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仕事から帰ってきて缶コーヒーを半分飲んだ。残りの半分は夕食をはさみ牛乳で割ってちびちび飲んで飲み干した。
連休を前にし、眠れない夜になるのは承知で飲んだコーヒーだった。
おかげで少しは緊張した夜になった。眠たくなったら流れにまかせ寝床に入るいつもとは違う夜である。
今から思えば、弟の竜雄からの連絡も予感していたかもしれない。
睡魔がやってきたのは深夜の二時過ぎである。コーヒーを飲んだからふだんより三時間ほど遅くやってきたわけだ。
僕は寝床につかなかった。やってきた睡魔は形だけのものとわかっていた。あくびなどもし始め、頭の一部は確かに眠りを要求しだしている。だが、カフェインの力で全身に隈なく行き渡っている神経細胞はピンと張りつめている。
寝床に入り、眠りにつこうとしてもこいつらは眠れないはずだ。こいつらの眠れない感覚は大量情報の帯となって脳細胞に関与しだすに違いない。結果としては妄想や空想、日々の断片などが泡や雲のように際限もなく湧き出し、僕の脳裏を支配することになるだろう。
ただし、遺伝子の分裂増殖過程を終えた老輩の見る夢の如しで、明日への夢や希望などはほとんど孕んでいないのだろうが・・・。
そんな無為の夢や空想に浸るくらいなら、インターネット上の言葉や映像に触れる方がまだしも触感がある。
しかし、睡魔を頭の一部にかかえて文章を書く気にはならない。他人のブログやチャットなどを覗いてまわり、韓流ドラマを見た。
仕事を持つ年寄りにとってまとまった休暇は貴重で大切な時間だ。寝床についてすぐ翌日を迎えたくないからコーヒーを飲んだ。眠らぬ夜をわざわざ作り出した。
半分眠たく半分起きていたいこの状態こそ、速い時間の推移に対する年寄りのささやかな抵抗の証しなのだ。
とはいえ、抵抗力もやがては尽きて圧倒的な睡魔に陥落を余儀なくされる。
ドラマを見ている途中、両肩の間からカクンと顎が抜け落ちそうになった。僕は懸命に上体をもとに正した。
もう見続けられない。マウスでドラマの画面を閉じた。Eメールチェックをしてパソコンをシャットダウンしようとしたら、新着メールがある。
弟のタツオからだった。
――兄さん、元気でやってますか? 長い間、ごぶさたしたのでこんなメールにびっくりしてるかもしれないけど、俺は今、お兄さんの住んだ中野にいる。
トシとはこの間、亀戸で会ったよ。みんなの消息を聞かれたけど、ヒデオ兄さんのことだけはしっかり伝えておいた。
「この叔父さん何?」
って感じでトシは妙な顔してたけどね(笑)。
お袋とセイジ兄さんとは電話で話をした。エリはこっちに働きに来てるんだって? 東京の一人暮らしでいろいろ苦労してるみたいだけど、メゲないでやっていってほしいな。
今日は疲れる仕事だったんだ。明日は休みだけど、身体に酒が入っててそろそろ眠たくなってきた。
今夜はこのくらいでまたメールするよ。
じゃあね。
ヒデオ兄さんへ
タツオ

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