概要
ACEsとは
逆境的小児期体験
の研究のことで、
Adverse
childhood
experiences
を略した言葉
である。
逆境的小児期体験
の研究とは、
子ども時代の経験
が、成長して大人
となった際に、
どのような影響を
及ぼすのかを明確
にする研究である。
そもそも、
ACEsの研究は、
アメリカ最大級の
健康保険組織と
米国疾病予防管理
センター(CDC)の
共同研究として
スタートした事
が発端である。
その共同研究だが、
1990年代半ばに
ある調査を実施
している。
その調査とは、
子どもが家庭内で
18歳までに受けた
逆境的体験の数
と、
成人後の予後に
ついての
因果関係で
ある。
調査の結果、
逆境的体験の数が
多ければ多いほど、
健康リスクが大き
くなることが判明
した。
健康リスクとは、
子ども時代の
逆境的体験に
よって
・肥満、
・糖尿病、
・うつ、
・自殺企図、
・性感染症、
・心臓病、
・癌、
・脳卒中、
・肺疾患
といった
身体的・精神的
問題を指す。
また、
・引きこもり、
・喫煙、
・アルコール
依存、
・薬物依存、
・仕事の欠勤
などの問題行動
にも繋がる。
更に、
・学業成績の低下、
・10代の反社会
的行動の現れ
やすさ、
・生活に対する
満足度の低さ
との関連も指摘
される。
*日本では、ACEの
知識があまり浸透
していないことが
現状である。
原因
逆境的体験とは
①心理的虐待
➁身体的虐待
③性的虐待
④家族の薬物
中毒
⑤家族の精神
疾患
⑥両親の暴力
被害
⑦家庭内での
犯罪行動
⑧ネグレクト
(育児放棄)
⑨支持的養育者
の不在
⑩両親の離婚や
両親との離別
を指し、
この体験数が
多いほど症状が
表出する。
症状Ⅰ
ACEsが、
脳神経、
内分泌系、
免疫系
に悪影響を及ぼ
す事は周知で
ある。
例えば、
記憶力の問題、
集中力低下、
注意散漫、
情緒不安定
という症状が
表出する。
このような
症状は
学習に遅れを
生じさせる
だけでなく、
学校生活での
不適応を生じ
させたり、
新たな
いじめ、
暴力被害
などに
巻き込まれる
可能性がある。
そんな中、
ACEsの1つ
である
児童虐待
が、感情制御
に重要な役割
を果たす
前頭前野(PFC)
の容積を減少
させる
という研究が
注目されている。
では、
前頭前野の
容積減少に
より
どういう事
が起こるので
あろうか?
それは、
被虐待体験が、
ストレス
ホルモン
である
コルチゾール
を増加させ、
前頭前野の神経
新生を止めてし
まうのである。
結果として、
前頭前野の容積
が、小さくなる
ことで
癇癪を起こし、
不安や恐怖から
情緒が不安定
になる。
同様に
被虐待体験は
長期記憶を司る
海馬の容積を
減少させる研究
も、注目されて
いる。
では、
海馬の容積
減少により、
どういうこと
が起こるので
あろうか?
海馬の容積が
減少すると
物覚えが悪く
なり、
覚えたとして
も、
そのことを思い
出し辛くなり、
忘れた部分を
作り話によって
言い繕ったり
する事が増える。
更に、
被虐待体験は、
脳の報酬系の
機能を低下
させる、
という研究も
注目されて
いる。
報酬系とは、
モチベーション
や
習慣化に関わる
脳部位を指す。
その報酬系の
中でも
線条体
と呼ばれる
部分の機能
が低下すると
褒められたり、
物を頂戴しても、
嬉しさや達成感
を感じられず、
次に
同じ機会が訪れ
ても、同じ行動
を取らなくなる。
結果として、
繰り返し行動が
できないために
行動様式が身に
付かなくなる。
被虐待体験だけ
でなく、
ACEsは、
過大なストレスが
長時間持続する
体験である。
人は、
ストレスに
対抗できない、
逃げられない
と感じると
心が圧倒され、
自律神経系は
機能不全と
なる。
これを
背側迷走神経
優位状態
という。
では、
背側迷走神経
優位状態
では、何が
起こるので
あろうか?
