歩行介助 プロに学ぶ安全・快適な介護術
寝返り・起き上がり プロに学ぶ安全・快適な介護術
http://www.geocities.jp/nonvee/nursing/orem.html
ドロセア・E・オレムの看護論
オレムの看護一般理論は、セルフケア理論、セルフケア不足理論、看護システム理論の三本の柱から成り立っている。
1)セルフケア理論について
オレムの定義づけによると、セルフケアとは、「個人が生命、健康、安寧を維持する上で自分自身で開始し、遂行する諸活動の実践である」。そしてセルフケアは「自分のために」と「自分で行う」という二重の意味をもち、人は自らのセルフケアについて責任と権利があると考えているのである。
オレムは三つのタイプのセルフケアを区別している。
① 普遍的セルフケア
人生のあらゆる段階すべての人間に共通するもので、年齢、発達段階、環境およびその他の要因によって変化する。生命過程および人間の構造や機能の統合性の維持ならびに一般的安寧に関連している。
・十分な空気、水、食物摂取の維持
・排泄過程と排泄物に関連したケアの提供
・活動と休息のバランスの維持
・孤独と社会的相互作用のバランスの維持
・生命、機能、安寧に対する危険の予防
・正常であることの促進
② 発達的セルフケア
人間の発達過程および人生のさまざまな段階で生ずる状態や出来事(たとえば妊娠、未熟児)、さらには発達を阻害するような出来事(無教育、健全な個性化の失敗)に関連している。
③ 健康逸脱に関するセルフケア
遺伝的かつ体質的な欠陥や構造的、機能的逸脱、ならびにそれらの影響や医学的診断、治療にかかわるものである。
・適切な医学的援助を求め、手に入れること。
・病的な状態が引き起こす影響や結果を自覚し、留意すること。
・診断および治療法を効果的に遂行すること。
・医療的ケアが引き起こす不快感や有害な影響を自覚、留意すること、あるいはそれらを規制すること。
・自己像を修正すること。
・ 病的状態、医療的ケアの影響をもって生活することを学ぶこと。
・
これらのセルフケアの考え方の根底には、人間および健康をどのように捉えるかが重要事項になる。
2)セルフケア行動とは
オレムによるとセルフケア行動は、状況を見定めるための熟慮や判断から導き出され、何をなすべきかということを選択することより生じ、その能力は、知識、技能、信念、価値観、動機付けにより左右される。またセルフケア行動とは外部環境と内部環境の双方と相互作用を持つ開放システムである。
さらに実際にセルフケア行動を実践する能力をセルフケア・エージェンシーと規定しており、セルフケア・エージェンシーとはオレムによると、「人間の後天的資質であり、年齢、性、発達状態、関連する生活経験、健康状態、社会文化的志向、時間を含む入手しうる資源によって影響を受ける」と述べられている。
3)看護について
オレムは看護をヒューマンサービスとみなしている。すなわち看護は「生命および健康を確保するために、疾病や傷害から回復するために、またそれらの影響に対処するために、セルフケア行動が必要なのであるということとそれを持続的に提供し、管理するということ」に特別の関心を払っている。
別の表現をするならば、看護とは、ある人が自分自身のセルフケアのニードを充足できないときに、その人に直接的な援助を与えることである。
看護を必要とする要件は、個人の健康状態に好ましい変容が進行するとき、あるいは個々人が日常のセルフケアにおいて自分自身を統御することを学んだときには修正され、やがては消滅するのである。
看護婦は ・患者の全生活状態と密接に関連を保ちつつ、患者のニードに対して直接的に働く
・患者がセルフケアを実施することができない場合には、生理的、対人間的および社会文化的な
直接的ニードの充足を図る
・種々のニードを評価し、ニード充足のための資源を明らかにし、かつ使用するにあたり、
全体論的思考に基づいて機能する
これらのことが必要なのである。
オレムの特色は患者やクライアントが経験したセルフケアの逸脱の範囲から示唆されるさまざまな活動と状況を結合するところや、そのことを生かした看護システム企画を提唱した点にある。
4)看護システム
患者のニードが看護システムの企画とそれに続く看護婦と患者との役割バリエーションを決定するがオレムは次に挙げるような三つの看護システムを特定化した。
① 全代償的看護システム
