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雨の記号(rain symbol)

韓国ドラマ「アイリス」最終話 前半感想

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ブラックの思い描いた見果てぬ夢

 車を爆破させてチョン室長を殺害し、現場から立ち去ろうとするビックをヒョンジュンとソンファが目撃し、車で追跡するところから終章の幕が開く。
 これまで用心深さにくわえ大胆かつ機敏に行動してきたビックだが、今回の仕事にはいたく充足したせいか、用心深さが少々欠けた。ヒョンジュンの追跡に気付かず、隠れ家にまで踏み込まれてしまったからだ。
 ひと仕事終えた後はこの部屋でこんな風に年代物のワインを楽しんできた彼だろうが、初めて訪れた危機(殺し屋稼業はたいていここらで年貢を納める)をどう乗り越えるのかに注目した。
 ここがヒョンジュンとビックの最後の対決になるのか。それとももう一回逃げ、別の場所で決着を見ることになるのか。
 大いに注目したが、終章の幕開けにふさわしい見ごたえある場面を生み出して、以後の流れに期待をつないだ。
 このドラマ、アクションシーンはどこの場面もリアリティにあふれ、息も抜けないほどの緊張感を保ってきた。
 最初の襲撃以来、ヒョンジュン周辺を付けねらうビックのイメージが、このドラマに緊張感と興味をもたらしてきたことは事実だ。
 ビックには自分的に主人公サイドの恨みつらみを引きずらせたまま、アイリス(組織)に逃げこんでほしかった。登場したアイリスサイドの人物は、陰の男ブラック(アイリスの中心メンバーの一人らしい)を除いてすべて一掃されたが、問題の根深さを視聴者にアピールするにはビックなり、ホン・スジンなり一人を残した方が効果的だったのではないかと思った。
 ただ、アイリスというのは金(カネ)だけはふんだんにあてがうが、命の保証も生活も当人任せになっているようなので、一匹狼としていずれはどこかで散らなければならない運命かもしれない。
 いわば忍者世界の里忍のような存在をなしていたのが韓国内に潜んでいたアイリスのメンバーたちだった。彼らは目的をひたかくしにし、里忍のように生きてきたからこそ、大統領室にもぐりこめたし、NSSの局長にものぼりつめた。目的のためにひたすら自分の資質を開花させたスペシャリストらの趣きすらある。ビックといい、ホン・スジンといい、「アイリス」とは各部門の才能を集めた組織体のようにも映ってくる。
 キム・ヒョンジュンもチェ・スンヒも「アイリス」には加わらなかったものの、傑出した才能の持ち主だったのは語るまでもない。
 チェ・スンヒの父は大統領暗殺の汚名を着せられたまま死んでいったとある。この無念さから北と連動して立ち上がってきたのが「IRIS――アイリス」だとすれば、北ではクーデターが南でもチェ・スンヒ女王国誕生を野望の先に見ているような気もしてくる。北の連中が思い描くクーデター構想に便乗して、南の責任者ブラック(かつて、チェ・スンヒの父の忠実な部下だった設定で)が思い描いた見果てぬ夢といったところで・・・。
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