大きく二つの意見があるようだ。
一つ目は、孫さんの tweet に代表されるように、
彼は珍しく良いことをしたので、
方法は少し異例としても、褒めるべき、
という意見。
もう一つは、池田信夫さんに代表されるように、
仮にやったことが良いことだったとしても、
法の支配の原則に照らして批判されるべき、
という意見。
二つの論点が存在していると思う。
1)浜岡原発を即時に停止すること自体は良いことか?
現時点での福島の事故の経過分析からしても、
電源の全喪失が問題で、
現在の浜岡が福島のようになってしまう可能性は
それほど高くないと思われる。
もし大津波が来るというのであれば、
今回の地震の経験からして、
津波で直接的に亡くなる人のほうがずっと多いはずだから、
そちらの対策のほうが先ではないだろうか?
原発だけを停止しても、それで得られる
安心感はそれほど大きくはない。
というわけで、即時停止の必要性、メリットは
個人的にはあまり大きくないと感じている。
一方、即時停止したことによるデメリットには、
今夏の電力供給の全国的な不安定化
燃料調達等による損失対応のための電気料金値上げの可能性
中部電力の経営の不安定化
電力会社間の癒着の強化
などがある。
メリットとデメリットを比較して、個人的には、
即時停止が良いことだったとは思わない。
2)法律的な手続きを踏んだ「命令」ではなくて
「要請」したことは適切だったか?
これについては「法の支配」の原則を
どの程度重くみるかによるのだが、
個人的には、「法の支配」の原則は、
人類の偉大な知恵の一つだと思うので、
それが無視されたことを軽く見ることはできない。
為政者や多くの国民が、それを軽く見ている
ということに原発以上の恐怖を感じている。
2)は1)とも少し絡む。
<即時>停止が本当に必要なら、
緊急性に鑑みて「要請」(実質的命令)
したことは許容範囲ではないか、という議論もある。
しかし、もしも1)に関して、
誰にとっても明白な緊急性があるなら、
法律的な議論や手続きも迅速に進むはずで、
(ここは少し議論があるかも)
そもそも「要請」する必要は無かったと思う。
そこが曖昧な状況だからこそ、
密室での議論に基づく「要請」になったのでは
ないだろうか?
まとめると、今回の首相判断を評価している人は、
1)原発の危険性を過大評価し、
2)法の支配の重要性を過小評価している
と個人的には感じている。
しかし、逆に見れば、私のような意見は
1)原発の危険性を過小評価し、
2)法の支配の重要性を過大評価している
と感じられるのだろうなぁ・・・
特に、1)の危険性の評価については、
原爆という経験や、福島という経験による
バイアスがあるので、評価が難しいところではある。
一方、2)の重要性の評価については、
ファシズムや第二次世界大戦前の政治状況
などからくるバイアスがありそうだ。
だからこそ、二つの意見の間で
かみ合わない議論が続いているのだろう。
今回の首相の「要請」に僅かでも良い点があるとすれば、
こうした議論を巻き起こしたこと、かもしれない。
それにしても、評価している人が意外に多いのは
個人的には本当に怖いのだが・・・
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