韓国ドラマ「がんばれ!クムスン」(最終話その3)
スンジャが子供を産み、ナ家は家族が1人増えた。
ジョムスンが帰ってくると、赤ん坊が泣いている。
「まあ、どうしたの? あんなに泣いて、クムジェが大変だわ」
ジョムスンは部屋に上がった。
「スンジャ、どこ? どこにいるの?」
部屋に入るとスンジャはぐっすり寝込み、ほっとかされた赤ん坊がなきじゃくっている。
「あらあら、まあ・・・」
ジョムスンはクムジェを抱き上げる。
「クムジェを誰が泣かしたの――スンジャ、起きなさい」
泣きじゃくるクムジェ。
「いいのよ、いいのよ。大丈夫だからね。よしよし、よしよし。スンジャ、起きなさいってば。起きなさいよ」
しかし、スンジャは目を覚ます気配がない。
「あら、もう泣き止んだのね。まあ、偉いわね――ほら、スンジャ」
ジョムスンは足でスンジャの身体をつつく。
「起きなさい。起きなさい。起きないつもりなの?」
クムジェはまた泣き出す。
「違うの。いいのよ――この嫁は・・・まったくカバみたいなのが――腰の曲がった姑にぜんぶさせるつもりね――昨日だって、一晩中、私に見させて高いびきで寝てたのに昼寝までして・・・まったく腹立たしいったらありゃしない。ぜんぶ私に押し付けて」
この時、サンドの声がする。
「お前、母さん――」
「ここよ。帰ったのね。スンジャ、起きなさい。起きなさいってば」
サンドが入ってくる。ジョムスンを止める。
「いいんです。起こさないで。子守で疲れてるんです」
呆れているジョムスンからクムジェを抱き取る。
「こいつは・・・一週間でずいぶん大きくなりましたね」
ジョムスンは息子の言葉も癪にさわり、声を荒げる。
「スンジャ、起きなさい」
サンドが制す。
「母さん、起こさないで。ひどく疲れてるはずですから」
「スンジャが? なぜ?」
サンドはジョムスンの話を聞いていない。
「クムジェよ。パパだよ」
テワンのCM撮影は続く。
「もう一度だな」
さらに撮影は繰り返される。
「カット――お疲れ様です」
撮影現場にはピルトとジョンシムが駆けつけている。
テワンの仕事をマネージャなみに理解しているクマが二人に説明している。
「コンテが気に入らなくて、再度、撮影をしてるんです」
「そうなの・・・」とジョンシム。
「もう一度です」
テワンに声がかかっている。
テワンの様子を見てピルトが言った。
「だけど、飲料水の飲みすぎだな。さっきから、ずっと飲み続けだ」
「飲食のコマーシャルは大変ね」
「うむ・・・」
「今回はうまくいくといいわ」
「お母さん、大丈夫ですよ。それに今回のドラマも重要な役だわ」
話をしてるジョンシムたちに声がかかった。男はジョンシムを見て名刺を差し出した。
「私は広告会社の監督のイと申します」
名刺を渡されてジョンシムは困惑した。
「私に何か?」
「私の企画するコマーシャルに、主婦モデルとしてあなたに出ていただきたくて」
クマは驚いて訊ねる。
「お母さまをコマーシャルのモデルに?」
「わ、私をですか?」
ピルトもびっくりしている。
「うちの家内をですか?」
「はい。印象がとてもいいものですから。探してたイメージです」
家に帰ってジョンシムは笑いが止まらない。
「いい加減にしてもうよせよ」とピルト。「飯粒が飛び出すぞ」
話を聞かされた周りも笑いながらジョンシムを見る。
「だっておかしいんですもの。だって信じられる? こんなことがあるなんて」
ジョンシムはまた笑い出す。
「どうしてです? お母さんの美貌は際立ってますよ」
「まあ、そうかしら? その人は私がきれいなだけでなく、雰囲気がいいと言うの」
ピルトが横で訂正する。
「雰囲気じゃなくて、イメージだろ。まったく」
「あら、あなた――嫉妬してるの?」
「嫉妬? 何で?」
「人気が出るかと思って・・・」
「まったく、母子が同じになってるよ――テワンも浮かれていまだ迷走中なのに・・・お前の母さんもここで甘い夢を見始めているぞ」
「父さん、一緒にしないでくれよ。俺はすでにエンジンが動きだし、ドラマとコマーシャルで急加速まで始まろうとしてるんだ」
「言っても仕方がないな。どこに向かって走るのやら・・・」
笑い声で包まれる。
「おばあちゃんがコマーシャルに?」
