Entrance for Studies in Finance

中国リスク について Chinese downside risk

中国GDPは世界の11%(8兆2270億ドル 2012年)の規模にたっした。
・・1990年当時は1.8%(3800億ドル)だった。教育環境や内容を別にすれば 高等教育も一気に普及し2011年大学数は2409校 2012年の大卒者は680万人で過去最高。しかしその就職率は7割程度。2012年の日本のGDPは5兆9639億ドルだった(中国に次いで世界第3位)。2011年5月1日の日本の大学数は780校(国立86 公立95 私立599)。2011年3月の日本の大学学部卒業生は552,357名である。

この大学の規模をみても分かるように 規模からみればすでに大人と子供で、中国の方が圧倒的に大きい。また北京や上海で
トップクラスの大学を訪ねた人は 先方の施設の巨大さに 目がくらむはずだ。教育の質もテキストを見る限り追いつく努力は払われている。科学研究の分野での論文数での存在感も目を見張ってよい。

このように巨大な中国についての、最近の話題は金融引き締めとそれに伴う経済の後退である。それが世界経済の後退につながることが懸念されている。これを中国リスクと呼んでいる。悪い方向へのリスクだからChinese downside riskと呼ぶことにしよう。

一人当たりGDP 2015年に約]8000ドル。中所得国の上に達する。しかし高所得国の入り口の1万2000ドルとは差。一層の経済発展に失敗する「中所得国のワナ」。第三次産業 2013年にGDP構成比で2次産業抜く 各産業別は2014は9.2-42.7-42.8  1990には27.1-41.3-31.5だった。就業者構成比は1990年 60.1-21.4-18.5  2014年には29.5-29.9-40.6だった。295非製造業を育ててゆけるか。都市常住人口 1990  26.4% 2010 49.9%    2014    54.8%

人口ボーナス 人口オーナスに変わった。どうすればよいか。 生産年齢人口15~64 2014年から減少

ジニ係数野上昇どうみるか。2008年0.491 2014年0.469


たとえば資源価格は急上昇のあと 反落している(石炭や鉄鉱石の価格は2011年春先のピークに比べて大幅に下落している ピークの価格は原料炭は
トンあたり300ドル超え、鉄鉱石は170ドル超えまで上昇していた。それが景気減速で2013年8月には原料炭は
半値以下。鉄鉱石は120ドル台までさがっている。)。

(1998年 広東国際信託投資公司GITIC問題 地方政府の外貨調達機関だった 外資の損失を押し付けて決着。当時 王岐山が広東省副省長)

2011年12月 日中金融協力きまる(人民元と日本円の直接交換取引の解禁など)

2012年の実質経済成長率7.7%(政府目標7.6%)

2012年9月 尖閣諸島(魚釣島)の領有権問題で日中関係悪化

2013年のGDP実質成長率前年比7.7%増(エコノミストの予想値7.6% 2014年7.6%) 1999年以来の低さ 2007年の半分。2年連続の8%割れ。

民間消費が4割 投資など固定資本形成が5割近い 民間消費が6-7割の日米に比べて過度な投資依存

投資への依存度は先進国で2割 途上国で3割

2013年9月末の外貨準備高3兆6600億ドル(360兆円) 6月末に比べて1600億ドル増加

2014年4月から一人っ子政策見直し。各地での立法措置を前提にして、夫婦にいずれかが一人っ子の場合に二人目の出産を認めるというもの

+2014年1月

中国政府の中成長へのかじ取りを反映(2012年3月全人代での温家宝首相が8%でなく7.5%という成長率見通し示す)
インフら投資の鈍化 新興国の景気減速 人民元 人件費の上昇 金利の高止まり 景況感の悪化

2015年6月 三菱東京UFJ銀行 東京で初の人民元建て債券3億5000万元(約50億円)を発行

2015年6月 上海株式市場でバブル崩壊

2015年 伊藤忠商事は中国中信集団CIICとタイの財閥チャロン・ポカパンに1兆2000億円を折半出資

2015年8月4日 IMFレポート 基準値がオンショアレートから2%近く離れていると指摘

2015年8月11日 中国人民銀行 人民元相場基準値を突然下げる人民元ショック 初日1.9%切り下げ

2015年11月30日 IMFがSDRへ人民元採用決定 元安と資本流出

2016年12月16日 米FRBが9年半ぶり利上げ

2016年1月4日 上海株急落 年明け最初7%安と暴落 この日 導入されたサーキットブレーカーは」

4日後撤回

2016年1月11日ー12日 人民銀行 香港市場で大規模な元買い介入

 

