副学長をしている京都造形芸術大学での
授業にもとづいて、美大をめざすような人に対して、
絵を描くとはどういうことか、
についての<自分の>考えを、単純明快に説いている。
美術家で、ここまで自分のやっていることを
言葉にできている人は珍しいように思う。
あれこれ言うより作品で勝負、
というのがあるせいもあるのだろうが、
千住さんは、美術家と教育者の両方の才能を兼ね備えた、
稀有な例ということになのかもしれない。
それにしても、熱血である。
そして「世界で通用している」という自身に満ちている。
書かれていることも、すべて自分の体験に根ざしているので、
説得力がある。
高校生くらいの人が読むと、
いろいろ得るものがあると思う。
基本は、芸術はコミュニケーションだ、
これを伝えたい、という魂の叫びだ、というもの。
自分を他の人と間違えられることはあまりないように、
個性とは、作品の中に、自然ににじみでてくるものだ、
というのも、うなずけた。
養老さんの個性論とも通じる。
自分としては、こういう熱血なものを、素直に「すごいなぁ」
と思えてしまうのが、ちょっと不思議。
昔だったら、こういう人を見ると、
青春もののドラマのように、
なんか気恥ずかしいような感じがしたものだが・・・
もっとクールに、何気なく、いい仕事をするのが
かっこいい、と思っていたような気がする。
なんでだろう?
自分の中で何が変わったのだろう?
上のような思いは、どこから来ていたのだろう?
うわべだけの熱血、ステレオタイプの熱血の模倣、
と、根拠のある熱血の違いなのか?
梅田望夫さんなんかにも感じることだが、
日本人の多くが激しく屈折した敗戦から50年以上を経て、
自分の体験だけに根ざして、しっかりと
熱血に自分を語れる人が、やっとまた、
日本にも生まれ始めた、ということか?
こういう人こそ、教育再生委員会に入ってもらいたい。
ただ、エリートにありがちな誤解として、
誰でもがんばれば自分のようにできる、と思われると、
ちょっと困ることは困るのだが・・・
エリートを育てる教育と、
エリートを支える側の人を育てる教育と、
二極分化するのでなく、グレーに混じりながら、
それぞれにあったバランスで両方が受けられるとよいと思う、
って、これは違うエントリーの話題か。
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