患者は自身のケアを遂行するのに何ら積極的な役割を果たせない。看護婦はその患者に代わって、またその人のために行動する。
② 一部代償的看護システム
看護婦と患者の両方が、細かな手作業や歩行を必要とするケア方法を遂行する。ケア遂行の責任の分配は、患者の現在の身体的制限または医学的に指示された制限、必要とされる科学的もしくは技術的知識、および特定の活動を遂行したり 学習したりする患者の心の準備状態によって異なる。
③ 支持、教育的看護システム
患者は必要な治療的ケアの方法を遂行する能力がある、あるいは遂行することができ、かつ学習するに違いないが、援助なしにはそれを遂行することができない。このシステムにおける看護婦の役割はコンサルタントとしてのそれである。
5)看護実践の側面
オレムは望ましい看護婦、すなわち成熟した看護婦が遂行する看護実践の特性には
①社会的側面:看護状況の社会的、法的側面について理解し、看護の提供に責任を負っている
②対人的側面:人間の心理社会的側面について理解し、効果的なコミュニケーション手段をもって相対していける
③技術的側面:個々人にあった看護援助を実施していける
これらの三つの側面が存在することを明記した。これまで理想論的に言われてきた看護実践のあり様を、このように三側面として具体的かつ理論的に提示したところに、看護実践科学としての看護をより概念的に構築しようとのオレムの努力が窺われる。
6)患者のグループ分け
オレムは看護の観点にたって患者を組織化するのに二つの方法を提示している。ひとつのアプローチは先述した看護援助の三つのシステムにしたがってグループ分けをする方法、もうひとつのアプローチは、看護ケアに関連付けながら健康上の焦点から患者を分類する方法である。
その分類とは
グループ1
ライフサイクル 健康上の焦点がライフサイクルに向けられ、ケアは健康の保持、増進、特定の疾病や傷害からの保護のために計画される。ライフサイクルの焦点は他のグループの健康上の焦点に本来備わっているものである。
グループ2
回復段階 ヘルスケアの焦点は疾病、傷害または機能障害からの回復にある。
グループ3
原因不明の疾病 健康上の焦点は原因不明の疾病あるいは不調に向けられる。ヘルスケアは疾病の程度、不調の個別的結果および、そこで用いられた診断や治療方法の結果に関心がよせられる。
グループ4
先天的・後天的欠陥と未熟児 健康上の焦点は、構造的、機能的欠陥を負う患者、あるいは誕生時に未熟状態にあった患者のケアと治療に向けられる。
グループ5
治療またはコントロール 健康上の焦点は疾病の程度、不調ないしは障害の個別的結果、およびそこで用いられた治療方法の結果に関心を寄せつつ、疾病、傷害もしくは誕生時点で明らかとならない行動上の障害をふくむ機能障害の治癒またはコントロールのための積極的治療に向けられる。
グループ6
統合的機能の安定化 健康上の焦点は統合的機能の回復、安定化もしくはコントロールに向けられる。ヘルスケアは、疾病や傷害により損なわれた生命維持過程を安定化しコントロールすることに関心が寄せられる。
グループ7
終末期の疾患 ヘルスケアは疾病の末期にある人々の安楽と安全に向けられる。
これらの患者を看護状況に従って組織化し命名する分類システムは、従来の特定の医療分野といった医学概念によって組織化され命名されている現在の分類システムよりも、看護婦にとってはより有益である。
もどる
http://www.ict.ne.jp/~i_camu/sub18.htm
オレムの看護理論
はじめに
Ⅰ.オレムの経歴
Ⅱ.オレムの看護理論概要
1.特徴
2.オレムの看護論を導いた3つの問い
3.メタパラダイムの概念
4.オレムの基本的概念の6つの用語
5.看護理論
1)セルフケア理論
2)セルフケア不足理論
3)看護システム理論
6.オレムの看護過程
7.看護実践のルール
Ⅲ.事例への展開
1.22歳心因反応の患者の事例紹介
2.キーワード
3.看護問題リスト
4.看護記録
5.普遍的ヘルスケア8要件
6.発達上のセルフケア要件
7.健康逸脱に関するセルフケア要件
8.事例の結果
Ⅳ.考察
Ⅴ.展開からの看護理論への評価
Ⅵ.学んだこと
おわりに
謝辞
用語解説
引用参考文献
http://www.e-heartclinic.com/kokoro/yougo/yougo03.html
福祉用語の基礎知識
※ 原則として新しく追加したものが上になっています。