金融引き締めの原因としての融資平台
 ではなぜ金融引き締めに入っているのか。 
 2013年3月の旧正月明けには 大規模な資金吸収オペを実施している。
 狙いはシャドーバンキング(影の銀行)の抑制にあるとされる。
 銀行(表の銀行)はさまざまな規制を受けている。それを逃れるため 大企業を介しての融資。つまり
大企業に一度は融資。それがまた貸し(委託融資 企業同士の貸し借りをいう)の形で中小企業にまわるほか
理財商品への投資の形で結果として融資平台を経由、そこから地方のインフラ投資に回っているとされる。
 こうした影の銀行が肥大化していて、直近ではGDPの伸びが2013年1-3月で前年同期比7.7%増とされるのに、
社会融資総量(貸出+債券+信託+委託融資など含める)は58%増とされ、金融が実体を上回って肥大化している
ことは明らかとされる。
 融資平台(あるいは不動産会社)は地方政府の傘下にあり、地方での
インフラ開発の実施部隊だが、その行き過ぎが問題になっている。
 地方債の発行を原則禁止されている地方政府は融資平台を抜け穴にしている。
銀行が融資平台向け融資をしぼると、融資平台は今度は債券(城投債)を発行。
2012年の城投債の発行規模は6367億元(約9兆4000億円) 前年の2.5倍
(2012年で6400元 前年比2.5倍 背景:銀行は貸倒を嫌って融資平台への融資を絞り込んだとされる・
融資平台への銀行の融資規模は約10兆元:約160兆円とみられる 地方融資平台の負債総額については2012年末でGDPの37%にあたる19兆元 307兆円という試算がある)
これが理財商品に組み込まれ、企業や個人に購入されている。
 また地方政府そのものの債務の拡大(地方政府の債務は 2013年半ば現在 2010年比2倍の20兆元=320兆円を超えているとも)も懸念されているし、不動産バブルも懸念されている。
別の報道では中国の地方債は2009年の4兆元の景気刺激策を実施する際に解禁されたが 原則として
中央の財政省が地方政府の代理として発行する形をとっている。このほか特例として有力都市には
自主発行枠が認められているとのこと。
 地方債の2012年の発行額は2500億元(3兆2000億円) 前年比25%増

 2013年統計による懸念。2013年統計。企業の債券発行などを含めた広義の新規融資総量。 社会融資総量 17兆2900億元(298兆円)   2013年8月で1兆5700億元(15.7兆元?) 25.5兆円(255兆円? ) 前年同月25%高 2014年2月の社会融資総量は9387億元(約16兆円 前年同月比1318億元のマイナス 増加ペースの鈍化を示す)
企業間のまた貸し2兆5500億元にまで増加 前年比で倍増
これは影の銀行の代表格(委託融資)とされる
信託会社を通じた融資は 4割増 また貸しと信託会社を介した融資との合計が25%(前年16%)に急増
銀行融資は51.4%(前年比0.6ポイント減少)
2008年のリーマンショック 緊急経済対策 4兆元 投資資金あふれる(世界経済の機関車) 公有(国有)企業を潤し政府による市場関与強まる(過剰投資 過剰生産能力の後遺症 鉄鋼ヤセメント 主要製造業の稼働率は7割とされる)(2001年のWTO加盟が経済改革のピーク 以降は経済改革からの逆行 対外的にも強硬路線へ 2005年小泉靖国参拝による反日デモ 2012年9月尖閣諸島国有化で反日デモ 2013年11月中国政府尖閣諸島上空に防空識別圏ADIZを設定 2013年12月安倍靖国参拝)
社会融資総量 2008年には約7兆元だったが2009-2010年には約14兆元に膨らんだ。

