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ベトナムは新型コロナウイルスへの早い対策が奏功し、感染者300人台、死者0人にとどまる。同国だけではない。コロナ禍で迅速に動いた国には常に脅威と隣接する小国が目立つ。
フィンランドは欧州にあって感染者を7000人台に抑え、医療崩壊も起こさなかった。同国はソ連の大軍に2度侵攻され、死闘の末に独立を保った。今も兵役が課され、多くの備蓄庫や核シェルターがある。米ニューヨーク・タイムズ紙によると、戦後初めて備蓄庫の物資が放出され、医療機関に大量の防護服や医療用マスクが運び込まれた。台湾はSARS(重症急性呼吸器症候群)の苦い経験に加え、情勢に敏感な同胞ネットワークを中国大陸に持つ。武漢便の検疫強化など当局が対策に踏み切ったのは昨年末に遡る。感染症対策は有事の戦術や兵たんと通ずる。こうした国には備えがあった。そして、その備えや鋭敏さは「環境の必然」が生んだ。
コロナ対策で出遅れた日本にポストコロナへの備えはあるだろうか。新たな危機の一つに米中のデカップリングがある。中国からの企業買収の防衛などは当然のこと。難しさは「米国の脅威」への備えにある。
中国をサプライチェーンから切り離す動きは米大統領選の行方にかかわらず続くだろう。ローテク製品は許されても最先端分野が許されないのは間違いない。問題はグレーゾーンにある。米中の間合いで「許されない範囲」はダークからライトグレーまで動き得る。しかも今は民生・軍事技術の境界が明確でない。情勢を読めずに地雷を踏めば「東芝機械ココム違反事件」のような事態も起きる。「自国や自社の技術が軍事技術に関わる恐れはあるか。日本政府も企業もこれまであまりに鈍感だった」。国家安全保障局次長を務めた同志社大の兼原信克特別客員教授は警告する。(中略)
「私たちはどの国よりもあらゆる事態への備えがあった」。フィンランドのマリン首相は4月末、議会演説で訴えた。直訳すれば備えという言葉を同国政府は「preparedness」と英訳した。単なる準備ではなく覚悟や心構えというニュアンスを持つ。ポストコロナ時代へ日本が必要としているのもこの覚悟だろう。(*日経 記事より)写真:1987年、東芝機械が共産圏へ輸出した工作機械でソ連の潜水艦技術が進歩したとして日米の政治問題に発展した(写真は米議会前で東芝製ラジカセをハンマーでたたき壊す米議員ら)=AP
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