No.27 ライフイベント
No.25 イネイブラー No.26 QOL(quality of life)
No.23 キーパーソン No.24 コーピング
No.21 知る権利 No.22 認知
No.19 自己実現 No.20 社会資源
No.17 ICF No.18 生活保護の基本原則
No.15 評価についての話 No.16 自己決定
No.13 ラポール No.14 リジリアンス
No.11 地域組織化と福祉組織化 No.12 愛着(アタッチメント)
No.09 アウトリーチ No.10 ICF(国際生活機能分類)
No.07 社会福祉のおけるニードの話 No.08 ネットワーク
No.05 モラトリアム No.06 ソーシャルインクルージョン
No.03 リカバリー No.04 ユニバーサルデザイン
No.01 ノーマライゼーション No.02 エンパワメント
http://www.luther.ac.jp/public/doctor/dl/120111kodera02.pdf
目次 †
目次
オレム理論の基本アイデア
セルフケア要件
普遍的セルフケア要件
発達的セルフケア要件と健康逸脱に対するセルフケア要件
セルフケアの概念の有益性
オレムの看護システム
参考文献
↑
オレム理論の基本アイデア †
基本アイデアは「人間は、自分で自分の世話をすることができる。病気や怪我で自分の世話をすることができなくなったとき、代わりに世話をするのが看護である」というものである。「自分で自分の世話をする」ことをセルフケア(self care)という。
しかし、人間は多かれ少なかれ人の助けを借りて生きている。特に子供のときや晩のときはそうである。しかし、子供や老人は普通看護士の手を借りるのではなく、家族などの周りの人に世話をしてもらっている。そこで最初のアイデアは次のように変形される。
「人々は、自分たちで自分たちの世話をすることができる。病気や怪我で自分たちで世話ができなくなったとき、代わりに世話をするのが看護である」
↑
セルフケア要件 †
ヘンダーソンのニード論では、人間の欲を14の基本的欲求に分類した。そして、看護とは患者がこの14の基本的欲求を満たすように補助することである。普通の健康のときなら、人は自分の欲求を自分で満たすことができる。しかし、病気のときにはそれができない、あるいはやりづらい。そこで看護士がそれを助けるのだとヘンダーソンは考えたのである。
オレムはヘンダーソンの考えをセルフケアという概念でくくった。その際、オレムはセルフケア要件と呼んでいる。セルフケア要件にはいくつか種類がある。
普遍的セルフケア要件
発達的セルフケア要件
健康逸脱に対するセルフケア要件
↑
普遍的セルフケア要件 †
普遍的セルフケア要件とは、誰もが持っている欲求のことである。普遍的セルフケア用件の内容とヘンダーソンの基本的欲求の内容はほとんど同じである。比較したものを次に示す。ただしインデントされている側が普遍的セルフケア要件である。
正常な呼吸
十分な空気摂取の維持
飲食
十分な水分摂取の維持
十分な食物摂取の維持
排泄
排泄過程と排泄に関するケアを提供
移動と体位の保持
活動と休息のバランスを維持
睡眠と休息
脱衣と着衣
体温の保持
清潔な皮膚
危険回避
人間の生命・機能・安寧に対する危険を予防
コミュニケーション
孤独と社会的相互作用のバランスを維持
宗教
仕事
社会集団での人間の機能と発達の促進
遊び
学習
オレムの普遍的セルフケア要件には、ヘンダーソンの6~8に対応するものがないが、ほとんど同じ内容を言い換えたものであることがわかる。
↑
発達的セルフケア要件と健康逸脱に対するセルフケア要件 †
ヘンダーソンは患者の欲求は常に一定とは考えていなかった。「特定の個人が必要とする看護はその人の年齢、文化的背景、情緒のバランス、また患者の身体的・知力的な包容力の程度に左右させる」と述べている。そして「常時存在する条件で、基本的欲求に影響するもの」として、年齢、気質、社会的・文化的背景、生理的・意的程度を挙げている。さらに「病理的状態で、基本的欲求を変えるもの」として、水および電解質の平行の乱れ、急性酸素欠乏、ショック、意識障害、温熱環境、急性発熱、外傷、伝染性疾患、手術、絶対安静、疼痛を挙げている。
オレムはこうらをはっきりとした概念で定義した。それが「発達的セルフケア要件」と「健康逸脱に対するセルフケア要件」である。
