忘憂之物

男はいかに丸くとも、角を持たねばならぬ
             渋沢栄一

<大間マグロ最高値奪還、報われた地元の熱意>2012.1.7

2012年01月07日 | 過去記事
大間マグロ最高値奪還、報われた地元の熱意(読売新聞) - goo ニュース





映画「魚影の群れ」。主演は緒形拳。共演者は夏目雅子に佐藤浩一、十朱幸代に矢崎滋などの豪華なメンバーが揃う。「男は海に漂い、女は愛に漂う」という秀逸なコピーもあった。公開は1983年、まだまだ日本映画が面白かった時代だ。小学6年生か中学生だった私もよく、新聞配達(朝刊)した給料から映画代を捻出、近鉄電車に乗って布施やら難波に出掛けたモノだ。

緒形拳のド迫力マグロ漁もさることながら、健康な男性諸君ならば、先ず、なにより夏目雅子の色気に参る。夏目雅子から「抱いてけせ。海のように抱いてけせ」と言われれば、佐藤浩一でなくとも「オレはマグロ漁師になる」とか言って、喫茶店で緒形拳に殴られることだろう。道端、水溜りの中に裸足で寝そべる十朱幸代の「女臭さ」に唸るのである。うむ。たまらない。また観たくなってきたのである。マグロ喰いたいのである。

内容は下北半島のマグロ漁師だ。ここで獲れたマグロが最近話題の「大間町(おおままち)のマグロ」になる。緒形拳のような頑固一徹、命懸けの一本釣りで揚げたマグロは2001年にも2000万円の値がついた。今年、築地市場の新年恒例「初競り」では269キロの大間産クロマグロに、史上最高額となる5649万円の値がついて市場は盛り上がった。結構なことだ。

競り落としたのは築地にも店がある「すしざんまい」を経営する喜代村。木村清社長もテレビで<一番のマグロを手に入れ、海外ではなく日本の皆さんに食べてもらいたかった>と粋なことを言った。その言葉通り、1キロ21万円となるクロマグロを通常価格(128円~398円)で販売するというから、これまた活気がある話だ。野田政権は木村社長に頭を下げて内閣参与に迎え入れるがいい。日本経済の活気を取り戻す知恵を借りるがいい。

比して、同じ日にしょうもないのもあった。「食べログ」のヤラセだ。飲食店が業者に何万円か支払い、何ヶ月か「口コミ」の評価を上げてくれる、というものだ。利用者は3200万人もいたとかで、メシを喰いに行くのに「食べログ」を参考に店を選んでいた人も少なくないらしい。そもそも「口コミ」というのは大宅壮一の造語で「口頭によるコミュニケーション」のことであるから、ネットに書いてある、という時点で怪しいと思うのが普通なのだが、良くも悪くも日本人は「先ず他者を信頼する」というDNAがある。嘘をつくことに罪悪感があるから、きっと他人もそうなのだと信じ切っている節がある。

テレビも新聞も「クロマグロが5649万円」とやった。家が建つとかマンションが買える値段だと騒いでいた。「すしざんまい」の名も連呼し、木村社長は何度もテレビ画面に出た。5~6千万では済まぬ凄まじい広告宣伝だ。こういうのを「エビでタイ」という。言うまでもなく「食べログ」のほうは「安物買いのナントカ」だ。「やらせ」を依頼した店は業者に払った金も、失った信用も取り戻すには難しい。真面目に信じていた客や他店舗、それにサイトの運営社にも多大な迷惑をかけた。阿呆である。



大宅壮一は他にも素晴らしい言葉を残している。例えば「1億総白痴化」もそうだ。テレビばかり見ていると阿呆になる、というのは立証されていると言って大過ない。「食べログ」なども気をつけたい。普通、旅先で酒を飲みに行ったり、メシを喰いに行くならホテルや旅館の人に聞く。国内だけではなく、私は初めての台湾で朝まで飲み歩いた際もそうした。また、虹の会理事長が「京都で寿司屋を探すなら聞いてくれ」と言うように、あるいは大阪で飲むなら私に聞いた方がいいのと同じで、本来の「口コミ」というのは「誰に問うのか」も吟味せねばならない。それに「飛び込み」というのも酒を飲んだりメシを喰ったりする楽しみ方のひとつでもある。それらを放棄して、一方的に垂れ流される情報を基に「動かされる」ことを選択する人が3200万人もいた、ということに改めて驚く。

大宅壮一のように「白痴化」とまでは言わないが、やはり、そこにはある程度の惰性が垣間見える。自分で調べて、自分で決める。これも楽しいものなのだが、そういえば2009年の衆院選、民主党比例代表の得票数は29,844,799票だった。投票用紙に「民主党」と書いた人は約3000万人ということだ。なるほど。




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