社会融資総量に占める正規の銀行(元建て新規融資)の低下。2002年の92%が2013年51%に低下している。
影の銀行の主要な資金ルートは理財商品。高利回りをうたって「理財商品」で集められた資金が不動産開発(地方政府が農民から土地使用権を買い上げ都市開発業者に高く転売。都市化が進展。)などに流れ込んでいる。銀行が販売した理財商品の残高(2013年6月末)9兆元(150兆円)で2012年9月比で35%増。投資先の事業について十分な説明がなく、元本保証がない点も説明が不十分。投資先が破たんした場合の責任の所在も不明確。
リコノミクス(李克強首相掲げる経済政策 習近平も支持) 大規模な景気刺激を避ける 市場メカニズムの拡大などを通じて 信用リスクを抑え 過剰設備の縮小など構造調整進める(構造調整重視 質と効率 環境 省エネ 不要な投資で成長率をかさ上げ債務を残すことに批判 地方政府の幹部の評価基準 成長率から質と効率へ)
景気刺激策を打ち出さない
財政金融の引き締め
構造改革の推進(反腐敗闘争 2013年7月中国人民銀行貸出金利自由化発表 10月上海自由貿易試験区設立) → 既得権益との衝突が予想される
2013年18期3中全会で成長率目標を掲げなかったことと対応。
背景:GDPの投資依存(民間消費は4割未満 固定資本形成が5割近い 日米では民間消費が6~7割)
景気の底割れ懸念を払しょく 経済改革への抵抗抑える(2013年7月 インフラ整備重視打ち出す)・・・7%台の成長維持
1978年14期3中全会 社会主義市場経済体制の構築に関する決定 「改革開放路線への転換」決める 計画経済の堅持 市場を補完的に利用
1993年3中全会 市場経済に向けての50ケ条プログラム 「社会主義市場経済」:市場化に向けた改革の方向性決める 市場経済への移行漸進的に進める 国有企業民営化に着手
2001年WTO加盟前後 市場経済への移行を完成
2003年16期3中全会 社会主義市場経済体制の整備に関する決定 社会主義市場経済が基本的に構築された
2003年 国有資産監督管理委員会 銀行業監督管理委員会(中央銀行から銀行監督部門を独立させた) 成立 → 国有企業躍進 民営企業後退顕著 国進民退
  国有企業は「自主創新=自主的イノベーション」「走出去=対外進出」の担い手
2013年18期3中全会 改革の全面的深化に関する決定(少子高齢化 資源環境の制約に対する自覚 生産要素・資源投入型高成長の限界) 15分野60ケ条 市場に資源配分の決定的な役割を果たさせる 公有制主体は堅持
  1年物定期預金が約3%の利回りのところ、理財商品は5~10%の利回りを提示して資金を集めて
また口頭で元本保証をうたっているとされる。・・・消費者物価指数が3%超えることが多いので3%では
実質マイナス金利との指摘もある。運用期間が2週間から6ケ月と短期であるのも人気であるようだ。
 2012年12月には中堅の華南銀行が販売した理財商品(貸出や債券を小口化したもの)の元利金が期日に返済されない事件が発生。
購入者による抗議活動が上海市内で発生が話題になった。このような事例が今後急増することが懸念されている。
 理財商品の規模については 英格付け会社フィッチが2013年6月約13兆元という推計を発表した。
6月19日 銀行業監督管理委員会の尚福林が明らかにした数値は2013年3月末で8兆2000億元(130兆円)。
これは2012年の中国GDPの16%、人民元預金(67兆元)の12%にあたる。
 このほか信託会社が組成した「信託」がほぼ同規模(8.7兆元)有る。こちらは運用期間1年以上。しかし
利回りは10%前後とさらに高利回り。
 さらに銀行が紹介した企業に資金を企業が貸し出す「委託融資」がある。
 理財商品に信託、委託融資などを含めたものは、広義のシャドーバンキングとされ、2012年末で29兆元(米ムーディーズアナリテック)とか、36兆元(JPモルガンチェースの朱海斌氏)に達するという推計がある(20数兆元 ・・・キャノンの瀬口清之さん)。正確なところは不明だが
かなり大きいとみてよいだろう。その破たんが及ぼす影響が懸念されている。

(2割が破たんしても、大手5行の純利益だけでも7700億元あり吸収可能 と瀬口さんは主張している 日経20130827)
 銀行は理財商品の販売を増やし、委託融資にかかわっていたとみられる。
 手数料が入ることと、銀行本体に課せられている預貸比率規制(75%以下)を
超える資金調達ニーズにこたえられること。

 しかしながら中国の政府、企業、家計を合わせた負債規模はGDPの200%程度とされる。これは日本の400%程度。米国の300%程度。
欧州の225%のいずれと比較しても小さい。したがって過度に心配する必要はないとの指摘もある。
 確かに公表ベースの中国政府の債務残高はGDP比15-20%(2012年末で7兆7600億元 GDP比15%)。地方債券や融資平台含めると50-60%。年金や旧鉄道省の負債を入れると90%前後とされる。
 公表数値の問題 地方政府の隠れ借金 原則地方債の発行はみとめられていないので地方政府は融資平台を通じて資金を借り入れ
インフラ投資:公表数値にはない。審計署の推計では2010年末で10兆7000億元
 国と地方を合わせた債務の規模は34兆元 GNPに対する比率は7割弱で2倍を超える日本に比べれば 問題は深刻ではないと
中国側関係者は指摘する。ただし地方債務は銀行からの短期の借入でそれを長期に回す不健全な状態にある。地方政府が地方銀行の
株を6-8割保有して、そこから借入をしていると見られる。
 地方政府が債券で資金調達できるようにして、融資依存を改めさせること。地方政府の地方銀行保有株を売却させて、地方政府の
債務返済源にさせるとともに、地方政府と地方銀行との関係をより透明なものに改める必要があるだろう。