ウジュの言葉にシワンが説明する。
「ああ、驚きだろ? 3ヶ月後にはテレビに出るよ」
「びっくりでしょ?」とジョンシム。
「はい。でも、きれいだからね」
「そうなの? 私が?」
「まったく・・・きれいだと聞くだけでそれか・・・やれやれ」
「そりゃ当然にうれしいわよ――ウジュ、魚を食べなさい。好き嫌いはダメよ」
「見え見えだぞ、わざとらしい」
ピルトとジョンシムのやりとりで家族は笑いに包まれる。
ジェヒは手の怪我もリハビリで回復し外科医として復帰した。手術室にも入り、メスが揮えるようになった。
仕事は自信に溢れ、後輩への指導も厳しさが戻った。
「お疲れさまでした」
「ああ、お疲れさん――病室に移す前にチェックだぞ」
後輩を伴って歩き出しながらジェヒは指示を入れる。
「はい、お疲れさまです――そう言えば、先生がユさんの手術を?」
「そうだ。不満か?」
「いえ、おめでとうございます」
「僕からも」
ジェヒは苦笑する。
「ありがとう。俺の復帰はお前たちの不幸なのに、お祝いをもらうか・・・」
携帯に出る。
「もしもし・・・フィソンか――パパだよ。フィソンが電話なんてうれしいな。そうか。じゃあ代わって――母さん・・・クムスン? クムスンは今日、昇級試験だけど――今朝、話しただろ――そんな大事なことを忘れるなんて――ああ」
クムスンはデザイナーの最終テストに臨んでいた。
キム室長が挨拶に立つ。
「デザイナーへの最終テストなので、厳重な審査のために外部から先生がいらしてます。先生方、よろしくお願いします」
クムスンは審査員に目をやった。クムスンの師匠であるユン・ソランもやってきている。
二人は目が合う。
「これまで行った3次テストまででの評価と、スクラップはテーブルの上です」
ユン・ソランはクムスンのデーターにも目を通す。
「最終テストは25分です――では準備はいいですか? まずはクムスンさん」
クムスンは前に進み出て、審査員に一礼する。
「ナ・クムスンです。モデルは顔長で色黒です。その特徴を活かして少年っぽく演出します」
次の受験者。
「角ばった目の大きい顔なのでやわらかい印象を・・・」
テストは開始された。
自分の想像力とイメージを短い制限時間でいかにまとめあげるか。自分及び他者との戦いは高いレベルで繰り広げられた。
店のスタッフも注目する中、審査は厳正に進められた。
そして発表の時がきた。
「お待たせしました。では最終結果を発表します――カットとパーマと染色、そして――総体の4つの点数を合わせて80点以上が合格です。まずはナ・クムスン――86、80、80、84。よって平均83点で合格です。おめでとう」
スタッフたちから拍手が沸き起こる。
ユン・ソランも個人に戻り、祝福の笑顔だ。
クムスンの笑顔にユン・ソランは大きく頷いた。
「とにかく、ここがひどく凝ってる・・・」
ユ・サンドはスンジャの肩を揉んでやっている。やる気を起こして若い格好のジョムスンは呆れることもやめて目を背けている。
「そこよそこ、とても痛いわ」
「当然だよ。高齢出産は大変なんだから」
「ああ、気持ちいいわ」
ジョムスンはたまりかねて二人を睨む。
「もういいわ。あなたも疲れてるのに」
ジョムスンは仕方なくぼやく。言いたくなくても言ってしまう。
「まったく目をあけて見てられない。誰が徹夜で子供の面倒を? カバのように大の字で寝てて、子守をしたと?」
「母さんたら、昨日だけですよ」
「昨日だけだと?」
「あなた――私はいいからお義母さんの肩を揉んであげて・・・お義母さんは高齢で子供を抱くだけでも大変よ。私とは比較にならない。こんな華奢な身体で1分でも子供を抱いてたら、私が1時間抱っこするのと同じだわ。早く揉んであげて」
サンドは笑って同調する。
「そうだな――母さん、考えが甘かったよ。スンジャは出産後、さらに寛大になったでしょ」
「本当に、まったく・・・」
ジョムスンの子育ての苦労は続きそうである。
サンドがジョムスンの肩を揉んでやろうとしたら電話が鳴った。
ジョムスンはサンドを振り切って受話器を握った。
「もしもし・・・クムスンか――えっ? 何だって? 聞こえないの。もう1回言って――」
サンドとスンジャが仲睦まじくふざけているのでクムスンの声が聞こえない。
