education grit 。やり抜く力のある人は学校の成績がいいだけでなく 収入 生涯貯蓄額 人生全般の満足度も高い 忍耐強く何かに取り組みことを教えること pp.79-80 一度決めたら最後までやり通すこと p.96 グリットとは
ミネソタ大学の研究では 学位をとる 仕事に就くこと 幼いころ 家事を手伝ったかが要因になる。p.81 家のお手伝いは家族の一員として当然のこと p.87 子供を家事の達人にすることが目的ではない 自立した子供を育てることが目的だ 子供は生活スキルを身につけるべきなのだ p.94 k高校生になったら家事から解放させるべき 子供たちのプレッシャーは多い pp.103-104
仕事が楽しい時はそれを伝える 少なくとも仕事があるのは素敵なことだと伝える 仕事とは誇りをもてるものだと伝えることは大切 p.83
子供の能力をほめると 勤勉さが育たない 少しの困難ですぐあきらめてしまう 子供の努力に対して 褒めたほうがいい。 p.84
幼い子供は自分働き物の誰かだと思い込むと 一つのことに根気よく取り組める Batman effect p.85
アルバイトについて
(高校生)子供たちへ週15時間以上働くべきではない 調査によると退学する可能性が高まり学位を取れる可能性がさがるから p.104
(高校生)本に没頭する時間の長い子ほど成績は良くなる。それならなぜ働かせる必要があるのか。お勧めは放課後のアルバイトはやめて夏休みに集中して稼ぐこと。pp.99-100
(大学生) 週20時間以内ならキャンパス内の仕事は参加意識を高める。また学費を自ら負担することは、自分の教育に投資している意識にさせる。p.106
就職活動について
アルバイトの職場の上司に推薦状を頼んでみよう p.106
つてを探してみよう。プロの多くははその分野に興味のある若者にはアドバイスを惜しまない p.110
自分が楽しめる仕事を選ぶことは重要 p.89
名簿をくって手紙を出して、何人かに合い インターンの仕事をえた p.111
面接によばれたら必ず行きなさい 新たな気付きがあるはず p.112
仕事についたからといって 縛られる必要はない p.114
最初の給与を交渉するべきではないか 聞かれたらこの程度という数値を用意するべき そのためには業界の給与水準について調査しておくこと p.116
平均的な起業家は学位を取得 業界でしばらく働いた人で 大学中退者ではない p.118
どんな仕事も見下さず 職場になくてはならない存在になるように p.118
おカネは大事、そのことを教えるのだが、それがすべてではない。大事なのはそのバランスなのだ。どうすれば人生に成功できるか。成功する子供を育てるにはどうすればいいか。義務とか責任とか。最後までやり通す力とか。
子供におカネばかり与えているとおカネのスキルは身につかない p.21
何を教えて何を教えるべきではないか。親はお手本を示すべきだと書かれている。子供の活動にどこまでかかわるべきか。子供が自分で発見して学ぶべきだと書かれている。一つ一つは言い古されてきたことだが、これだけ緻密に書かれているとガイドブックとして役立ちそうだ。特徴は、子供の成長段階に応じて書き分けていること。
投資についても見ておこう。
流行している株式投資ゲームの問題点は投資期間が短かすぎて、リスクの高い株に投資した者が手早く勝てる結果になることだとしている。本来学ぶべき分散投資の学習には不向きだとしている。pp.258-259 株式投資ゲームが非現実的なのはそのとおりだ。しかしでは、3年間とかある程度期間を長くすればいいかというと、そうでもないように思える。日々変動する相場の中で、過去に蓄積された知的遺産ではない。その相場は日々動いてゆくもの。学校では、過去の知的遺産の習得に励むべき場所で、日々移ろってゆく相場に付き合う場所ではないのではないか?
分散投資効果のあるインデックスファンドでの投資が繰り返し推奨されている。pp.259-260, 275-276
高校生の段階では個人退職口座の開設が、社会人になってからは確定拠出年金への参加が推奨されている。pp.262-265, 273-274