 景気減速 税収減少(付加価値税 企業所得税など減少 政府の税収の伸びは鈍化 地方政府の財源である不動産取引税は規制直前の駆け込みで増加)
国有企業(とくに直轄を中央企業)は多額の欠損金を抱えている 欠損金のほか補助金を受けている
2012年の10大欠損企業(国有企業)の欠損総額は497億元(8000億円)
そのうち5つの中央企業で318億元(5100億円)
鉄鋼5社の欠損総額186億元。
2012年末の中央政府債務残高7兆8000億元 地方政府が22兆2000億円 合わせて30兆元
2010年末の地方政府債務残高10兆7000億元。
 シャドーバンキング拡大
 招商証券 華泰証券による地方政府の隠れ借金の推計は15兆元。李礼輝前中央銀行長の2014年3月10日インタビューでは中国のシャドーバンキングの規模は20兆元(340兆円) 問題の根底には地方政府の財政不足があるされる。
中国のシャドーバンキング問題は過大視されているが、債務実態に引き続き注意を払う必要がある。
 当局は銀行に対して融資平台への融資を規制。融資平台は大手企業や個人から資金を調達。銀行の融資が大企業を介して
また貸しの形で行われているともされる。銀行はこうした融資の焦げ付きを心配している。
 融資平台の資金調達は2013年前半だけで2200億元(3兆4000億円)に達しているとも。
 また割り算をする母数となるGDPの数値の確かさにも疑問はある。

 2009年詐欺罪で死刑判決 呉英事件 高利をうたい7億7000万元(97億円)集めるに死刑判決 厳しすぎるとの世論から執行猶予に。
 資金の貸し借りが拡大。年率25-30%をうたって資金を集めて、さらに高利で貸し出すものの。資金回収の悪化で逃走。江蘇省常熟で生じた顧春芳事件(2012年3月 被害総額4億元:52億円)
 2013年7月末に起きた理財商品販売会社の破たんは江蘇省連雲港市だった(莫哈特理財諮詢 7月27日突如メールで営業停止を顧客に通達。経営者は自首して刑事拘留)。400人以上から6000万元を集めていたとみられる。)

 2014年1月下旬 中誠信託(北京市)が発行した「誠至金開1号」30億元が債務不履行危機。投資先は山西省の採炭会社(零細会社多く石炭価格の下落で苦境か)。政府に意向で第三の投資家(地方政府や販売した銀行などが当局の指示で買い取りか?)が買い取り支払が成立。 1月21日 中国人民銀行は12月 資金供給をしぶって過剰流動性解消の構えで市場は動揺。短期金利が半年ぶりの高水準に上昇。株価も急落(12月から1月)。株式は11月末のIPO再開発表もあり、上値は重い。そこに2014年1月21日4週間ぶりに資金供給。1月末 中誠信託はデフォルトの回避を発表。

 吉林省信託(吉林省長春市)発行の「吉林・松花江77号」9億7240万元のうち期日到来の7億6340万元(約130億円)が未返済(2014年2月12日上海証券報による)。投資先は山西联盛能源(山西省)。山西联盛能源と山西省政府金融弁公室とが戦略的再建案で合意。
 理財商品の残高は銀行経由販売分だけで9兆9000万元(年10%を上回る高利で投資家集める 背景には金利規制 たとえば定期預金の基準金利は1年もので3%)。

  2014年3月7日 太陽光パネル大手上海超日太陽能科技の社債が利払いできずデフォルト(中国社債市場でデフォルトは初めて)。3月13日の記者会見で李克強首相 デフォルトに容認姿勢 投資家の間でデフォルト懸念が広がる恐れ。

 投資先としては 大規模マンション ショッピングセンターなども目立つ。鬼城(ゴーストタウン)化している。
 規制外の資金規模は全土で3兆元(38兆円)とも
 小額ローン会社 2008年に設立認められる 基準金利の4倍以内で金利設定できる 2011年の融資規模4400億元前後 銀行融資の1%
 温州市で設立証券緩和 2012年 温州市だけでみれば規制外の金融が2割まで成長