ヘンダーソンが「常時存在する条件で、基本的欲求に影響するもの」として挙げたもののうち、特に年齢にオレムは注目した。そして、オレムは年齢つまり人間が発達していくにつれて変化するニーズを発達的セルフケア要件と呼んだ。
また、病理状態、つまり健康から逸脱した状態が、基本的欲求に影響するので、この健康からの逸脱がもたらす特殊なニードをオレムは健康逸脱に対するセルフケア要件と呼んだ。
↑
セルフケアの概念の有益性 †
オレム理論のセルフケアという概念に注目することで、看護はいつ患者を援助すべきかがよりはっきり見えてくる。
患者の持つニード(セルフケア要件)は、患者を治療するうえで、必ず満たさなければならないものとして現れる。これを治療的セルフケア・デマンドと呼ぶ。これは「普遍的セルフケア要件」と「発達的セルフケア要件」と「健康逸脱に対するセルフケア要件」の3つのニードを満たす必要を意味する。ただし、患者によって、「発達的セルフケア要件」と「健康逸脱に対するセルフケア要件」は異なることに注意しなければならない。
患者にはもちろん自分で自分のニードを満たす能力、即ちセルフケア能力も残っているはずである。しかし、満たさなければならないニードに対してこの能力が不十分であるとき、つまり患者が自分ではニードを満たしきれないとき(あるいはそう予想されるとき)に、看護が介入し援助すべきなのである。よって、セルフケアができなくなったときに看護が手を出すと捉えることができる。
看護介入には次のような問題があるが、上記のことよりそれぞれの問題に答えることができる。
いつ看護(介入)を始めるべきか?
患者が自分で自分の世話をできなくなったとき(あるいは家族などの周りの人が世話をみきれなくなったとき)、看護(介入)を始める。
いつ看護(介入)を辞めるべきか?
患者が自分で自分の世話ができるようになったとき(あるいは家族などの周りの人が面倒を見ることができるようになったとき)、看護(介入)を終える。
看護(介入)は何を心がけなければならないか?
患者が自分で自分の面倒を見ることができるようになり(あるいは家族などの周りの人が面倒を見ることができるようになり)、看護に依存しなくてもいいようになることを目指し心がけて看護する。
以上のように、セルフケアという概念により、オレムは看護がいつ患者に手を出すのかについてはっきりさせることができた。また、セルフケアによって看護の方向性も見えてくる。
↑
オレムの看護システム †
患者が自力でどのくらいセルフケアできる(自分のニードを満たせる)かによって、看護者の介入も変わってくる。
患者がほとんどセルフケアできない場合
部分的にセルフケアができる場合
ほとんどセルフケアができる場合
また、看護者が患者のセルフケアを代わって行う度合いによって、次のように看護システムを分類できる。
全代償システム
全面的に患者にセルフケアを代わってしてやる
部分代償システム
部分的にしてやる
支持教育システム
専ら患者のセルフケアをよいものとするように指導教育する
↑
参考文献 †
『はじめての看護理論』
http://tankenkanoheya.blog74.fc2.com/blog-entry-444.html
ドロセア・E・オレム(Dorothea E . Orem):看護ケア
ドロセア・E・オレム(Dorothea E . Orem):看護ケア
ドロセア・E・オレムによると,人間はセルフケア能力を有する生物的・心理的・社会的存在であり,普遍的セルフケア要件,発達的セルフケア要件,健康逸脱に対するセルフケア要件を充足する力をもつとしています。
環境については,外的・内的刺激をさし,セルフケアに対する要件は人間と環境の中にその源が存在するともしています。
健康については,身体的,精神的,社会的安寧を含みつつ,人間が構造的にも機能的にも健全かつ統合された状態をいうとしています。
看護については,クライエントがセルフケアを獲得できるようにケアを提供し,支援することであるとしています。さらに,他者を援助するための人間の創造的努力であり,全代償的・一部代償的・支持教育的な3つの看護システムからなりたっているとしています。
「看護:実践の概念」(1972)
Nursing : Concepts of Practice
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ドロセア・E・オレムの看護論
