2020年10月のワルシャワでの演奏会。
コンクールの前のリサイタルシリーズのひとつらしい。
聴衆はみんなマスクをしている。
コンクールは結局延期になったのだが、
こうしたイベントは行われたようだ。
会場は、Royal Castle Concert Hall。
小規模のリサイタルらしく、
とても高い集中力で、
親密に、濃密に、そして自由に弾いている。
閉演後のインタビューで、
特別好きな曲を集めたと言っているとおり、
どの曲の演奏も本当に素晴らしい。
2015年のコンクールで存分に発揮した
深い瞑想的な、あるいは浄化的な
音色とフレージングは健在で、
ますます進化している。
速く弾くのはもちろん難しいが、
遅い、止まりそうなテンポで、にもかかわらず、
「音楽」を途切れさせずに弾くのも
とても難しいと思う。
マズルカが良いのはもちろんだが、
個人的には、特に、シューマンの2曲に
完全に引き込まれた。
アラベスクは、本当に深く、深く
夢見るように音楽に入っていって、
止まりそうになったところで、ふっと目が覚めて
主題が戻ってくるのが、言いようもなく美しい。
幻想曲は、アラベスクの続きで、
夢見るように始まって、
シューマンの激しい魂の遍歴、深淵が
そのまま音になって表現されているような、
圧倒的な演奏だった。
これまでいろいろな演奏を聴いてきたが、
大げさに言えば、初めて、
最終的に狂気に至るシューマンの魂を、
あるいは、その音楽の深淵を覗き見てしまった・・・
というような。
クライスレリアーナも聴きたい!
ヘンデルやアンコールのシューベルトも負
けず劣らず素晴らしかった。
パッサカリアを含む、組曲第7番も弾いて欲しい!
シューベルトも、即興曲やソナタも弾いて欲しい!
シューベルトのソナタ、いや、ロマン派ピアノ曲演奏全体の
新しいノームが生まれそう、というか、生まれつつある。
グールドのバッハ、内田光子さんのモーツアルト、
ブレンデルのシューベルト、のような・・・
* * *
インタビューからは、
彼女の「音楽」への愛、
「音楽」が本当に好きなのだ、
ということがよく伝わってきた。
演奏しているときに何を考えているのか?という質問には、
弾いている音楽について、
曲の構造などいろいろと考えているが、
それよりも、今弾いている音楽をよく聴いて、
その音楽のもつ「スピリッツ」を感じていなければいけない、
これまでに弾いたこと、今弾いていること、
これから弾こうとしていること、曲の終わりまでの全体の
エモーションを感じていることが重要だ、
というようなことを答えていた。
月並みだが、「音を紡ぐ」という言葉は、
彼女のためにあったのだ、
といったら言い過ぎだろうか?
いつかライブで聴きたいものだ。
ネットごしでも涙がとまらないのだから、
会場にいたら、おそらく、空気がすぅっと冷えて、
世界の色が消えて、別の世界=彼岸になってゆくのが
感じられたのではないか?
ますますのご活躍を心からお祈りします。
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