 理財商品の代表 信託商品の2013年末資産残高は10兆9100億元(185兆円) 前年末比46%増 名目GDPの約2割。提示する利回りは年7~10% しかし元本保証ではなく信託会社に法的責任はない。2013年夏 陜西省国際信託が元利金を支払った事例がある。信託会社の賠償準備金と純資産合計額は信託資産全体の約2.4% 2012年に満期返済時に問題が発生した信託商品は約200億元。

 影の銀行の規模。2012年末で20兆5000億元(中國社会科学院の推計 2013年10月発表) 信託商品の2012年末の残高は7兆4700億元

 不安材料としての中国による米国債保有 外貨準備が3兆ドルあまり 2013年4月末で1兆2600億ドルの米国債を保有。外国勢による
保有5兆6700億ドルの2割。ほかに中国は米国のMBSを大量保有。・・・ということはFRBが金融緩和を縮小するとき、中国が金融システムの
穴埋めに自国の外貨準備を減らす行動が重なったらどうなるか・・・・米国債の売り 国債暴落 米長期金利急上昇


 こうしたなかで2013年6月24日午前に人民銀行は国内銀行に対して流動性管理で注意喚起するとともに、現在の金融政策の継続を表明した。これは国内銀行の出している理財商品の償還期が集中して(フィッチの償還推計額は1兆5000億元 数兆元)、短期金利が急騰している(平時の2-3%が6月20日に13%台に急騰)、との観測のもとに行われた。
 当局としては預金準備率引き下げなど金融緩和措置を否定、他方 銀行の破たんという不測の事態を懸念する姿勢も示したといえる。

短期金利の急騰と株価下落(2013年6月下旬) 3%前後から13%台に急騰
 昨年(2012年6月と7月に政策金利引き下げ年物預金金利貸出金金利6%下限70%4.2% 1年物預金金利基準金利3%上限10%3.3%
  銀行ハリスクの低い優良企業に融資を集中 中小企業に資金が回らない そこで影の銀行が発達した) 
6月20日 短期金利(上海銀行間翌日金利翌日物SHLIBOR)が普段の2-3%台から過去最高の13%(13.444%)まで上昇(前日比5.8%高)
      これまでの最高は8日の9.581%(20日については瞬間風速で20%超えたとのうわさがある)
     人民銀行はこの金利の急上昇をあえて見過ごしたとも あるいは 
     一部銀行に資金供給実施したともみられる。
     表面では手形発行で20億元の資金を吸収する引き締め策を実施 上海株は急落 
 6月23日 中国工商銀行がシステムトラブルで一時預金引き出し不能に 資金難の噂流れる
 6月24日 人民銀行が国内銀行に対して流動性管理で注意喚起
      上海株は前週末比5.3%安の1963.235(2000を半年ぶりに割る)
 6月25日 上海株は一時前日比5.8%安の1849(4年半ぶりの安値へ) SHLIBORは5.736%の高止まり
      資金供給の可能性(一部銀行に資金供給実施したことを公表)を示唆する人民銀幹部発言で落ち着く
 6月27日 上海株年初来安値(5月29日以来では16%下落)
 6月28日 SHLIBOR翌日物4.941%に低下
 7月11日 SHIBOR翌日物3.3547%

ホットマネー流入の懸念
ホットマネーが外国から供給されていることが指摘されている。たとえば
3月外貨準備高3兆4400億ドル(340兆円)2012年末にくらべて1300億ドル増加
これは熱銭(ホットマネー)の増加につながると中国人民銀行は警戒あらわとされる。
→ 逆に止まると短期金利急上昇が懸念されるのだが。

こうした中で偽装貿易を通じた資金流入が指摘された。
統計数値への疑問 2012年12月から2013年2月
 輸出 過大ではないか(中国統計949億ドル 香港統計587億ドル) 水増し輸出の指摘
 輸入 過少ではないか(中国統計45億ドル 香港統計580億ドル)

商品が輸出されず 偽装貿易の形で証券や不動産投資などを目的とする資金が中国内に流入している可能性が指摘されている。
香港や国内保税区向け輸出が急増している。となるとこうした偽装取引への取締強化が、
ホットマネーの供給の断絶、バブルの崩壊につながることも懸念されている。
 つまり誰も破綻を望んでいるわけではない。しかしあまりにも巨大化した 影の銀行。
 これがおだやなか終焉を迎えることは予想しにくい。そこで不安が高まっている。

