(文:ポール・フライシュマン/絵:バグラム・イバトゥリーン/訳:島式子・島玲子/BL出版)

おじいさんがひ孫に語って聞かせる形で、イタリアからアメリカへ渡った移民家族の思い出話がはじまります。

読み書きができなかった子どものころ、マッチ箱に思い出の品を入れておくことで日記にしていたというおじいさん。
貧しくて食べ物がなかったときは、オリーブの種をなめて我慢したといいます。
初めはお父さんだけがアメリカに出稼ぎに行っていましたが、イタリアで暮らしきれなくなり、父親のもとへ母と4人の姉とともに向かいました。
船旅はひやっとする場面もありましたが、希望があり、再会のシーンの絵は泣かせます。

移民として苦労を重ねながらも、学校で学び印刷工になり、商売をはじめて…と、努力が実り、立派な家に住み可愛いひ孫もできて幸せな人生を送っていることに安心させられます。
家族を思う気持ちや、学ぶことの大切さ、思い出の残しかたや郷愁といったものを精密で味わい深い絵がより雄弁に語りかけてくれるような絵本です。
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余談ですが。今日は、ブラジルから日本に出稼ぎに来ていた人たちが高齢となり、孤独死が相次いでいるという「クローズアップ現代+」のアーカイブ記事を読んでしまったため、余計に感じるものがありました。みんな5年以内に帰るつもりだったのに、30年以上独りで働いている人が多く、ブラジルにいる家族との縁が薄れ、居場所が失くなっているそうです。
昔はアメリカで頑張って働いていれば上昇できる人は多かったんだろうなあと、複雑な気持ちです。