すぐに Kindle で検索したら、
「文芸春秋」が丸ごと買えたので衝動買い。
単行本を買うより安くて、選評もついている。
Unlimited の対象ではなかったのは残念だ。
いちおう登録したのだが、あまり読みたい本が無いようなので、
やめようかと思っている。
本題にもどって「コンビニ人間」
自分とは何か?
ふつうの人間とは?
ふつうを演じているだけでは?
という古くからあるテーマに連なる作品だが、
「コンビニ」という形で切り出したところが上手いと思う。
人間観察が行き届いていて(ちょっと行き届きすぎ?)、
それを表す文章は上手で、構成もしっかりしている。
お手本どおりのような作品で、一気に楽しく読んだ。
これによって「コンビニ」に対する見方が、
少し変わったと思う。
選評の中で、川上弘美さんが
「いい小説は、今まで誰も気づかなかった何かに、
名前を与えてくれている」と書いている。
「今まで誰も気づかなかった何かに」、
というよりは「多くの人がうっすらと気づいていた何かに」、
ということだと思うが、こういう、
普段見ていないもの、見ないことになっているものを見せてくれる、
というのは小説や映画の大きな力の一つだと思う。
村上龍さんが「隠蔽されがちで、また当然のこととして
見過ごされがちで、あるいは異物として簡単に排除されがちな現実を描く、
そして、正確な言葉を発することができない人の、悲しみ、苦悩、嘆き、
愚痴、数奇な行動などをていねいに翻訳し、ディテールを重ね、
物語としてつむぐことで本質的なことを露わにする。
今に限らず、現実は、常に、見えにくい。・・・」
と書いているのも、言い方はややセンチメンタルに過ぎるように思うが、
同じことなのだと思う。
* * *
でもなぜ「コンビニ」なのだろう?
「マニュアル化された世界」という意味では、
マクドナルドやファミレスを始め、今やたくさんあるわけだが、
店員一人で全体を把握できる箱庭感、金魚鉢感が、
「コンビニ」なのかもしれない。
これとも関連して、他にも、
コンビニであれだけ役に立つ人間が、他の職業に就けないというのは
リアリティーに欠けるような気がする(フィクションなのであまり
そんなこと言ってもしかたないのだが)、とか、
主人公のちょっと変わった性格について、合理性が強いと言えばそれまでだが、
どうしても「なぜ」という部分を考えてしまう、とか
読後の疑問はいろいろあった。
小説なので答えを出す必要は無いのだが、
そのあたりを、もう少し「説明」するのではない形で踏み込めたら、
もう少し怪しい感じになったかもしれない。
読み物として優れているので、
「芥川賞」という印象とはちょっと違う感じもした。
とはいえ、このところ「芥川賞」というとちょっと難解な感じだったが、
昨年度は大きく変わったし、あまり関係ないのかもしれない。
今月号の文芸春秋は、天皇陛下のお言葉特集もあるし、お買い得だと思います。
(なんと、今目次を見たら、美内すずえさんの
「ガラスの仮面」と歩んだ四十年、という記事もある!)
Kindle ではいつまで売っているのだろうか?
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