鬼城:空き室だらけのゴーストタウンのようなマンションを指す
地幣:地方政府などが開発供給する土地が信用創造機能を持つとの意味
不動産市場引き締め策:2010年春導入 2軒目以降の住宅購入 頭金の比率を高める
 北京市の場合は2軒目は頭金を60% 公的融資も利用できないなど
20%課税 住宅の売却益に20%の所得税をかける方式(実施時期は不明 2013年3月)
 → かえって売買をあおる結果になった

このような景気減速の話は2012年春にもあった(欧州景気の不信 2010年半ば以降の元高 現高は2012年に入ると中休み
)。不動産取引規制堅持など(2012年7月23日『人民日報』 6月から2度続けて利下げ 金融緩和の他方では不動産取引規制
投機目的の住宅購入を規制 2011年11月末 不動産関連融資残高10兆4600億円 地方政府の税収の3割4割が不動産野開発権を
業者に売却することで得られる収入 2011年 地方政府の土地譲渡による収入は合計3兆元 税収の6割とも
成長を達成 → 党幹部として出世するときの選抜基準の一つがどれだけ経済成長を達成したか)

先進国向け輸出は減速している。
 2007年 GDPの伸びは14%
 2010年 GDPで日本を超える しかし
 経済成長の実質に疑問の声 預金金利を抑えた金融システムで低コスト資金を国有企業・地方開発プロジェクトに流したが 結果として 鉄鋼など素材産業での過剰生産(鉄鋼は生産能力10億トンに対して2012年の生産は7.2億トン 世界の粗鋼生産の46%とされる) 交通不便な山奥に立つマンション群 輸出力があるのは外国ブランドメーカーばかり パソコンも心臓部の半導体は輸入品
 必要なのは 企業の質(生産性 技術や商品開発力)を高めること そのためには金利の自由化により 銀行の利ザヤ圧縮 過剰設備投資 乱開発の防止 産業構造の転換 を図ることというのだが その過程で生ずるであろう 企業や金融機関の 破綻が恐れられている。

なお新政権は発足当初より引き締め策に転換している
倹約令(2012/11習近平総書記就任後 官官接待 贈答行為の禁止)・・・国有企業で金券の買い物カード配布が縮小・・・高級料理店の閉店
2012年12月 中央経済工作会議 内需を重視し安定成長の持続を目指す方針
・内需主導型経済への転換
・農村の都市化により都市と農村の格差を縮める
(習近平の父習仲勲氏は広東省共産党委員会書記として経済特区の構想を1978年に提言。小平の支持を得て1980年から実施して
深�祁など沿岸部発展の基礎を築いた)
→ 李克強首相は投資よりは制度改革(土地 戸籍 医療 住宅など)に重点を置くように指示 リコノミクスとも呼ばれる
不動産バブルの加速 地方政府の債務増加を懸念

バブル懸念を収束させた 1998年の朱鎔基氏(当時の首相)による既得権益との対峙と比較される
 → 広東国際信託投資公司を破産させ 地方や国有企業改革を断行 → 2000年に入って以降の2ケタ成長の基礎となったと評価

 2008年のリーマンショック後の4兆元の刺激策が国有企業の過剰な生産能力 不動産価格の高騰 高利回り金融商品の蔓延などにつながった。
 中国経済が高速成長の時代を終えている認識 市場化して生産性の向上に努める必要

2月20日 国務院不動産市場引き締め策の継続を発表
3月1日 不動産市場に対する引き締め策(個人が2軒目以降の住宅を買う場合 頭金比率と融資金利を
一軒目に比べて高くすること 売却時に譲渡益に20%の個人所得税課税など5項目)を発表

国務院弁公庁通知(2013年)2月16日 中古住宅売却時の差額に20%の個人所得税課税の明確化(これまでは転売時総額の1-3%との選択制)
このうち20%課税が新たな追加項目で政策内容が予想より厳しい評価されたとされる。
3月末 北京 上海など4直轄市 計画単列市省都で住宅価格抑制の目標と具体策の交付始まる(具体策は複数購入の制限や住宅ローン利用への規制など 20%課税の厳格適用されるか運用姿勢に疑問も)

2013年3月の全国人民代表大会(3月5日から17日) 2013年の経済成長目標を7.5% 2012年と同じ数値に据え置いた。
持続的安定成長 13年の目標値をあえて7.5%と低めに設定(逆に2020年までの所得倍増には7%成長は必要)
物価上昇目標値は2012年4%(2011年より抑制) 2013年3.5%
マネーサプライ増加率目標引き下げ 2012年14%から2013年13%増へ
1-3月 経済成長率鈍化にも関わらず資金供給量の伸びは2012年(14%)により高かった
5月15.8% 社会融資規模1兆1900億元
6月前年同月比14.0% 社会融資規模1兆400億元
銀行を経由しないシャドーバンキング抑制のため 資金供給を当局は絞っている。

