概要
2024年度の
全上場企業の
自社株買い
実施額が
過去最高を
更新した
背景や
その要因、
そして
企業の現状
について
解説する。
自社株買いの増加
企業は、
自社の株式を
市場で購入する
ことで、
市場に流通する
株式数を減らし、
1株当たりの
利益を増加
させる。
これは
株価上昇の
要因の
1つとなり、
配当とともに
株主への
利益還元策
として
定着している。
では、何故
定着したので
あろうか?
背景にある
2つの要因を
以下に示す。
➀資本コスト経営
企業は、
調達した資本を
適切に配分し、
中長期的な
企業価値向上を
目指すよう
求められている。
➁物言う株主
(=アクティビスト)
の存在
物言う株主は、
企業に対し、
株主還元や
経営改善を
要求する。
具体的な例を
示す。
例えば、
ある企業が
100万株発行
しており、
1株当たりの
利益が
10円の場合、
市場に流通する
株式数は
100万株である。
しかし、
企業が50万株の
自社株買いを
行った場合、
市場に流通する
株式数は
50万株に減り、
1株当たりの
利益は
20円に増加する。
ここで、
事例として
ホンダをあげる。
ホンダは、
経営統合交渉と
並行して、
最大1兆1千億円
に上る
自社株買いの
実施を発表した。
これは、
株主への
利益還元策
であると同時に、
株価を
引き上げる事が
最大の
「買収防衛策」
である
という意図も
示唆される。
サプライチェーンとは何か?
サプライチェーン
とは
原材料の調達から
生産、流通、販売
を経て、最終的に
エンドユーザーに
製品やサービスが
届けられるまでの
一連の流れを指す。
この流れは、
複数の企業に
よって
構成されており、
それぞれの企業が
エンドユーザーに
近い方に向かって
製品やサービスを
供給することで
鎖のように
繋がっている。
具体例を
以下に示す。
家具を
例に挙げると
サプライチェーンは
次のようになる。
➀原材料の調達
木材、金属、塗料
などの原材料を
それぞれの
専門業者から
調達する。
➁木材の
カット・組立
調達した木材を
家具の設計図に
合わせて
カットして
組み立てる。
この工程は、
家具メーカーや
木工所などが
担当する。
③ 配送
完成した家具を、
倉庫や店舗へ
配送する。
配送業者が
この役割を
担う。
④販売
店舗や
オンライン
ストアで、
エンドユーザーに
家具を販売する。
小売業者が
この工程を
担当する。
このように
家具が
エンドユーザーに
届くまでには、
複数の企業が
関わっており、
それぞれの企業が
サプライチェーンの
一部を担っている。
言うまでもないが
サプライチェーンは
製品やサービスを
スムーズに
エンドユーザーに
届けるために
非常に
重要な役割を
果たしている。
もし
サプライチェーンの
どこかで問題が
発生すると
製品の供給が
滞ったり、
品質が低下したり
する可能性がある。
そのため、
企業は
サプライチェーン
全体を最適化し、
効率的
かつ
安定的な
供給体制を
構築することが
求められる。
また、
サプライチェーンは
最終製品だけでなく
部品単位でも
存在する。
例えば、
家具に使われる
ネジや塗料なども、
それぞれ別の
サプライチェーンを
経由して
家具メーカーに
届けられる。
つまり、
サプライチェーンは
多層構造になって
おり、
製品に関わる
製造業は、
必ずどこかの
サプライチェーンに
属していることに
なる。
周知の事実だが、
自動車産業は、
サプライチェーンが
複雑に絡み合って
いる代表的な例で
ある。
自動車1台を
作るためには、
数万個の部品が
必要であり、
それぞれの部品が
異なる
サプライチェーンを
経由して
自動車メーカーに
届けられる。
例えば、
エンジンは
エンジンの
専門メーカーが
製造し、
タイヤは
タイヤメーカーが
製造する。
これらの部品は、
さらに多くの
サプライヤーから
原材料や部品を
調達しており、
サプライチェーンは
非常に複雑な
ものになっている。
企業の実状と方向性
企業は、
自社の利益
だけでなく、
サプライチェーン
全体の維持・強化
にも配慮する
必要がある。
サプライチェーン
が、弱体化すれば
自社の事業継続も
危うくなる
可能性が
大いにある。
具体的な例を
示す。
例えば、
ある自動車
メーカーが、
部品を供給する
中小企業に対して、
コスト上昇分の
価格転嫁を
認めない場合、
中小企業は
経営難に陥り、
部品供給が滞る。
その結果、
自動車メーカーの
生産もストップ
する。
また、
中小企業は、
原材料費や
労務費
などの
コスト上昇分を
取引価格に
適切に転嫁する
ことが
求められている。
しかし、
実際には
転嫁が進んで
いない状況も
報告されて
いる。
とはいえ、
企業は、
従業員の
賃上げを
行うことで
人材不足を防ぎ
企業の成長に
つなげることが
重要である。
ここで、
1990年度を
100として
各年度を指数化
したものを
金融・保険業を
除く全産業の
経常利益、
平均従業員給与
(=賞与含む)、
内部留保、
配当金の推移
に関して
テキストで示す。
➀経常利益
企業の経常利益は、
1990年代から
2000年代前半に
かけて増加傾向に
ある。
➁平均従業員給与
平均従業員給与は、
1990年代から
2000年代にかけて
ほぼ横ばいで
推移している。
③内部留保
内部留保は、
企業の内部に
留保された
資金であり、
2000年代以降、
増加傾向にある。
④配当金
配当金は、
2000年代以降、
増加傾向にある。
つまり、
企業は、
利益を
内部留保する
一方で、
配当金も
増やしており、
株主還元に
積極的な姿勢を
示している。
ところが
従業員給与は
伸び悩んでおり、
企業が
内部留保や
株主還元に
偏っている
可能性がある。
総合
企業が
株主還元に
積極的に
なる事自体は
否定しない。
しかしながら、
一方で
従業員や
サプライチェーン
への配慮も
重要である事を
認識する必要が
ある。
更に
企業には、
バランスの取れた
経営を行うことで、
持続的な成長を
目指すことが
求められる。