オレムの看護一般理論は、セルフケア理論、セルフケア不足理論、看護システム理論の三本の柱から成り立っている。
1)セルフケア理論について
オレムの定義づけによると、セルフケアとは、「個人が生命、健康、安寧を維持する上で自分自身で開始し、遂行する諸活動の実践である」。そしてセルフケアは「自分のために」と「自分で行う」という二重の意味をもち、人は自らのセルフケアについて責任と権利があると考えているのである。
オレムは三つのタイプのセルフケアを区別している。
① 普遍的セルフケア
人生のあらゆる段階すべての人間に共通するもので、年齢、発達段階、環境およびその他の要因によって変化する。生命過程および人間の構造や機能の統合性の維持ならびに一般的安寧に関連している。
・十分な空気、水、食物摂取の維持
・排泄過程と排泄物に関連したケアの提供
・活動と休息のバランスの維持
・孤独と社会的相互作用のバランスの維持
・生命、機能、安寧に対する危険の予防
・正常であることの促進
② 発達的セルフケア
人間の発達過程および人生のさまざまな段階で生ずる状態や出来事(たとえば妊娠、未熟児)、さらには発達を阻害するような出来事(無教育、健全な個性化の失敗)に関連している。
③ 健康逸脱に関するセルフケア
遺伝的かつ体質的な欠陥や構造的、機能的逸脱、ならびにそれらの影響や医学的診断、治療にかかわるものである。
・適切な医学的援助を求め、手に入れること。
・病的な状態が引き起こす影響や結果を自覚し、留意すること。
・診断および治療法を効果的に遂行すること。
・医療的ケアが引き起こす不快感や有害な影響を自覚、留意すること、あるいはそれらを規制すること。
・自己像を修正すること。
・ 病的状態、医療的ケアの影響をもって生活することを学ぶこと。
・
これらのセルフケアの考え方の根底には、人間および健康をどのように捉えるかが重要事項になる。
2)セルフケア行動とは
オレムによるとセルフケア行動は、状況を見定めるための熟慮や判断から導き出され、何をなすべきかということを選択することより生じ、その能力は、知識、技能、信念、価値観、動機付けにより左右される。またセルフケア行動とは外部環境と内部環境の双方と相互作用を持つ開放システムである。
さらに実際にセルフケア行動を実践する能力をセルフケア・エージェンシーと規定しており、セルフケア・エージェンシーとはオレムによると、「人間の後天的資質であり、年齢、性、発達状態、関連する生活経験、健康状態、社会文化的志向、時間を含む入手しうる資源によって影響を受ける」と述べられている。
3)看護について
オレムは看護をヒューマンサービスとみなしている。すなわち看護は「生命および健康を確保するために、疾病や傷害から回復するために、またそれらの影響に対処するために、セルフケア行動が必要なのであるということとそれを持続的に提供し、管理するということ」に特別の関心を払っている。
別の表現をするならば、看護とは、ある人が自分自身のセルフケアのニードを充足できないときに、その人に直接的な援助を与えることである。
看護を必要とする要件は、個人の健康状態に好ましい変容が進行するとき、あるいは個々人が日常のセルフケアにおいて自分自身を統御することを学んだときには修正され、やがては消滅するのである。
看護婦は ・患者の全生活状態と密接に関連を保ちつつ、患者のニードに対して直接的に働く
・患者がセルフケアを実施することができない場合には、生理的、対人間的および社会文化的な
直接的ニードの充足を図る
・種々のニードを評価し、ニード充足のための資源を明らかにし、かつ使用するにあたり、
全体論的思考に基づいて機能する
これらのことが必要なのである。
オレムの特色は患者やクライアントが経験したセルフケアの逸脱の範囲から示唆されるさまざまな活動と状況を結合するところや、そのことを生かした看護システム企画を提唱した点にある。
4)看護システム
患者のニードが看護システムの企画とそれに続く看護婦と患者との役割バリエーションを決定するがオレムは次に挙げるような三つの看護システムを特定化した。
① 全代償的看護システム
患者は自身のケアを遂行するのに何ら積極的な役割を果たせない。看護婦はその患者に代わって、またその人のために行動する。
② 一部代償的看護システム