財政赤字 対GDP比率は2012年1.5%(1.6%)(2011年より抑制)から2013年2%に引き上げ
2013年1-3月のGDP 前年同期比実質7.7%増(外需1.1%)
2013年4-6月のGDP 実質7.5%増(3.4%消費 4.1%投資 外需0.1% 年間目標は7.5%)
2012年10-12月期の7.9%から減速(半面では2年ぶりに前の期を上回る)
2012年7-9月期は7.4%だった。

しかし公表数値で見る限り政権の経済政策には安定感がある
一般に中国の引き締め政策の転換が、中国経済の成長を減速させ、さらに世界経済の混乱に
連なることが心配されているが、公表された数値によれば、中国経済の各種指標は比較的安定している。
 この間、4月にはH7N9型鳥インフル拡大 鶏肉敬遠 KFC大幅減収があり、また
5月31日 省エネルギー家電の購入補助打ち切り(2007年末以降の家電販売支援策の終了)があり、
これは大手家電は、補助金が弱小企業の温存 供給過剰を生むと主張し 打ち切りを提言していた
ものだが、終了すれば家電メーカーには一般的にはマイナスの影響が心配された。
 しかしその割には各種の指標は「意外に」安定している。
 こうした側面から軟着陸は可能との見方もある。一部の日本の報道がやや過度に報道している可能性はある。
 そうした数値をまた疑い出せば確かに疑えるが、冷静になる必要もあるだろう。

中国物流購入連合会6月1日発表
製造業購買担当者景気指数
PMI50.8(8ケ月連続で50を上回る)
新規受注指数は51.8(4月から0.1ポイントの小幅改善)
HSBC6月3日発表
中国製造業購買担当者景気指数5月分 確報値49.2(5月23日発表の速報値49.6から低下) 50を下回り昨年9月以来の低水準
・・・・調査対象に中小企業や輸出産業が比較的多い
6月確報値48.2
7月確報値47.7と低下 8月速報値50.1(8月22日)と改善
中国汽車工業会6月9日発表
主要小売り100社の販売額伸び率(中華全国商業情報センター)
2013年1-6月 10.7%(2012年後半と同程度)
ネット通販が急拡大
2013年1-6月の流通総額 8798億元(中国電子商務研究センター) 前年同期比80%増

ネット金融も拡大 開示不十分な投資商品販売 投資先の情報開示不十分 アリババの余額宝など

            2013年6月中旬発売開始 利回り4% 天弘基金の口座に移して運用
            2週間で66億元集める ・・・・新たな影の銀行か
            ネット上で第三者に年率15-20%に貸し出すP2P(ピアツーピア) も拡大
            2012年末で200社100億元超 1000社近くが300億元集めているとも
2012年GDP 通期実績7.8%(8%割れ) 2012年10月12月期 実質年率7.9%増
2012年2013年 実質成長率は7%台とみられる
中国国家統計局6月9日発表
工業生産(5月)前年同月比9.2%増(4月は9.3% 3月は8.9%)
1日当たり発電量4.1%増(4月は6.2%)
卸売物価指数は-2.9%(4月は-2.6% 3月は-1.9%)
社会消費品小売総額12.9%増(4月は12.8%増 3月の12.6%)・・・・中国政府の年間目標は14.5%
消費者物価指数2.1%上昇(4月の2.4% 3月の2.1%)
このように当面の数値は安定しているが、中長期の不安はなお解消されていない。
 2013年6月の輸出額前年同月比3.1%減 マイナスは17ケ月ぶり

