彼女は成長するにつれて美しくなり、見事なグラマーになった。両親はやがて死亡した。十九歳の娘盛りを迎えたタケは、いいなずけの福崎分家、東新宅の宗一郎(22)と結婚するのを、楽しみにしていた。ところが同じ分家の西新宅の大三郎が反対、自分の長男、喜十朗(25)を、タケの養子にしたいと思い、東新宅が塩田業に失敗したのを幸い、この縁談をつぶした。しかし大三郎が乱暴者のため、親類一同が反対して、喜十郎入り婿の件もお流れになった。美女と財産を狙う大三郎親子の作戦は失敗した。この後タケは義人(30)を羽床下村から迎え養子とし、長男久勝、次男準一、長女モリエ、三男豊三郎の4人の子を産んだ。義人は名の通り温厚な男だったが48歳で死んだ。ついで川津村から伊勢吉(35)を二度目の養子に迎えた。処がこの男が、やくざじみた怠け者で、遊興にふけって困った。西新宅の大三郎はなおも、嫌がらせをつづける。タケは怒って出入りを差し止めた。二度目の婿の伊勢吉との間に、昇、梅子の二人が生まれた。この男も若死にした。タケは又未亡人になったが、ますます色気が出て、美しかった。三人の婿を食ったと言うので、人呼んで「福崎の三代ギツネ」と呼ばれた(祖母の話)。キツネの化身か、夫は皆若死にし、彼女はいよいよなまめかしいのである。(いいなずけだった宗一郎も病死していた)。

今日の一枚