雨の記号(rain symbol)

韓国ドラマ「がんばれ!クムスン」(23)



韓国ドラマ「がんばれ!クムスン」(23)


 しかしくじけない。怯んだのはほんの一瞬で、直談判を始める。
「院長、私をここでやとっていただけませんか? ここで働きたいんです」
 オ・ミジャは困ってウンジュを見た。人事権は彼女に任せているからだ。
 クムスンは続けた。
「雇ってくだされば一生懸命働きます。仕事が大変で辞める人も多いと聞きました。私を選んでくだされば…」
「お嬢さん、お年は?」
 オ・ミジャは訊ねた。
「私ですか? 23歳です」
「…経験は?」
 首を振る。
「小さな店でも?」
「はい、ありません」
 背後に控えるスタッフには薄笑いを浮かべる者もいる。
「それで落ちたのね」オ・ミジャは合点のいく表情になった。「経験がないのに年齢が高すぎるわ」
 ウンジュを見る。
「そういうことでしょ?」
 ウンジュは答える。
「その通りです」
「お分かりになった? うちでは人事選抜には一定の規則があるの。あなたは年齢制限で落ちたのよ。納得いただけた?」
 クムスンは残念そうな顔になった。しかし、まだ気力は尽きていない。
「それなら年の分ももっと頑張ります。一度だけチャンスをください」
 後ろでやりとりを見ているク・ジェヒはクムスンの粘り強さに失笑した。
「あのね――!」ウンジュが言った。「市場の交渉とは訳が違うの。呆れた人ね。ここがどこだと思ってるの? 5分と言ったわね。もう10分以上経ってるわよ。帰っていただける?」
 クムスンは院長を申し訳なさそうに見た。
 時間を取らせた侘びを残して引き揚げていった。
 クムスンが背を向けるとオ・ミジャは顔を見せている息子を呼んだ。

 
「やっぱり年齢か…!」
 店を出たクムスンは落胆に沈んだ。
 しかし、それも束の間で元気を奮い起こす。
「大丈夫よ。ソウルの美容室に一軒くらい働くところはあるわ」

 福祉館で最後の手伝いを始めたヨンオクは、ひと仕事終え、ゴム手袋を脱ごうとした時、突然足元から崩れ落ちた。

 ク・ジェヒとウンジュは部屋でくつろいだ。
 ウンジュはジェヒに皮肉を言い、愚痴をこぼした。
 オ・ミジャがやってきて三人になった。クムスンの話になった。
 面接の件を切り出したのはオ・ミジャだった。
「ウンジュ、さっきの子だけど採用してみない?」
 ウンジュより先にク・ジェヒが反応を見せた。
「どうしてです?」ウンジュが訊ねた。「人員は足りていますよ」
「でも、熱意のある人にはチャンスくらいはあげたいわ。仕事がきついと辞める子も出てくるだろうし…」
「院長、私は反対です。雇用主の気持ち次第ですが、規則を基準に選抜しています。規則は大事です」
「それはそうだけど…なぜかあの子にチャンスをあげたいのよ。直談判しに来る子が最近いないせいか妙に新鮮だし、何だか誠実に働いてくれる気がするの」
「私は反対です。ダサくてセンスがなさそうです」
 オ・ミジャは笑った。
「確かに田舎っぽいわね」
「個性を主張したコンセプトかもよ」
 黙ってやりとりを聞いていたク・ジェヒが口を開いた。彼はここにきた時、後姿を見ただけですぐ彼女と分かったのを思い出しながら言った。
「髪から服装まで統一されてたと思うけど」
「見たの?」
「見たよ。俺も母さんに一票だ。一生懸命働きそうな気がするよ」
 母のいう誠実さも漠然とながら感じだしている。
「そうでしょ!」オ・ミジャは膝を乗り出した。「ウンジュ、そうしましょう」


 電話を受けたのはジョンシムだった。
 美容室の採用を知ったピルトは大喜びだ。しかし、ジョンシムは複雑な思いだ。フィソンの面倒を見る機会が増え、自分の自由時間が奪われていきそうな不安に駆られだした。
「でも、なぜかしら…今まで受ければ落ちてたのに―私があの話をしたとたんに合格?」
 ジョンシムはため息をつく。
「嫁に使われるのは嫌だったのに~、ほんと、私の運命って…」
 ジョンシムを元気付けるためにピルトは提案する。
「久しぶりに三枚肉に焼酎でもどうだ?」
「寝ぼけてるの?」ジョンシムは顔をしかめる。「豚足ならまだしも」

