たぶん、少し前に、小松左京さんの「復活の日」を
読んだからかもしれない。
以下、激しくネタバレあり。
* * *
「人類滅亡もの」なのだが、
途中まで読んでも、派手なことは何も起こらない。
淡々と日常的な出来事の描写が続いてゆく。
いったい、いつになったら、主人公が参加する
決死の作戦、みたいなものが始まるのだろう??
などと思いながら、1/3 くらいまで読んだところで、
これは、最後までこうなのだ!!
ということに気づいて、ちょっと鳥肌が立った。
なるほど、こういう書き方があったのか・・・
ヒロインが、昼からお酒ばかり飲んでいる、とか、
人物造形にはちょっと引っかかるところもあったが、
そんなことはどうでもよくなる。
人類の滅亡が、ごく普通の、何気ない死のように、
静かに、人間の尊厳、おかしみ、を含めて、
感動的に描かれる。
すべてが終わるとき、生活の中から
いろいろなものがそぎ落とされてゆき、
それぞれ人の中で大切なものだけが残る。
それは、規律を守る生き方だったり、
死を賭けたカーレースの熱狂だったり、
故郷の川や海での釣りだったり、そして、
自然の中での家族との日常の暮らしだったり、
人それぞれだ。
自分だったら何をするのだろうか?
自分にとって大切なものは何だろうか?
* * *
日常を丁寧に描くことで、核戦争の悲惨さを
しっかりと伝えていた「この世界の片隅で」を思い出した。
この作品も、「反戦」、「反核」という意味もあるのだろうが、
そういうことを声高に叫ぶよりも、ずっと、心に沁みる。
味わい深い作品。
映画もあるみたいなので、観てみたい。
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