「うるさい!」
ジョムスンは二人を叱りつけた。
「調子に乗るのもいい加減にしなさい。電話もできないだろ」
二人は黙った。
「クムスン、もう1度話して――本当に受かったの? 合格したの?」
「合格したの?」
サンドたちもジョムスンを見上げた。
「それじゃ、お前もいよいよ美容師になったのね。本物の美容師なのね。そうよもちろんよ。まずは私の頭をしてくれないと――本当によくやったわ。仏様に感謝しないとね・・・」
ヨンオクは子供たちのためのボランティア活動にいそしんだ。健康不安もなくなり、それがとても楽しそうだ。
そこにクムスンからメールが入った。
――ママ。昇級テストに合格してデザイナーになった。一緒に喜んで。
ヨンオクは嬉しくなって携帯を抱きしめる。
キジョンは野良仕事に精を出している。しばらくは野菜たちと向き合って静養に努めるつもりのようだ。
そのキジョンが久しぶりに自宅に戻ってきた。
「急にどうしたの?」
「友人の出版記念があるんだ」
父親が帰ってきたのを知ってウンジンが二階から駆け下りてきた。
「パパ」
「おお、ウンジンか」
ウンジンは父親に抱きつく。陽気でほがらかな娘に戻ってきたようである。
「家にいたのか?」
「家庭教師の先生と――週末にママと一緒に遊びに行くつもりだったの。今日は泊まっていく?」
「ああ、先生が待ってるから早く行け。話はあとでな」
ウンジンが戻った後、ヨンオクは言う。
「出かけるなら着替えて」
「そうだな――それとこれを」
キジョンはビニール袋を差し出す。
ヨンオクは袋を受け取り、中からトマトなどを取り出す。
「あら、おいしそう――あなた、頑張ってるみたいね。形もよくなったわ」
「何度もいうが、無農薬だ。形は悪くてもうまいんだぞ」
そう言ってキジョンは部屋に向かった。
後から部屋に入ってきてヨンオクは訊ねる。
「あなた少し痩せたんじゃない?」
「いいや、そう見えるか?」
「ええ。食事はちゃんと取ってるの?」
キジョンは笑いながら椅子に座る。
「心配するな。隣家の奥さんに悪いほどよく食べてるよ――日焼けのせいだろ」
「1日3時間以上は本を読んでないわよね」
「論文は書けなくても無理はしないから大丈夫だ。お前はどうだ?」
ヨンオクも笑って椅子に座る。
「私も調子がいいわ。すごくいい。そういえば――オ先生って、どんな人?」
「オ先生? ああ、オ・ジウンか? それがどうした?」
「その人がウンジュに付きまとってるの」
「オ・ジウンが?」
「ええ。かなり前からよ。どんな人なの? よさそうな人には見えたけど・・・」
「あっはははは――」
ウンジュが店からおりてくると、オ・医師が外で彼女が出てくるのを待っている。
ウンジュと目が合うと笑みを浮かべ、歩み寄ってくる。
「こんにちは」
「・・・また何の用で? いま忙しいのよ」
「少しだけお時間を」
「・・・もうお話したはずです。すみません」
ウンジュが行こうとするのを彼は遮る。
「待ってください――どうしてダメなんです? なぜ突き放すんです? 弟子だからダメでは――納得できないんです」
「それでも仕方ありません。面倒なのは嫌なのよ」
「ウンジュさん」
「すみません。では」
「ちょっとだけ」
彼はなお頑張る。
「何なんです?」
「チャンスをください」
彼の精一杯の頑張りが次の言葉をもたらした。
「10回だけです。会えば俺のことが好きになる。会ってください。それでダメならきれいさっぱり諦めます」
「・・・」
ジェヒとクムスンたちはサウナでくつろぐ。ミジャが夢に見ていた一家団欒の姿だ。
「ああ、気持ちいいわ~」とミジャ。
「母さん」
「何?」
ミジャは目を開ける。
「変な声を出すなよ」
「何ですって」
ミジャはジェヒの肩を打つ。
「母親に向かって何いうの」
「お義母さん」
クムスンがゆで卵を差し出す。次のゆで卵をジェヒの頭で割った。
「痛い。こらっ!」
フィソンがそれを真似する。
ミジャは笑う。ジェヒも笑う。
「クムスン」ミジャは背筋を伸ばし切り出した。「デザイナになったんだから、そろそろうちの店に戻ったら?」
「お義母さん――それはつまり、スカウトですか?」
「そう、スカウトよ」
「給料は?」とジェヒ。
クムスンは笑いを浮かべる。
