中央銀行の非伝統的金融政策 the non-traditional monetary policy とはなにか
民主党(対米関係 対中関係をともに悪化させた最悪の政治的混乱を生んだ)が政権を退陣し第二次安倍政権が発足した2012年12月から日本経済は回復を続けている。この安倍政権のもとで、日本銀行は量的質的金融緩和政策(QQE quantitative and qualitative monetary easing policy 2013年4月開始)を展開している。この政策は従来の伝統的な金融政策と違っているとされる。その非伝統的である所以は、この質的・量的という表現にまさに表れている。
質的 中央銀行が非リスク資産だけでなくリスク資産(ETF REIT 株式など)を購入するようになった 中央銀行は従来 リスク資産の購入を避けてきた。それが、株式市場あるいは不動産市場への関心や関わりの強化を意味することは間違いないだろう。
1995年1月17日未明 阪神淡路大震災
1999年2月 ゼロ金利政策 無担保コール翌日物がゼロ近くに
2001年3月 量的緩和政策(2006年3月まで)
2001年9月11日 アメリカ同時多発テロ
2002年から銀行から株式購入
2008年10月28日 日経平均バブル後最安値6994円記録
2009-2012 民主党政権による政治の歴史的な混乱(稚拙な運営で対米 対中関係 悪化)2009年8月衆院選で勝利するも国民の負託を裏切る
2010年10月からETF購入
2011年3月11日 東日本大震災
なお 国債についても 短期国債(償還までの年限が短い期近国債)から 長期国債 に購入対象のシフトがみられる それだけ 国債についてもリスクは拡大。現在の政策からの脱却には時間がかかる見通しとなっている。
量的 金融政策の操作目標 金利 から マネタリーベース(資金供給量) へ → 金利先物市場・国債市場縮小の副作用 → 市場機能よりは脱デフレ というのが日銀の現在の首脳陣の考え方 しかしわずかな動きで金利が大きく動くことになっている。マネタリーベースに目標を置いたが、後述する2016年9月の政策変更を踏まえて、結果としてデフレ解消に失敗したという批判がある。
日銀の総資産の膨張 2017年5月末 500兆円突破(GDPの9割にあたる 2007年末には111兆円だった それが5倍に拡大) 物価上昇目標2%
2013年4月 2%の物価安定目標を2年程度で
量的質的金融緩和 quantitative and qualitative monetary easing QQE1 異次元緩和
2013年末 異次元緩和で円安進む 輸入コスト上昇で消費者物価指数も上昇
2014年4月 消費税の引き上げ 増税により家計消費縮小へ(値上げした企業から消費者離れる):2014年春のトラウマ
消費税の引き上げで好循環絶たれる 政府の歴史的判断ミス
2014年10月末 追加緩和 QQE2 マネタリーベース 年間増加目標を80兆円に拡大 (政策委員会評決5対4 異論を抑えて決定)
2014年11月 消費税再増税(2015年10月に予定)の先送り決定
2015年4月 物価上昇目標 13年4月から2年程度(14年度内)を16年度前半頃に変更 変更は1回目
2015年4月22日 日経平均15年ぶりに2万円台回復
2015年10月 物価上昇目標 16年度前半頃を16年度後半頃に変更 変更は2回目
2015年12月 ETFの新たな買い入れ枠設定など緩和の補完措置
2016年1月 物価上昇目標 16年度後半頃を17年度前半頃に変更 変更は3回目
マイナス金利政策導入決定(政策委員会評決5対4 委員に十分な時間を与えず) → 長短金利差縮小で金融機関経営に悪影響
2016年4月 物価上昇目標 17年度前半頃 ⇒17年度中に変更 変更は4回目
2016年7月 ETFの年間購入額の引き上げ 3.3兆円 6兆円へ
2016年9月 長短金利操作導入 軸足を量的緩和から金利操作に移行(短期金利をマイナス0.1%、長期金利をゼロ%程度に誘導する長短金利操作付き量的質的金融緩和政策…国債買い入れ続く 物価上昇率2%上昇が定着したと判断できるまで緩和を継続するオーバーシュート型コミットメント:緩和を長期戦に なお国債保有残高を年80兆円増やす目標数値は維持。IMFは2017年6月この80兆円の言及をやめるように言及。60兆円に鈍ったとされる) →金利野安定(官製相場) → 国債の売買急減 スレルステーパリング(こっそり資産購入額削減)ゼロ金利への誘導で金利は安定化 日本国債VIXも1ポイント台の低水準にある
2016年10月 物価上昇目標 2017年度中から2018年度頃に変更 変更は5回目
2017年春 有効求人倍率の上昇 失業率の低下 企業収益の改善など 生鮮食品除くCPI上昇率前年同月比0.3%(4月)
2017年春 バイトパート時給は上昇 原材料価格も上昇 企業物価指数は上昇 しかし消費者物価指数CPIは微増にとどまる 川下デフレ
