小平奈緒さんのラストレースを
エムウェーブで観戦した。
ちょうど全国旅行支援も始まるということで、
これは行くしかないでしょう、
ということになり、発作的に宿の予約を入れて、
セブンイレブンでチケットを買った。
便利な世の中だ。
昔だったら、まずプレイガイドに行って
チケットを買って、電話で宿を予約して、
という感じで半日仕事だったのだが。
前日に長野に入り、10/22 当日は、
開場の少し前から並んで、
チケットと引き換えに
赤色のアームバンドをもらって入場、
リンクをぐるっと回って、
ホームストレッチのスタート側の
最前列に座ることができた。
前売りが売り切れということで
もっと大変なことになるのかもと思ったが、
関係者席などはほとんど無く、
開場のときに入場すれば、最前列の席でも、
それほど苦労なく座れたと思う。
午前中はジュニアのレースがあって
その間は3~4割くらいの入りだっただろうか。
それでも、例年に比べればずいぶん多いらしい。
スピードスケートは見る競技としては
あまりメジャーではないことを実感する。
推しの選手のシールなどが貼られた
大きな望遠レンズをつけたカメラを
持ってきている方も多かった。
小平さんの出場する女子 500m は、
お昼過ぎにスタートで、
それに向けて観客が増えてゆき、
レースのときには9割くらいは
埋まっているように感じた。
エムウェーブの固定席は 6,500 席で、
公式発表の数も 6,000人ちょっと
(何を数えているのかよくわからないが)
だったようなので、そのくらい
ということになる。
レースに先立って、
ウォームアップの時間があって、
小平さんも他の参加者と一緒に滑っていたが、
やはり、滑走の速さと姿勢が
目立っていたと思う。
氷の上を気持ちよく滑走してゆく
選手たちの姿を見ていたら、
久しぶりに自分も滑りたくなった。
レース自体は 500m なので、
あっという間だった。
スタートから一気に加速して
後は本当に流れるように
滑ってそのままゴールした。
入場するときにもらった
選手紹介の紙でつくった張り扇で、
夢中で応援したので、
ほとんど記憶がない・・・
この日初めての37秒台が出たので、
客席が少し沸いた。
新型コロナの影響で大声禁止でなければ
もっとどよめいたことだろう。
その後も、張り扇での拍手が続くのを、
次のレースがあるから、という仕草で
抑えていたのが小平さんらしい。
それなのに、会場の DJ
(があって、スタートの瞬間以外は、
滑っている間も曲がかかって盛り上げるのだ)
の人が、「小平さんに盛大な拍手を!」
みたいなことを言ってしまい、
小平さんが、オリンピックの時のように
口に手をあてて「シー」と制止する一幕も。
次の最終組は、高木美帆さんと
山根佳子さんが滑ったのだが、
小平さんのタイムには及ばず、
1位小平さん、2位高木さん、
3位は小平さんと同走した稲川さん
という結果だった。
順位が確定した後、
高木さんと一緒に
ゆっくりとリンクを一周して
観客の拍手に手を振って
こたえてくれた。
事前の情報では、特にイベントはない
ということだったので、
このレースだけ見て帰る人も
ある程度はいたようで、
我々もそうする予定だったのだが、
なんと、この日の全レースの終了後に
競技引退のセレモニーがあるという
アナウンスがあったので、
その後の、男子 1,500m と
女子の 3,000m も観戦して応援
することにした。
3,000m では、高木さんが
2位の堀川さんに3秒差で
圧勝した。さすがだ。
4時から始まったセレモニーは、
手作り感のある素朴なものだったが、
サプライズゲストの登場など
心がこもったものだったと思う。
最初にスポットライトを浴びて
小平さんが登場して、
リンクをゆっくりと一周して、
これまで応援した方々に
改めて感謝の気持ちを表された。
その後、橋本聖子さん、
オランダ大使ご夫妻
からの花束贈呈があった。
橋本聖子さんは、普通なら何か一言
話をされそうなところだが、
本当に花束贈呈だけだった。
こういうところは、偉いと思う。
オランダ大使からの花束は、
「コダイラ」という名前のユリ。
