日々の寝言~Daily Nonsense~

「クソったれ資本主義が倒れた後の世界」by ヤニス・バルファキス

「クソったれ資本主義が倒れた後の世界」

2015年のギリシャの財政危機の際に
財務大臣として EU と交渉した
経済学者バルファキスの書いた SF仕立ての小説。

リーマンショックの後、ある種の革命が起こり、
市中銀行、株式市場、そして
Tech Giants もピラミッド型組織もなくなった、
パラレルワールドが描かれている。

パラレルワールドものの SF 小説として見ると
いろいろと穴があるし、経済的な内容については、
前提とする知識が多く、一度読んだだけでは
半分くらいしか理解できなかったし、
内容の妥当性の判断も難しい。

こうした問題点はあるものの、
現在の資本主義とは別のシステムの可能性を
かなり頑張って示しているのは好感が持てるし、
実際、とても面白く読んだ。

自由市場至上主義と反市場主義の議論は、
我々の世代が若い頃から続いているが、
それらに対して、第三の形を具体的に提示しているのは
さすがだと思う。

結末も含めてなかなか魅力的なので、
知的な刺激の多いファンタジー
として読むのが良いと思うし、
たとえば、そうした社会変革における AI の役割
といったことを考える上でも示唆に富んでいると思う。

ちなみに、日本語のタイトルはちょっと下品だが、
原題は "Another Now" というシンプルでかっこいいもので、
素直に日本語にすれば「もうひとつのいま」とか、
「もうひとつの世界」だろうか。

資本主義の都市で疎外された人々を描いた
如月小春さんの戯曲 "ANOTHER" を
ちょっとだけ思い出した。
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