2017年5月末 日銀資産500兆円超え GDPの9割強(FRBは23%)
2017年6月末 日銀保有国債は430兆円 発行残高の4割を突破 日銀はとくに短期国債購入を控えている マイナス金利状態で満期までもてば評価損もでるため
2017年7月 世界の中央銀行が大規模緩和政策を終えようとするなか(2017年6月 FRBは2017年に入って2度目の利上げ決定)長期金利 2017年4月に0.01%の底から上昇 4ケ月半ぶりに2017年7月0.1%まで上昇(2017年2月0.1%から4月0.01%まで急落 2年物は3月頭マイナス0.30%が底 6月末にはマイナス0.10%) → 7月に入ると先進各国で金利上昇 日銀は金融緩和政策維持(内外金利差拡大から円安見通し)80兆円の目標値、ETF保有額年6兆円ベースの増額にも言及(2017年6月22日 岩田副総裁記者会見)
2017年7月―8月 エネルギー価格(原油価格の上昇 電力・ガス料金 光熱費上昇) 円安(輸入品価格の上昇から企業物価は上昇 原油価格については中長期の原油安を指摘する意見も根強い) 食料品価格(生鮮食品など)の上昇を受けて物価は上昇局面入り 日本のCPI上昇率は0.5%程度。米欧の1%台とは大きな差がある。
(物価上昇を抑える要因として品質問題がある。住居費の算出方法として品質低下を反映しない場合、実質的に家賃は上昇していても住居費には反映しない。富裕層による貸家投資が過熱⇒そもそも貸家が過剰で全国的には家賃が下落傾向のある。またデジタル革命による通信コストの変化も重要。情報探索コストが劇的にさがるなど効率の改善が起きているとも考えられる。)
人手不足による省力化投資(労働生産性を改善し⇒自動化投資 ロボット化が雇用を奪うとの解釈もある 生産性の伸びが実質賃金の伸びを上回れば)は結局人件費を抑えると解釈されている 今一つは生産効率の改善 生産効率に名を借りた残業禁止 また営業時間の短縮 不採算店の閉鎖などの利益確保 などは人件費抑制の側面 賃金が伸びなければ輸入品価格が上昇しても消費者に転嫁しにくい 求人倍率上昇・失業率低下の背景に団塊世代引退の影響 女性や高齢者の労働参加は限界に近いとも・・・となると賃金上昇?
2017年7月 物価上昇目標 2018年度頃から2019年頃に目標変更 変更は6回目 追加緩和必要なし(7月20日) 人手不足で物価上昇はなくとも好景気? なぜ目標値の引き下げ とりやめができないか。⇒ 物価上昇目標値の引き下げ(高いお金の価値を望む)はデフレ心理を強め円高を強めるのでさげられない FRBやECBも事実上目標は2%なのでそれより低い目標は誤ったメッセージになる
物価上昇期待(インフレ期待)を過度に織り込んだ(実際は消費者はデフレ心理にある)日銀モデル(期待先行モデル)が予測のはずれを生む。
17年度予算 97兆4547億円 過去最高を更新 債務残高のGCP比は2016年度GDPの160%
国地方あわせて基礎的財政収支(社会保障や公共事業など政策経費と税収の比較) を税収で賄う(政策経費<税収)ことをプライマリ―バランスPBという。それを2020年度に達成するのが安倍政権の国際公約。しかしその実現は厳しい(2017年7月で2020年度は8.2兆円程度の赤字見込み 実質成長率2%程度の楽観想定でも 試算の前提としての2019年10月の消費増税実現するとしても)→2020年財政黒字化目標先送りか?
財政健全化目標 2020年度までのPB黒字化+債務残高対GDP比の安定的な引き下げ目指す 後者の目標数字はGDPが増えると改善するので、債務残高そのものを減らすことにならないとの批判がある
なお2014年4月の消費税税率引き上げ こちらは2014年の景気を冷やした反面 その後の税収増要因になったとされる。
日本企業の海外子会社の稼ぎ・・・一定の条件で税金上優遇 といったことがあって 企業の海外の稼ぎが増えても 税収増そのままつながらない
超低金利政策の弊害
長短金利操作付き・・・日銀が長期金利(10年物)もコントロール 市場では超長期物の金利が上昇
取引でも20年物が増える
懸念される 安全資産バブルの崩壊(国債のマイナス金利からの浮上 低リスク株からの資金流出)
低金利+株高
日本の潜在成長率の低下から日本の金利は今後も高くならないとの見方も多い。
日本国債のCDSも上昇0.3%から0.4%へ 2017年9月下旬
市場の短期化(投機化) 財政規律の低下 金融機関への影響
日銀は動けない状態(出口がなく 現在の政策から脱却できない状況)にある。
債券投資が成り立たず市場が短期売買の場となっている。運用ニーズは超長期債 劣後債などに。
金利上昇リスク スワップション
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Originally appeared in September 30, 2017