雨の記号(rain symbol)

第62回NHK杯 決勝戦 渡辺竜王VS羽生三冠


 第62回NHK杯決勝戦は今一番見たい対局と言われている渡辺竜王と羽生三冠の戦いになった。
 過去の対戦成績は勝ち負けを繰り返し、渡辺竜王の24勝21敗となっている。藤井九段によると渡辺竜王は若手を代表する天才、羽生三冠は長い間、棋界を制してきた天才棋士との由。天才棋士同士で若手とベテランがぶつかればたいていは若手がベテランをしのぐのが普通で、ここで勝敗に差ができれば世代交代、拮抗してれば覇権をめぐる渦中にあるとの説明である。
 渡辺竜王VS羽生三冠の決勝戦は、新旧世代を代表する天才同士の覇権をめぐる”渦中の戦い”ということになるだろうか。

 ☆将棋ファンの二人に対する印象は、羽生三冠に対しては好き嫌いがあまりないのが特徴。一方、渡辺竜王は好き嫌いがはっきり分かれているのが特徴とのこと。

 ☆NHK杯戦において羽生三冠は圧倒的な成績を誇っている。優勝回数が二桁(10回)に達しているのは羽生三冠だけで、現在、この日まで25連勝を続けている。”この記録は二度と破られないのではないか”とは藤井九段の弁。



 ☆二人とも基本的には居飛車党。堅陣をしいて道筋のはっきりした強い戦いを好む渡辺竜王に対し、相手に応じた柔軟な差し回しの光る羽生三冠。共に終盤の強さは他の棋士たちから怖れられている。

 
 今回のNHK杯戦で二人が印象に残している対局は、羽生三冠が山崎七段との一戦、渡辺竜王が深浦九段との一戦を挙げている。
 羽生三冠が渡辺世代の棋士、渡辺竜王が羽生世代に属する棋士を挙げたのは非常に興味深い。
 特に羽生三冠のコメントは耳に残った。羽生三冠の思い描いていた対渡辺戦の戦略イメージは、対山崎戦から来ていたのではないか、とあとからふと思った。すなわち、じっくり腰を据えて竜王を前例のない戦いへと誘導したかったのではあるまいか・・・と。それとも辛抱の手が多かった(普通の棋士が指せば悪い手と藤井九段が指摘した手もあった)のは早々に作戦負けを感じていたからなのだろうか?



 振りゴマの結果、渡辺竜王の先手番で将棋は始まった。渡辺竜王は居飛車、羽生三冠は振り飛車模様をうかがわせながらも居飛車同士の戦いになった。
 コマ組みは相手を見ながら矢倉模様へと進んだが、羽生三冠が変化を見せたため、同形の矢倉布陣とはならなかった。

 2四歩の垂らしから2二歩受けの進行は渡辺竜王の戦果だ。右辺を凝り形にしておいて、竜王は戦いの場を中央に移す。竜王は自在に飛車を転回できるが、羽生三冠は7二歩がたたって飛車の横利きが止まっている。そこに着目して成り歩を見せる5二歩打ちが厳しかった。囲いから離れそれを取りに行くようでは王も流れ弾に当たりやすくなった。凝り形になっているので守りゴマの転回が思うに任せないからさらにいけない。裸の王様になった羽生陣に渡辺竜王の攻撃陣が集結して迫り始める。城の外に引っ張り出され、攻撃陣のコマをむしり取られながら攻めたてられては、羽生三冠にとって勝ち目のない戦いになってしまった。
 以下、一手進むごとに羽生陣の形勢は悪化し、落城を見ずの潔い投了となってしまった。
 終盤の強い羽生三冠にしてはめずらしく不出来な将棋となってしまった。
 逆に言えば竜王の機を見ての鋭い攻めが光った。
 しかし、双方の序盤の駆け引きには手に汗握るものがあり、決勝戦にふさわしいものがあった。
 この将棋、長い持ち時間ならどんな風に進行したことだろうか?
 将棋を見終わった後、そんなことを考えたりした。
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