「あなたは黙って、私のマッサージしてなさい」
「そういうわけにいかない。家計に関わるんだ。クムスン、強く出るんだ」
「あっははははは――」
クムスンはペロっと舌を出す。
ミジャはジェヒを小突く。
「あなた、私の息子なの?」
「あっははは――次はフィソンの番だ。よしっ、フィソンおいで」
「クムスン、あなたの意見はどうなの?」
クムスンはりんとした姿勢で答える。
「お義母さん――スカウトは感謝しますが、移る気はありません」
「だけど、大好きなユン・ソランもいるわ」
「・・・」
「いいわ」ミジャはジェヒを見る。「給料を多く出す」
「だからです」とクムスン。「前にも話しましたが、私は美容室を開くのが夢なので、お義母さんの店で気楽に温室の花のように成長せず、野生に生える木のように、前面から正々堂々と実力を認められ、経験と技術を身につけないといけないんです」
「この娘は・・・」
クムスンの話を聞きながらミジャは自分の見立ての甘さをつくづく思い知らされた。
「ジェヒと比べて月とスッポンのように思ってたけど・・・ジェヒにふさわしい・・・いや、それ以上の――棚ぼた娘かもしれない・・・」
ならばぜひとも店に戻さねばならない。ミジャは説得にかかろうとする。
「あなたの気持ちは分かったけど・・・」
「いやー、すばらしい」
ジェヒは手を叩いた。
「やはり、俺の女房だ」
ジェヒは両手を挙げて叫ぶ。
「女房万歳。万歳。万歳」
クムスンも叫び返す。
「夫にも万歳」
するとフィソンもそれに続いた。
「万歳」
親子3人の破天荒にさすがのミジャも吹きだした。
「まったく・・・」
食事している時にジェヒは言った。
「母さん――夜は婚家に行ってくるよ」
「婚家? おばあさんの家?」
「いいえ。フィソンの祖父母の家です」
「ああ、そうよね。1年が過ぎたわよね」
「はい」
「心配せず行ってきて。もちろん行ってこないと」
「はい、ありがとうございます――それでですけど・・・」
「泊まってくると?」
「はい」
「そうしなさい」ミジャは頷く。「1年ぶりに会いにいくんだもの。あなたも行く?」
「当然だ。婚家なんだ」
「分かった、分かった。聞いてみただけよ。婚家でなくても1人でいないくせに」
ジェヒは笑ってミジャを見る。
「よく知ってるね」
「この子ったら・・・心配せずに行ってきて。行くなら明日の夕食まで食べてくるのよ」
「ありがとうございます、お義母さん」
「フィソン、行ってらっしゃいね」
「はい」
「フィソンがいないと眠れないから――1泊だけよ」
「はい」
「いい子ね」
クムスンとジェヒは目を見合わせ、頷きあう。
部屋に戻ったミジャにジェヒがついて入ってくる。
「何でついてくるの?」
「母さん――1人で家にくすぶってるより、旅行にでも行ってきたら?」
「けっこうだわ。急に何を言い出すの?」
パンフのようなものをそっと台に置きながらジェヒは言う。
「時間はかかるけど、この時期のオリ島はいいらしい」
ミジャはちらとパンフを見やる。
「俺たちは明日の夜に戻るから行くかどうかはわからないけど、チケットはここにあるよ。ご自由に」
「・・・」
「じゃあ、行ってくるよ」
ジェヒは部屋を出て行った。
「出発」
フィソンのGOサインを受け、ジェヒたちは車で婚家に向けて出かけていった。
ミジャはオリ島に行こうかどうかで迷った。迷ったが、だんだん気持ちはほぐれた。
「そうよ。行ってもいいわね。1度くらいは行ってみよう。秋だもの」
ミジャはチケットを握り、出かける支度にかかる。
クムスンたちの車はノ家の前に到着した。
車を降り、門の前に立つ。
「本当に久しぶりだ。懐かしいな」とジェヒ。「泣いてはダメだぞ」
「もちろんよ」とクムスン。
テワンを先頭にノ家の人たちも迎えに出てくる。1年経ったがウジュの姿もある。
「お父さん、お母さん・・・」
「クムスン、来たか」とピルト。
一番後からお腹の大きなソンランを出てくる。
「はい、お元気でしたか?」
「もちろん、元気だったわ」とジョンシム。「いらっしゃい」
「お二人ともお元気で?」とジェヒ。
「もちろんだ。よく来た。フィソン、よく来た」
ジョンシムも呼びかける。
「フィソン」
”どこのおじいちゃんとおばあちゃんだ?”
