全体は最終の第26章に収斂する、
というか、最後で一気にまとめている感じ。
逆に、そこから書き始めてもよかったと思う。
26章のメッセージのひとつは、
「身体と外界経由のフィードバックを内面化することが
高度な知能のもとになっている」
つまり、自分の脳内にシミュレータを持つということだ。
このとき、明示的に1ステップごとにシミュレーションをするのと、
明示的にはせずに結果だけを予測するのと、どちらもありえる。
シミュレータが無意識化されているか否か。
将棋で考えるとわかりやすいかもしれない。
手を指すと、相手からの手が返ってくる。
これが基本的な身体と外界経由のフィードバック。
それしかないと、反射的な手しか指せない。
せいぜいが過去数手のやりとりから次の手を
決めるというくらい。
しかし人は先を読むことができる。
自分がこう指したら、相手はこう指して、・・・
その結果として、もっともよくなりそうな手を選ぶ。
素人は、一手一手読みながら考えないといけないが、
プロはそこを無意識化していて、何手も進んだ後の
盤面が見えるらしい。
将棋以外でこうした先読みを一番しているのは、
誰かとコミュニケートしているときのような気がする。
自分がこう言ったら、こういうふうに思われそう、
というようなシミュレーションを一生懸命やっている感じ。
* * *
それにしても、これだけの膨大なうんちくを、
京極夏彦さんのような小説にまとめられたら、
かなり面白いものができそうだ。
「姑獲鳥の夏」や「鉄鼠の檻」のような小説を
誰か書かないかなぁ。
舞台は山奥にある脳科学の研究所。
そこで若い女性の脳科学者が殺される。
複雑に絡み合う人間関係とそれぞれの脳のクセ。
彼女はなぜ死ななければならなかったのか?
その鍵を握っていたのは・・・
* * *
ところで、最初のメッセージは逆に言えば
「高度な知能の基盤は身体と外界」
ということになる。
人間は内面だけであれこれ考えられるので、
ついつい考えてしまうが、それは脳のクセなので、
頭だけで考えずに行動してみることが(も)大切。
池谷さんとしてはこちらのほうが言いたかったようだ。
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