長いこと読んでいた本。
それがこの本です。
獅子文六は名高い劇団、文学座の立ち上げた人物の一人です。
またNHKの朝ドラ第一弾の脚本を書いた人物としても知られています。
ただ、私はそのことを全然知らなかったんですけどね。
単純に、御殿場は箱根にも近くて、とっても親しみがあったので、
懐かしさという点から手に取りました。
ただ、箱根が今噴火警戒レベル2となったと聞き、
また客離れが起きるのかなという心配が起きました。
と同時に箱根に行けたらいいなと思っていたので、
大丈夫なのかなという気持ちになりました。
その話は置いておき。
■あらすじ
昭和35年を舞台にした物語です。
箱根を巡って2つの交通会社が争いを続けていました。
一方が専用道路をつくれば、もう一方も対抗して作る。
芦ノ湖に船を浮かべれば、もう一方も対抗して浮かべるというふうに。
だいたい前半はこの争いが描かれています。
この争いが起きている箱根に氏田観光という別の会社も加わるのですが、
こちらは二つの会社の争いとはちょっと離れてみているという感じですね。
そんなわけで箱根はそれぞれの勢力に分かれていました。
一方で足刈にある古くから続く温泉旅館玉屋と若松屋も喧嘩している仲。
この二つはもともとは親類同士なのですが、なぜか犬猿の仲なのです。
でも、共に跡取りに困っている状況。
一応若松屋には子供が二人おりますが、長男は東京でやりたいことがあるので乗り気ではなく、
また女学生の明日子も家の仕事は興味がない様子です。
玉屋は女将の里に子どもはおらず、遠縁を頼り継いでもらおうと考えているところ。
ただ、番頭の小金井の希望としては、従業員の勝又乙男に継いでもらいたいという気持ちが大きいようです。
彼は玉屋の女中とドイツ兵とのハーフという変わった出生ですが、
とても優秀で、忠実なため大きな信頼を寄せられていたのでした。
そんな中起きる様々な問題。
古き旅館を狙う者たち。
そして犬猿の仲である玉屋と若松屋の乙男と明日子の秘めたる恋愛関係。
玉屋の運命は?若松屋はどうなる?
箱根山を舞台にした様々なトラブルのお話です。
■感想
帯に80ページまでは退屈と書いてあったのですが、
確かに最初は会社同士のいさかいという感じでちょっと退屈に感じてしまいました。
しかも最初は箱根で起きていませんからね(笑)
ただ、この関係性は重要な部分だったと思います。
箱根を取り囲む環境を知らなければ、話についていくことはできないと思います。
だから前半は大体説明的な物語ですね。
そのため乙男と明日子も登場するのは大分後です。
この小説は恋愛模様も大切な部分なのでしょうが、それだけでなく箱根の歴史や文化なども大切なのかなという印象を持ちました。
昭和30年代の箱根の様子が伝わってきて、なんだか今とはちょっと違う感じもしましたね。
場所などはそのままの地名を使っているので、
ある程度箱根のことを知っている方が読みやすいかもしれません。
全く知らなくても大丈夫でしょうが…。
ただ、登場人物は割と多いので、「?」となることもあるかもしれません。
一応関係図はイラスト付きで描かれているので、把握はしやすいと思います。
物語はずっと続いているような終わり方なので
ちょっと納得いかない人もいるかもしれませんが、
もしかしたら今も乙男たちがいるような感覚になります。
読んでいると、実際に箱根に訪れたくなりました。
ちょっと厚めの文庫本なのですが、なかなか読みごたえがあってよかったです。
箱根に行くなら、一度手に取ってみてはいかがでしょうか。
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