Entrance for Studies in Finance

日産6工場が部品不足で3日間操業停止(2010年7月)

日産は調達コスト圧縮のためECU(engine control unit:エンジン制御ユニット)の購入を日立1社に絞っていた。その日立はECUにに使うカスタムIC(custom ic;asic, application specific circuit)*についてSTマイクロ(STMicroelectronics)からの供給に頼っていた。
 *custom icのcustomは、custom-madeのcustomと同じ意味だろう。custom-madeはお客様customerの注文に応じた、特別注文によるといった意味。住宅についてcustom-builtという言い方もある。tailor-madeと言い換えられる。対語はready-made。

欧州最大手(出荷ベースで世界6位)STマイクロは予定の8割強しか供給できないと、日立、日産に2010年7月2日に一方的に連絡してきたとされる。この理由については、リーマンショック後、他の半導体メーカーと同様に設備廃棄を進めたことが背景とも、半導体不足のなか、他の顧客を優遇したからとも噂されるが明確な理由は書かれていなかったとされる。これに対して日立は、特別仕様のカスタムICのため調達先を変更できなかったという。その結果、日立はエンジン制御ユニットを予定通り供給できず、最終的に日産の工場が操業停止に追い込まれた。
 これは部品メーカーとの信頼関係の上で構築されているジャストインタイム方式just in time method(在庫適時補充方式)が否定されかねない深刻な事態である。なお日立のECU取引の9割が日産向け。残りはホンダと富士重工業で、ホンダ、富士重工業への影響は限定的だった。

日産は7月12日(月)に国内4つの完成車工場を7月14日から3日間操業停止と発表した。また7月15日(木)には、国内4ケ所(7月14日から)に加えて、米国2ケ所の完成車工場の操業(7月15日から)を3日間操業停止を発表した。このような部品メーカー側に一方的通告による操業停止は極めて異例とされる。
なお同じ影響をうけたホンダと富士重工業は複数社からECUを購入していたため工場停止を免れた。

2010年7月28日(水) 日立はSTマイクロとの交渉の結果、8月以降十分な供給が可能になったと発表した。
カスタムICは、顧客の仕様に合わせて2-3年の開発期間をかけて作りこむので特定の半導体メーカーから全量調達が一般的ともされるが、1社調達のリスクが表面化した「事件」だったといえる。したがってリスク対策の面からこの事件は今後も記憶され参照されることになろう。
 また現在のところ供給不足を通知した背景が明らかにされないこともあり、STマイクロという企業に対して警戒感が残されたことも間違いないところだ。


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