看護婦と患者の両方が、細かな手作業や歩行を必要とするケア方法を遂行する。ケア遂行の責任の分配は、患者の現在の身体的制限または医学的に指示された制限、必要とされる科学的もしくは技術的知識、および特定の活動を遂行したり 学習したりする患者の心の準備状態によって異なる。
③ 支持、教育的看護システム
患者は必要な治療的ケアの方法を遂行する能力がある、あるいは遂行することができ、かつ学習するに違いないが、援助なしにはそれを遂行することができない。このシステムにおける看護婦の役割はコンサルタントとしてのそれである。
5)看護実践の側面
オレムは望ましい看護婦、すなわち成熟した看護婦が遂行する看護実践の特性には
①社会的側面:看護状況の社会的、法的側面について理解し、看護の提供に責任を負っている
②対人的側面:人間の心理社会的側面について理解し、効果的なコミュニケーション手段をもって相対していける
③技術的側面:個々人にあった看護援助を実施していける
これらの三つの側面が存在することを明記した。これまで理想論的に言われてきた看護実践のあり様を、このように三側面として具体的かつ理論的に提示したところに、看護実践科学としての看護をより概念的に構築しようとのオレムの努力が窺われる。
6)患者のグループ分け
オレムは看護の観点にたって患者を組織化するのに二つの方法を提示している。ひとつのアプローチは先述した看護援助の三つのシステムにしたがってグループ分けをする方法、もうひとつのアプローチは、看護ケアに関連付けながら健康上の焦点から患者を分類する方法である。
その分類とは
グループ1
ライフサイクル 健康上の焦点がライフサイクルに向けられ、ケアは健康の保持、増進、特定の疾病や傷害からの保護のために計画される。ライフサイクルの焦点は他のグループの健康上の焦点に本来備わっているものである。
グループ2
回復段階 ヘルスケアの焦点は疾病、傷害または機能障害からの回復にある。
グループ3
原因不明の疾病 健康上の焦点は原因不明の疾病あるいは不調に向けられる。ヘルスケアは疾病の程度、不調の個別的結果および、そこで用いられた診断や治療方法の結果に関心がよせられる。
グループ4
先天的・後天的欠陥と未熟児 健康上の焦点は、構造的、機能的欠陥を負う患者、あるいは誕生時に未熟状態にあった患者のケアと治療に向けられる。
グループ5
治療またはコントロール 健康上の焦点は疾病の程度、不調ないしは障害の個別的結果、およびそこで用いられた治療方法の結果に関心を寄せつつ、疾病、傷害もしくは誕生時点で明らかとならない行動上の障害をふくむ機能障害の治癒またはコントロールのための積極的治療に向けられる。
グループ6
統合的機能の安定化 健康上の焦点は統合的機能の回復、安定化もしくはコントロールに向けられる。ヘルスケアは、疾病や傷害により損なわれた生命維持過程を安定化しコントロールすることに関心が寄せられる。
グループ7
終末期の疾患 ヘルスケアは疾病の末期にある人々の安楽と安全に向けられる。
これらの患者を看護状況に従って組織化し命名する分類システムは、従来の特定の医療分野といった医学概念によって組織化され命名されている現在の分類システムよりも、看護婦にとってはより有益である。
もどる
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オレムの看護理論
はじめに
Ⅰ.オレムの経歴
Ⅱ.オレムの看護理論概要
1.特徴
2.オレムの看護論を導いた3つの問い
3.メタパラダイムの概念
4.オレムの基本的概念の6つの用語
5.看護理論
1)セルフケア理論
2)セルフケア不足理論
3)看護システム理論
6.オレムの看護過程
7.看護実践のルール
Ⅲ.事例への展開
1.22歳心因反応の患者の事例紹介
2.キーワード
3.看護問題リスト
4.看護記録
5.普遍的ヘルスケア8要件
6.発達上のセルフケア要件
7.健康逸脱に関するセルフケア要件
8.事例の結果
Ⅳ.考察
Ⅴ.展開からの看護理論への評価
Ⅵ.学んだこと
おわりに
謝辞
用語解説
引用参考文献
http://www.e-heartclinic.com/kokoro/yougo/yougo03.html
福祉用語の基礎知識
※ 原則として新しく追加したものが上になっています。
No.27 ライフイベント
No.25 イネイブラー No.26 QOL(quality of life)
No.23 キーパーソン No.24 コーピング
No.21 知る権利 No.22 認知