2020年に命名された ユリの新品種で
オレンジ色がとても鮮やかだ。
続いて、李サンファさん、
ゆずの北川悠仁さん、
オランダ留学時のチームメートからの
ビデオメッセージが紹介された。
北川さんの、
「本当にこんなにまっすぐで
誠実な方って人間界にいるんだ、
っていうぐらい心の美しさがあふれ出ていて、
オーラのように、いらっしゃるだけで
歩くパワースポットのようで感動した」
という言葉にはうなづくしかない。
(「歩くパワースポット」はちょっと
言い過ぎだと思うが・・・)
さらに、小平さんの言葉を引用した
「ゴールテープ」が短く演奏された。
その後は、オランダ留学のときのコーチである
マリアンヌ・ティメルさんまで登場して、
感動的なメッセージが読みあげられた。
多忙な中、来日までしてくれるというのも
すごいことだと思う。
しめくくりは、小平さんからの挨拶。
2歳でスケートを始めたことを振り返り、
家族へやこれまで支えてくれた方々への
感謝の言葉が続いた。
早速、非公式だが、YouTube に
セレモニー全体の動画が公開されている。
さらに、小平さんから来場者への
サプライズプレゼントが用意されていて
「お子様優先」と言われたのだが、
グループで1つだけいただいた。
手作りの小冊子(NAOノートブック)と、
小平さんが、台風の被害のときに
ボランティアに行った長野県の
農家が作ったリンゴが、
小平さんのレースウェアにも
使われている水色の袋に入っていた。
そのノートブックを読んで、
リンゴの爽やかな香りをかいだときに、
「小平奈緒さんはりんご菩薩である」
という言葉が浮かんだ。
北川さんの言葉に影響されたのと、
もちろん、平岡正明さんの
「山口百恵は菩薩である」
のパクリであるのだが、
でも、本当にそんな感じがしたのだ。
Wikipedia によると、
「菩薩」とは、
現世で悟りを求めて修行する
衆生のことだ。
小平さんのこれまでの
競技選手としての人生は
まさに菩薩業と言うのに
ふさわしく思われる。
そして、これまでも
とても大変だったと思うが、
これからの人生も別の意味での
苦労が多いことが想像される。
「期待する人たち」にとっては、
放っておくにはあまりにも惜しい素材だし、
また、リンクで自分の記録向上を目指す
という純粋かつ明確な目標が無い中で、
我々凡夫の多様な価値観に
寄り添えるのかという問題もある。
しかし、まぁこんな心配は
しても仕方がないので、
凡夫は、これまでどおり、
ただただありがたく
見守り、応援するのみだ。
たくさんの感動、そして名言を
本当にありがとうございました。
※ラストレースの様子も、YouTube に動画があがっている。
BS で放送していた NHK のニュース
でも少し視ることができる。
追記:スケート連盟から、
10/22 のレース後の
記者会見の様子が公開されていた。
質問が聞き取りにくいが、
またいろいろ名言が聴ける。
「(こういうことを聞くのは無粋だと思うのですが)
今日の滑りは何点ですか?」
「点数はつけません! 唯一無二です」
「『知るを楽しむ』と言われているが、
これを知れたからパワーになったというものは?」
「アスリートは孤独じゃない、っていうことですかね。
何かを極めようとすればするほど孤立してしまう場面が
出てくると思うのですけれども、金メダルを取った後に
それでは豊かに生きていけないな、というふうに思って、
やっぱりアスリートでありながら一人の人間であるということを
決して忘れてはいけないな、ということを、頂点を極めたことで
知れたのは、人生にとって、早く気づいてよかったと思いました」
小平奈緒選手記者会見
追記2:いただいたりんごは、
しばらく机の上において眺めたり
香りを楽しんだりしていたのだが
ついに諦めて食した。
一言で言えば、とても「優しい味」。
甘さも酸味もとてもまろやかで、
バランスが良い。
香りも、主張しないが
しっかりとあって、
いままで食べたりんごの中でも
かなりおいしいほうだと思う。
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