この状態に
なると
外界からの
情報を受け
取る感覚が
無感覚になり、
一時的に麻痺
した状態となる。
身体的には、
血流低下から
頭の回転が
悪くなり、
手足の末端が
冷たくなる。
そして、
消化器官は
過活動になり、
下痢となる。
精神的には、
周囲から隔離
され、
阻害された
ような感覚を
経験し、
何かの行動を
起こすことも
できず、
深い悲しみ、
絶望感
を抱く。
即ち、
複数のACEsを
長期間経験する
と、
この状態に
入りやすくなる
のである。
これは幼少期
だけでなく
大人にも起こる
現象である。
大人になったと
しても、
ストレスを感じる
と
この状態となり、
対人関係を上手く
築けなくなり、
会社や地域社会で
不適応となると
適応障害などの
二次障害を引き
起こしやすくなる。
症状Ⅱ
心理学の分野では
逆境体験により
トラウマの症状が
表出する、
とデータがある。
大半の子ども達に
耐えられる
ストレスが
トラウマ体験の
ある子どもたち
にとっては
非常に大きな
ストレスとなる。
そもそも、
トラウマの症状が
出ると
安心感が消失し、
今、何か起こる
のではないか?
或いは
何かされるのでは
ないか?
というように
トラウマ体験の
ある子どもたち
は、臨戦態勢に
入る。
具体的には、
目を見開き、
危険がないか
どうかを確認
し、周囲に何
かが起きると
その場を去る、
という状況を
意味する。
また、
トラウマ体験は
自分にはこれが
ある、
や
自分はこれが得意
である、
という
自己肯定感の形成
に影響する。
子どもの
トラウマ体験は、
家庭内だけでな
く、
メディカル
トラウマ
であったり、
あるいは
震災で大切な人
との死別を経験
したり、
という場合もある。
子どもたちの
トラウマ
関連症状には、
・分離不安が強く
なる、
・癇癪がひどい、
・イライラが強い、
・攻撃が増える
という症状がある。
また、
喋らない、
歩かない
という、所謂
赤ちゃん返り
の症状もある。
加えて、
頭痛、
腹痛
といった身体症状
が出ることもある。
その他、
フラッシュバック
や
逆に苦痛を示さず、
元気に見える場合
もある。
周囲の人間は
こうした様々な
トラウマ関連症状
を理解する必要が
ある。
予防
CDC(米国疾病
予防管理
センター)
が提案している
6つの項目と
具体的な
アプローチ
がある。
①家族への経済的
支援を強化する。
➁暴力や逆境から
身を守る社会
規範を促進する。
③子どもが人生の
好スタートを
切れるように
する。
④スキルを教える。
⑤気にかけてくれる
大人や
そのような大人と
一緒に
参加する活動に
若者をつなげる。
⑥短期的・長期的な
悪影響を緩和する
ための介入を行う。
*日本では、ACEの
知識があまり知ら
れていないため、
早期に対応する
必要がある。
特に、予防策には
重点を置くべきで
ある。
対処法
①マインドフル
ネス 瞑想
・毎日10分の
瞑想をする。
それにより、
灰白質と
何年も前に
除去された
ニューロンが
脳に復活する。
➁副交感神経を
高めるために
最適な呼吸
をする。
③ありのままの
自分を好きに
なる。
④瞑想のための
場所と時間を
確保する。
・具体的な方法
だが、
最も
リラックス
する場所で、
両手を楽に
して膝の上に
置く。
そして、
「目を閉じて
自分を解放
する。」
と意識する。
自分を解放
するとは、
体に注意を
向けて
脱力して、
指先に至る
まで、
全ての間隔を
認識する事
である。
⑤自分をつなぎ
止める
アンカーを
決める。
アンカーとは、
例えば、
鼻から入って
出て行く息、
胸が上下する
動き、
手や全身の感覚
など、
雑念が生じた
際に、
意識して行う
アイテムの事
である。
⑥マインドサイト
(心と脳を繋ぐ
ナビゲーター)
を身に着ける。
・自分の心を分析
して、向き合う
推察力。
ー洞察力
・相手の心を分析
して、本当の
姿を理解する。
ー傾聴力
・上の2つと
他の事柄を結び
付け、互いに
関連した全体像
を捉える。
ー総合力
洞察力+傾聴力
=総合力
を身に着ける。
*お一人でも、
ある程度は
実施できるが、
出来れば
精神科の
ドクター
や
カウンセラー
等、専門家と
対処法の実施
に取り組んだ
ほうが改善の
スピードに
差が出るので
意識する事を
勧める。
*日本では、
ACEの対処法の
認知度が低い
ため、
政府は対策に
力を注いで
貰いたい。