No.19 自己実現 No.20 社会資源
No.17 ICF No.18 生活保護の基本原則
No.15 評価についての話 No.16 自己決定
No.13 ラポール No.14 リジリアンス
No.11 地域組織化と福祉組織化 No.12 愛着(アタッチメント)
No.09 アウトリーチ No.10 ICF(国際生活機能分類)
No.07 社会福祉のおけるニードの話 No.08 ネットワーク
No.05 モラトリアム No.06 ソーシャルインクルージョン
No.03 リカバリー No.04 ユニバーサルデザイン
No.01 ノーマライゼーション No.02 エンパワメント
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目次 †
目次
オレム理論の基本アイデア
セルフケア要件
普遍的セルフケア要件
発達的セルフケア要件と健康逸脱に対するセルフケア要件
セルフケアの概念の有益性
オレムの看護システム
参考文献
↑
オレム理論の基本アイデア †
基本アイデアは「人間は、自分で自分の世話をすることができる。病気や怪我で自分の世話をすることができなくなったとき、代わりに世話をするのが看護である」というものである。「自分で自分の世話をする」ことをセルフケア(self care)という。
しかし、人間は多かれ少なかれ人の助けを借りて生きている。特に子供のときや晩のときはそうである。しかし、子供や老人は普通看護士の手を借りるのではなく、家族などの周りの人に世話をしてもらっている。そこで最初のアイデアは次のように変形される。
「人々は、自分たちで自分たちの世話をすることができる。病気や怪我で自分たちで世話ができなくなったとき、代わりに世話をするのが看護である」
↑
セルフケア要件 †
ヘンダーソンのニード論では、人間の欲を14の基本的欲求に分類した。そして、看護とは患者がこの14の基本的欲求を満たすように補助することである。普通の健康のときなら、人は自分の欲求を自分で満たすことができる。しかし、病気のときにはそれができない、あるいはやりづらい。そこで看護士がそれを助けるのだとヘンダーソンは考えたのである。
オレムはヘンダーソンの考えをセルフケアという概念でくくった。その際、オレムはセルフケア要件と呼んでいる。セルフケア要件にはいくつか種類がある。
普遍的セルフケア要件
発達的セルフケア要件
健康逸脱に対するセルフケア要件
↑
普遍的セルフケア要件 †
普遍的セルフケア要件とは、誰もが持っている欲求のことである。普遍的セルフケア用件の内容とヘンダーソンの基本的欲求の内容はほとんど同じである。比較したものを次に示す。ただしインデントされている側が普遍的セルフケア要件である。
正常な呼吸
十分な空気摂取の維持
飲食
十分な水分摂取の維持
十分な食物摂取の維持
排泄
排泄過程と排泄に関するケアを提供
移動と体位の保持
活動と休息のバランスを維持
睡眠と休息
脱衣と着衣
体温の保持
清潔な皮膚
危険回避
人間の生命・機能・安寧に対する危険を予防
コミュニケーション
孤独と社会的相互作用のバランスを維持
宗教
仕事
社会集団での人間の機能と発達の促進
遊び
学習
オレムの普遍的セルフケア要件には、ヘンダーソンの6~8に対応するものがないが、ほとんど同じ内容を言い換えたものであることがわかる。
↑
発達的セルフケア要件と健康逸脱に対するセルフケア要件 †
ヘンダーソンは患者の欲求は常に一定とは考えていなかった。「特定の個人が必要とする看護はその人の年齢、文化的背景、情緒のバランス、また患者の身体的・知力的な包容力の程度に左右させる」と述べている。そして「常時存在する条件で、基本的欲求に影響するもの」として、年齢、気質、社会的・文化的背景、生理的・意的程度を挙げている。さらに「病理的状態で、基本的欲求を変えるもの」として、水および電解質の平行の乱れ、急性酸素欠乏、ショック、意識障害、温熱環境、急性発熱、外傷、伝染性疾患、手術、絶対安静、疼痛を挙げている。
オレムはこうらをはっきりとした概念で定義した。それが「発達的セルフケア要件」と「健康逸脱に対するセルフケア要件」である。
ヘンダーソンが「常時存在する条件で、基本的欲求に影響するもの」として挙げたもののうち、特に年齢にオレムは注目した。そして、オレムは年齢つまり人間が発達していくにつれて変化するニーズを発達的セルフケア要件と呼んだ。
