震度7の揺れに2度にわたって襲われた熊本震災からもうすぐ1年。私は昨年7月7日から11日にかけて同被災地のボランティアに参加しました。そこで気がついたことを幾つかご報告します。
その第1は布で仕切った柔らかな印象の避難所との出会いです。それは熊本市に隣接する益城町の広安西小学校の体育館でした。阪神大震災以降、紙管と布で半個室を作り避難所を少しでも暮らしやすくする運動に取り組む建築家坂茂(ばんしげる)さんのグループが提供したものです。1ユニットは2畳ほどの大きさで入り口は半間で、木綿のカーテンやのれんが揺れています。柱となる紙管は高さ約2㍍。ユニットのなかの人の動きやたたずまいがそれとなく伝わってきます。紙と布の柔らかな質感が避難所全体にほっこりした雰囲気が醸し出していました。避難されている方にお話を伺いますと、ダンボール製の組み立てベッドも合わせて支援されていたため、寝心地も悪くないとのことでした。その一人、
80代の男性は「5月にこの間仕切りが設置されてから、以前と比べると雰囲気が和らいだ」と笑顔で話してくれました。
坂さんはNPO法人ボランタリー・アーキテクツ・ネットワー(www.shigerubanarchitects.com)を設立し、東日本大震災では1100ユニット、熊本地震では約2000ユニットを提供しました。2年前には京都市が災害時、このシステムを導入することを決定し、同ネットワークと協定を結びました。紙管の工場は各地にあり、発注後3~4日で納品されるので備蓄の必要もなく、事前に協定を結んでおけば、対応が早くなるメリットがあります。1ユニット5千円。
「避難所では雑魚寝が当たり前」という常識を覆すには十分過ぎるシステムです。