がめらのフィールドノート

人と自然との出会いの中から湧き上がった想いや音楽、エピソードなどを、紹介します。

猛吹雪の脅威

2007年01月09日 | アウトドア
 7日(日)を中心に、オホーツク海で発達した爆弾低気圧が、日本各地で猛吹雪を吹きあらしました。北海道での強風被害や、新潟・長野の冬山やスキー場での遭難事故のニュースが飛び交いました。かくいう私も、実はスキー場にいました。

 低気圧が猛烈に発達するのは、前日から報じられていました。このようなタイミングで遭難のニュース等が報じられると、世間一般の風潮として、「無謀だ」「無計画だ」「自業自得だ」などと非難されがちです。私も、確かにそのように言われても仕方のない方も、決してゼロではないと思います。しかしながら、どのような経緯で、またどのような状況で遭難したのかを知らずして、軽率に非難するべきではない、と考えます。

 吹雪の本当の恐ろしさは、日常生活の中で、テレビ等の映像でいくら見ていても、まったくわからないと言っても過言ではありません。

 猛吹雪に見舞われると、視界がほぼゼロになり、まったく方向がわからなくなります。たとえ何回も行っているスキー場でも、それは同じことです。風上に向くことができませんから、風下に向いて丸まっているうちに、自分がどちらに向いていたのかは、すぐにわからなくなります。

 今回、低気圧の影響で東北から日本海側にかけて猛烈に荒れると予報されていました。私は、天気図の気圧配置から考えても、「新潟・長野方面には向わない方がいい」と判断し、比較的関東平野に近い栃木県のハンターマウンテン塩沢スキー場に向いました。

 お昼頃に着いたときは、雪が降っていたものの雲の間に青空がのぞき、それが徐々に広がり、気持のよい青空と白いゲレンデが浮かびあがりました。風は強かったのですが、「よし、やはり栃木にして正解だったな」と思いこんでいました。


 


 しかし、そのわずか30分後には、視界ゼロの猛吹雪の真っ只中に立たされる状況となりました。(地元の方や、この地方の天候に詳しい方から見れば、「当然だよ」と言われるのでしょう。)


↓吹雪が始まってまもなくの状況。(この写真は、レストハウスの中から撮影したものです。吹雪の中でこのような撮影をするのは、絶対に避けましょう。)


 危険を感じ、初心者用の迂回コースでゆっくりと降りていきましたが、悪いことに風上に向って滑らなければならない状況。緩斜面では向かい風で体が押し戻されるのです。雪は自分の狭い視界を、前から後ろへと猛烈に飛んでいきます。

 ・・・この状況で、何がおきるか。向かい風で自分は止まってしまっているのに、前に進んでいるような錯覚に陥るのです。経験したことのない方は、「そんなバカな」「いくら何でも大げさだ」と思うかもしれませんが、経験した方はわかるはずです。

 気象には多少は詳しいと思っている自分でしたが、天候の急変にはやはり驚かされました。何とか慎重に山腹のレストハウスに避難。からだをあたためたのち、早々に駐車場の車に逃げ込みました。(スキーウェアはアウトドア用のマウンテンジャケットほどの防風・防水性はないですし、スキーグローブも同様です。怖いのは低体温症で体が思うように動かなくなることです。)

↓駐車場に停めてあった私の車。両隣にもそれほど離れずに車が止めてありました。にもかかわらず、車の側面に着雪していて、屋根にはそれほど積もっていません。



 自然とつきあっていくためには、様々な自然現象と対峙しなければなりません。吹雪や台風や雷は人間の都合でおさまってくれるわけではないのです。どんなに知識があっても、情報を収集しても、予測不可能な事態が訪れるときがあります。大切なのは、そのとき、様々な選択肢の中から自分がどう判断し、どのような行動をとるか、なのだと思います。そしてまた、そのようなリスクは多かれ少なかれ、常に存在している、と自覚しているかどうかです。そして、それは大自然の中でなくても、スキー場やゴルフ場や海水浴場、遊歩道などでも何ら変わらないのだと思います。

 エラそうに書いている私も、これまで何回か遭難の一歩手前の状況を体験しました。装備や判断が甘かったことを後悔したこともありました。


 「自然の前には常に謙虚で在りたい」 自戒の念をこめて・・・


最後に。
 遭難したものの幸いにも、救出あるいは自力下山できた方と、そのご家族に心からお見舞い申し上げますとともに、いまだ行方不明の方の、一刻も早い救出をお祈りいたします。そしてまた、救助にあたっている警察や山岳救助隊、ボランティアの方々に心から敬意を表します。




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6 コメント

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そうですね (がめら)
2007-01-10 15:16:17
山に入る人たちは、多かれ少なかれ、知人を失ったり、自分自身の命の危険を感じたりしたことがありますよね。

「遭難してもいい」とはこれっぽっちも思っていませんが、「なぜ自分が生き残っているのだろう?」と考えると、ほんとに偶然の積み重ねとしか言いようのないときがあります。

だからこそ、知っていれば防げる事故は、みんなの力で防いでいきたいものです。
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遭難 (おがち)
2007-01-09 23:47:41
そうなんですよね…
…ってオヤジギャグはさておき…

昨年3月に知り合いが「爆弾低気圧」の最中、
八ヶ岳で命を落としました。
この時も「何でこんな予報の中…」など色々言われていました。
表面だけを見て、後から文句だけ言う。
しかし…後から言うのって簡単なんですよね。

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写真からでもすごい勢い!! (桜井かすみ)
2007-01-09 23:07:03
いや、何だか写真だけでもものすんごい迫力・・・・
がめらさん、よく帰って来れましたねえ・・・
猛吹雪とか、強力低気圧とは言えども、その被害はどうしても時差遅れで報道される事が多いですよね。
マス・メディアって大げさな事が多いくせに、重要なところスカポンタンだったりするから困ります!!
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そうですね (がめら)
2007-01-09 22:30:36
何が怖いって、そのときはあんまり怖いと感じていないくて、後になって、「ヤバかったんだな」って気づくことが多いってことなんですよね。

本当はきちんと予測しなければいけないんだけれど、そうじやなくても、危険を察知したり予感する能力って、結構大事だと思うわけです。

マスコミの方たちは、報道するときのポイントをもっと理性的に精査してほしいと感じています。救出された方にインタビューしたり、捜索風景を取材したくなるのはわかりますが、冬山の実態とか、スキー場の盲点とか、視聴者にもっと注意を喚起する視点で報道してほしいですね。

以前、山岳救助隊のメンバーになっている宿のご主人の話を聞いたことがありますが、遭難者の実態とか、実際に起きたことと報道のズレとか、本当に知らなきゃいけないことがたくさんありました。

私が今回ブログにあえて今回の吹雪を取り上げたのも、テーマとしてはちょっと重いけれども、大切な注意喚起だと思ったからです。

コメントいただけて、ありがたいです。
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Unknown (合宿ネーム『マユ』)
2007-01-09 14:34:13
うちの近くでは、7日がものすごいかぜでした。
本当に怖いですね!
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怖いですね!! (Naoki)
2007-01-09 13:30:02
この時期、遭難事故のニュースは多いですよね。私はなった事もなりそうになった経験もありませんが、いつも思う事は、救助活動をされている方々に、「一言で人命救助と言っても、自分の命をかけているんだよな!」と、尊敬の念を感じます。誰も、ワザと遭難する人は居ません。もう一つ!!最近のマスコミは??自力で下山した夫婦にマイクを向けて「大丈夫ですか?」て何???おばかな質問ですよね。
それは、マスコミの使命ではない!と考えます。まあ、色々と意見は有ると思いますが
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