また、病理状態、つまり健康から逸脱した状態が、基本的欲求に影響するので、この健康からの逸脱がもたらす特殊なニードをオレムは健康逸脱に対するセルフケア要件と呼んだ。
↑
セルフケアの概念の有益性 †
オレム理論のセルフケアという概念に注目することで、看護はいつ患者を援助すべきかがよりはっきり見えてくる。
患者の持つニード(セルフケア要件)は、患者を治療するうえで、必ず満たさなければならないものとして現れる。これを治療的セルフケア・デマンドと呼ぶ。これは「普遍的セルフケア要件」と「発達的セルフケア要件」と「健康逸脱に対するセルフケア要件」の3つのニードを満たす必要を意味する。ただし、患者によって、「発達的セルフケア要件」と「健康逸脱に対するセルフケア要件」は異なることに注意しなければならない。
患者にはもちろん自分で自分のニードを満たす能力、即ちセルフケア能力も残っているはずである。しかし、満たさなければならないニードに対してこの能力が不十分であるとき、つまり患者が自分ではニードを満たしきれないとき(あるいはそう予想されるとき)に、看護が介入し援助すべきなのである。よって、セルフケアができなくなったときに看護が手を出すと捉えることができる。
看護介入には次のような問題があるが、上記のことよりそれぞれの問題に答えることができる。
いつ看護(介入)を始めるべきか?
患者が自分で自分の世話をできなくなったとき(あるいは家族などの周りの人が世話をみきれなくなったとき)、看護(介入)を始める。
いつ看護(介入)を辞めるべきか?
患者が自分で自分の世話ができるようになったとき(あるいは家族などの周りの人が面倒を見ることができるようになったとき)、看護(介入)を終える。
看護(介入)は何を心がけなければならないか?
患者が自分で自分の面倒を見ることができるようになり(あるいは家族などの周りの人が面倒を見ることができるようになり)、看護に依存しなくてもいいようになることを目指し心がけて看護する。
以上のように、セルフケアという概念により、オレムは看護がいつ患者に手を出すのかについてはっきりさせることができた。また、セルフケアによって看護の方向性も見えてくる。
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オレムの看護システム †
患者が自力でどのくらいセルフケアできる(自分のニードを満たせる)かによって、看護者の介入も変わってくる。
患者がほとんどセルフケアできない場合
部分的にセルフケアができる場合
ほとんどセルフケアができる場合
また、看護者が患者のセルフケアを代わって行う度合いによって、次のように看護システムを分類できる。
全代償システム
全面的に患者にセルフケアを代わってしてやる
部分代償システム
部分的にしてやる
支持教育システム
専ら患者のセルフケアをよいものとするように指導教育する
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参考文献 †
『はじめての看護理論』
http://tankenkanoheya.blog74.fc2.com/blog-entry-444.html
ドロセア・E・オレム(Dorothea E . Orem):看護ケア
ドロセア・E・オレム(Dorothea E . Orem):看護ケア
ドロセア・E・オレムによると,人間はセルフケア能力を有する生物的・心理的・社会的存在であり,普遍的セルフケア要件,発達的セルフケア要件,健康逸脱に対するセルフケア要件を充足する力をもつとしています。
環境については,外的・内的刺激をさし,セルフケアに対する要件は人間と環境の中にその源が存在するともしています。
健康については,身体的,精神的,社会的安寧を含みつつ,人間が構造的にも機能的にも健全かつ統合された状態をいうとしています。
看護については,クライエントがセルフケアを獲得できるようにケアを提供し,支援することであるとしています。さらに,他者を援助するための人間の創造的努力であり,全代償的・一部代償的・支持教育的な3つの看護システムからなりたっているとしています。
「看護:実践の概念」(1972)
Nursing : Concepts of Practice
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