 シワンとテワンが加わり、酒盛りになった。名目はクムスンの美容室合格祝いだ。
 お祝いだから当然酒はうまく肉も美味い。
 酒と料理に浮かれた中で、シワンの恋愛話が出た。情報を出したのはテワンだ。
 ジョンシムとピルトはすぐに興味を示した。
「あなた、付き合ってる人がいるの?」
 シワンは照れながら言った。
「まだ付き合いだしたばなかりなので…今度、きちんと報告するから」
「どんな子? 年は? 何してる人?」
 ジョンシムはたたみかけて訊ねる。
「今度、ゆっくり話すから」
 そこにクムスンの声がした。
「おお、帰ってきた、帰ってきた」
 話題はすぐクムスンの方に移った。
「さあ、こっちに来なさい」
「おめでとう、クムスン」
 家族から次々声がかかる。
「えっ?」
 クムスンには訳がわからない。
「何がです?」
 ノ・ピルドが答える。
「さっき、美容室から電話があった。月曜から出勤しろと」
「どの美容室です?」
「はて? お前、何と言う美容室だった?」
「えーっと、どこだっけ? 急には思い出せないわね」
「ほら、国産のお茶と同じ名前だったろ?」
「国産のお茶? ああ、そうそう~、オミ茶だかクキ茶だか、そんな名前だった…」
「本当ですか?」
 ボーッと突っ立っていたクムスンはジョンシムの前に座った。
「オ・ミジャ美容室から連絡があったんですか?」
「そうよ」
「信じられない。さっきそこで断られたばかりだったんです」
「信じろ」ピルトが得意げに言った。「俺も横で聞いていたんだ。さあ、お前も一杯いけ」
 嫁が酒だなんて――クムスンはためらっている。
「大丈夫だ。俺が注ぐんだから飲め」
 クムスンは両手で杯を受けた。
「おめでとう、クムスン」
「就職おめでとう、クムスン」
 全員、杯を握った。
「死ぬ前に私があなたの吉報を受けたわ。頑張るのよ」
「さあ、乾杯」
「おめでとう!」

 クムスンは美容室に就職できたことが嬉しくてならなかった。
「母さん、やったよ」
 寝ているフィソンに抱きついて喜びを表わした。
 次に額縁の中にいるジョンワンにもそれを報告した。
「私、ついに就職したわ」

 ク・ジェヒはウンジュと映画を見に行った。ウンジュは映画を見ずにジェヒを見ている。ジェヒの肩に顔を持たせかける。
「…」
 ジェヒも透明人間の映画にさほどのめりこんではいないようだ。
 恋人とはそういうものじゃない。まだ恋人とは言えない二人だ。

 キジョンが帰宅した。家には次女のウンジンしかいない。
 ヨンオクの姿がないのでキジョンは訊ねる。
「まだ帰ってない」
「まだ? 電話もないのか?」
 キジョンが携帯を取り出したら電話が鳴った。
 電話に出たウンジンが叫んだ。
「ママが倒れたって!」
 キジョンは病院に駆けつけた。
 ヨンオクの病室にはキジョンの同僚がいた。
「どんな状態だ?」
「まずは検査だ。検査すればすぐわかる」
「まさか――」
「今はそう悪く考えるな」

 ク・ジェヒとウンジュは映画を見終わって出てきた。食事の話になった。
「どこに行こうか?」
 ク・ジェヒが考え込んでいると、ウンジュはいきなりジェヒのほっぺにキスをした。ジェヒは顔をしかめた。
 反対にウンジュはゴキゲンだ。
「ご褒美よ。今日は最高だったわ」
 ジェヒは怒っている。
「食事代は私が持つわ」
「いいか。こういうのは反則だぞ。次は退場だぞ」
「嬉しいくせに」
 ウンジュを捜すキジョンからの電話だった。
 
 ヨンオクは目が覚めた。そばにはキジョンが座っている。
 ヨンオクは起きたがったがキジョンは不機嫌そうな顔で寝てろという。
 ヨンオクは精密検査を受けた。
 
 明日から出勤でクムスンが張り切ってる朝、ジョンシムは怪我をした。洗面所で石鹸を踏んで足を滑らせたのだ。

 キジョンの心配は現実のものになった。ヨンオクの主治医は検査結果を示しながら言った。
「クレアチン数値を見ると、拒否反応だ」
「手術してまだ三年だ。早すぎるだろ?」
「受け入れるしかないよ」
「どうすればいい?」
「治療を続けて様子を見よう。腎臓機能が回復してくれればいいのだが…」
「可能性はあるか?」
「厳しいように思う」
「なら、なぜそんなこと言うんだ」
「透析を続けるしかないな」
「また透析を? 家内は透析に合わない身体だ。透析するたびにショック症状を起こす」
「もちろん、ヨンオクさんには再移植するのが最善だ。まずは移植センターに登録するんだ。家族から移植できれば一番いいんだが・・・それは無理なんだろ?」
「…」
 キジョンの頭の中では気になる影が動きだしている。
「しっかりしろ。君が動揺してどうする。ヨンオクさんも君を見て心配しだすぞ」
「…」


 シワンはソンランの職場を訪問した。彼女に会いたい一心でだった。
 シワンの訪問を受け、ソンランは驚いた。
「日曜に仕事なの?」
「あなたの銀行のよ」
「4時間くらいだろ? 君の仕事が終わるのを近くの喫茶店で待つよ」
 ソンランとの学生時代を思い出しながらシワンは本を広げた。

 ドクタールームに戻ったキジョンはしばし瞑想した。
 やがて目を開け、引き出しから一冊の本を引っ張り出した。その中から一枚のメモ用紙を引っ張り出した。

 メモ用紙にはナ・クムスンの連絡先が記されていた。




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