2013年4-6月の実質GDPの伸び率前年同期比7.5%

生産年齢人口の減少 など各種の成長制約要因の表面化が懸念される

・高齢化に伴い 労働力の不足 賃金上昇などが成長の重荷となるリスク
・環境やエネルギー消費が成長の制約となるリスク
・技術革新の遅れが生産性上昇を遅らせるリスク

2010年に日本を抜いたとはいえ一人当たりでは5400ドル 米日の9分の1
都市と農村の所得格差は3倍強

米国主導の環太平洋経済連携協定交渉 11け国参加(世界GDPの40%近い)に強い警戒感
1979年に改革開放政策に切り替えたものの 知財保護で遅れていることが 制約との見方。 
これまで中国は外国企業の技術のコピーで急速に発展(知財権の保護が低い・・・進出企業の悩みの種)
8年前は8位 2年前2011年に4位 2012年に2位)
フォロワーの利益を享受。模倣品取締は不十分。
模倣品取締は地方経済に悪影響 
知財保護政策(知財を評価するシステム)がなければ国内でも 本当の意味で技術力を育てることは
できない。
なお強い金融規制
国有銀行は金利規制のもとで多額の利ザヤ稼ぐ 定期預金年3%前後 貸出金利6% 利ザヤは3%
国有銀行は国有企業(株式の大半を政府が保有)に融資。これがバブルにつながっているとの批判もある。
2004年10月貸出金利上限規制撤廃(預金金利下限も事実上撤廃)
2013年7月 (19日発表20日実施)貸出金利下限(これまでは基準金利の0.7倍)撤廃
現行基準金利 貸出6% 預金3%(2012年6月と7月に貸出金利下限を既に引下げ)
今後の焦点 預金金利上限の撤廃
      預金保険制度の整備(経営の悪化した銀行の破たんを前提にする)
      社債市場の整備
      個人金融商品の多様化

さまざま格差の存在
人口は13億人(健康保険の加入者は2億8000万人で保険制度は不完全)。
人口比は都市と農村で半半(都市化率は5割超え)
実際の人口は都市が3分の1農村になお3分の2。
農村の平均収入は都市の3分之1など都市と農村の格差は大きい。
格差係数ジニ係数は2008年の0.491から2012年の0.474に改善 依然0.4以上の水準にある(危険水域の0.5に近い)
(西南財経大学の調査では2010年に0.61となった)
2000年の0.41を最後に政府は発表とりやめ
税制が資産保有層に有利 相続税や贈与税がない 賃金所得に高い累進所得税 そのほかの税は低い定率税
→ 貧富格差拡大は先富論(小平1983/01)の破たんとの指摘あり
こうした社会的格差が社会の不安定さ、政権基盤の弱体化につながるおそれがある。

人口高齢化の進展 賃金の上昇
2013年1月18日 中国国家統計局は2012年末の15歳59歳の労働力人口が前年比0.9%減と初めて減少したことを強調した。
従来は15歳64歳を労働力人口としていたのを変更
出稼ぎ農民工縮小・・・人手不足 内需の雇用拡大 若者の工場労働敬遠
賃金の上昇は急ピッチ 広東省で最低賃金19%引き上げ(2013年2月決定 実施は5月から
広州市で月1550元 10年前の3倍 2003年では510元だった。これまでの最高はシンセン市の1500元。)
 日本企業が中国よりも関心を寄せる国(ジェトロ 今後1-2年の事業展開拡大を検討する日系企業比率)
 2009年 平均51.3 中国61.9 インド74.9 バングラデシュ79.2
 2012年 平均57.8 中国52.3 タイ64.2 インド83.6 インドネシア77.3 ベトナム65.9 バングラデシュ82.4 ミヤンマー75
調査対象:アジアに進出した企業
 中国事業の問題:人件費の高騰(10年前は10倍以上 現在は4倍程度 国内の自動化ラインで対応できる 中国市場向けは
   現地生産の維持が合理的) 
 中国政府は駐在員など外国人に社会保険加入を義務付ける法令を施行。一部で保険料徴収始まる。・・・駐在員削減につながる。
こうした要因は対中国投資の減速、中国の経済成長の減速につながる可能性は高い。
 それだけに 生産性の改善を生み出す 方策の強化が求められる。

撤退(コスト増 売上減少などによる)の場合

 省あるいは市の商無務局の法人登録の取り消し 納税義務の抹消 承認。

 方針決定から完了まで手続きを踏み時間をかけること 地元政府に根回し 取引先従業員への通知 従業員に補償金支給 商務局に批准証書取り消し申請 取り消し許可後 税務登記証の取り消し申請 取り消し(清算完了)

 従業員 経済補償金 勤続1年で1ケ月 5年で5ケ月

 和解金 1年ごとに3ケ月割増 1年で4ケ月 5年で20ケ月(5+3×5)+0.3=20.3

成長の制約になりつつある環境問題 大気汚染 飛行機の遅れ 高速道路の閉鎖 観光客の中国離れ 農業への影響 なお中国では太陽光発電が急拡大しているが大気汚染はマイナスに働くのではないか

appeared in Mar.18, 2014

corrected in Jan.18, 2016 

地域研究

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