そんな表情のフィソンにピルトは顔を近づける。じゃがんで呼びかける。
「フィソン――忘れちゃった?」
ただ突っ立ってるフィソン。
「1年も会わなければ忘れるわよ」とジョンシム。「フィソン」
「そうか、フィソン。おじいちゃんとおばあちゃんだ」
「・・・」
ジョンシムはフィソンの手を取る。
「そうよ、フィソン。おじいちゃんとおばあちゃんよ」
「・・・」
「大きくなったわね――おばあちゃんが抱っこしようか」
「待て、俺からだ」
ピルトはフィソンを抱き上げる。
シワンが言う。
「ああ、フィソンが来たんだな。見ない間に男らしくなったな」
「いらっしゃい」とソンラン。
「よく来た」とテワン。
「本当に会いたくて。お変わりありません?」とクムスン。
「お久しぶりです。お元気でしたか」とジェヒ。
「みんな元気でとても会いたかったよ。さあ、中に入って」
クムスンとジェヒは後ろから手をつないで中に入っていった。
夕食時の最初の話題はジョンシムのCM出演の話だ。
「お母さんがCMに出るんですか?」とクムスン。
「私はあなたが美容師の試験に2回で受かったのが不思議よ」
「お母さん、私の実力を見下してるようですね。本当にいい腕なんですから。2回は快挙なんですよ」
ジョンシムはピルトを見た。
「まったく、偉そうになっちゃって――ずいぶん出世したのね」
周囲から笑いが起こる。
「お母さんの方が偉そうで首にギプスをはめてますよ」
またまた笑い声。
「ご飯をちょうだい」とフィソン。
「ご飯?」とジョンシム。
大笑いが起こる。フィソンもようやく場に和んだようだ。
「それじゃあ、私のを分けるわね」
そして家族の記念写真を撮ることになった。
難しい顔で座っているピルトに後ろからテワンが言った。
「父さん、カメラを睨みすぎだ」
「お前のようにはいかないよ」
「母さんは何だよ、それ。それでコマーシャル大丈夫?」
「街の写真屋でも緊張してしまうの。困ったわ」
「いいえ。お義母さんが一番自然です」とジェヒ。
「演技がうまいのかな?」
「お母さん、かなり重病ですよ」とクムスン。
「何ですって、この娘はもう」
「あっ、少し待って」とソンラン。
「どうした?」
ソンランはシワンを見て答える。
「お腹を蹴られて」
「陣痛かと思った」
「予定日はまだよね?」
「何してるんだ、静粛に。集中しろ」
ジョンシムは前を向き直る。カメラ目線になる。
「早くお願いします」
「じゃあ、行きます。おとうさん、力を抜いて。いいですよ。1,2,3」
シャッターが切られる。
「いらっしゃいませ」
「ナ先生の予約で」
「お待ちください――ナ・先生、お客様です」
長い髪を後ろで束ね、美容師の風格も出たナ・クムスンは振り返る。
「いらっしゃいませ。少しお待ちを」
終わり
★最後までお読みいただきありがとうございました
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