何気なしに、書棚から高見順の詩集『死の淵より』を取り出して読む。高見順が入院中に書いた63編の詩集である。
本の裏表紙に万年筆で『1973.9.1』と私のサインが記されている。昭和48年に浜松の書店で買ったもので、前のカミサンを27歳で亡くした翌年である。本のタイトルの死の文字に惹かれて読み漁った記憶がある。
人生の詩というのは、死を身近に感じた時にこそ生まれるものではないかと思う。今のように幸せでのほほんとしていては、真に迫った詩など書けるわけがない。
『死の淵より』
円空が仏像を刻んだように
詩をつくりたい
ヒラリアにかかったナナ(犬)が
くんくんと泣きつづけるように
わたしも詩で訴えたい
カタバミがいつの間にかいちめんに
黄色い花をつけているように
わたしもいっぱい詩を咲かせたい
飛ぶ鳥が空から小さな糞を落とすように
無造作に詩を書きたい
時にはあの出帆の銅鑼のように
詩をわめき散らしたい
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