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韓国ドラマ「がんばれ!クムスン」(159)






韓国ドラマ「がんばれ!クムスン」(159)


 カットのテストが始まった。4項目において80点をクリアしなければならない。難関だ。
 制限時間で1人が振り落とされ、次のテストに進んだのは二人だった。
 制限時間ぎりぎりでクムスンはドライヤーを置いた。
「ほぼ同時だったわ。セーフよ」
 かろうじて採点結果にゆだねることができ、クムスンは胸を撫で下ろす。 


 ジェヒはウンジュと会った。
「連絡が遅れたな。悪い。忙しかったんだ。元気だった?」
「もちろんよ。怪我の具合はどう? 大丈夫?」
「回復に向かってるよ。心配はいらない」
「よかった――院長から許可をもらえたんだって?」
「知ってたか。俺から話したかったのに・・・」
「おめでとう」
「ありがとう」
「・・・結婚式はいつ?」
「日程はまだだが、早いうちに」
「そう・・・だけど――ジェヒさん、私に揺れてたの?」
「言っただろ。人にやるには惜しいと」
ウンジュはクスッと笑った。
「ほんとにおめでとう」


 キム室長が採点結果を持って現れた。
「結果を発表するわ。グラデュエーションから――イ・ヨニ・・・92点。ナ・クムスン・・・80点」
 またまたぎりぎりセーフで大きく息を吐くクムスン。
「次にレイヤー・・・イ・ヨニ・・・78点。ナ・クムスン・・・81点。惜しくもヨニは不合格。クムスンはぎりぎり合格。おめでとう、クムスン」
 クムスンは信じられない顔。
 スタッフ全員、祝福の拍手。次々に祝福と期待の声がかかる。
「おめでとう。もっと頑張って」
「ありがとうございます。だけど、本当に合格したんですか?」
 キム室長は笑いながら答える。
「そうよ」


 外に出てきたクムスンはガッツポーズして携帯を取り出す。かけようとしたら、近くから声がかかった。
 顔を上げるとキジョンが立っていた。
「先生――」
「少しいいかな?」
 二人はカフェルームに落ちついた。
「結婚するんだってね。本当におめでとう」
「ありがとうございます――それと・・・これからは楽にお話ください。ただ、クムスンとお呼びに・・・」
「それでいいの?」
「もちろんです」
「ありがとう――後悔してるよ。最初からクムスン・・・約束どおりお前を育てるべきだった」
「・・・」
「結婚する時、約束したんだ。韓国に帰国したら――必ずお前を呼んで一緒に暮らそうと」
「・・・」
「だけど結局、約束を守れなかった――だから、堂々と会えなかった。ママは病気で・・・いまさら捜して助けてくれとは言えなかった。それで卑劣なことを――あまりに劣悪で許されないことだ。あらためて、謝るよ。一生、謝っても許されないよ。本当にすまなかった」
「いいんです、先生。もう忘れたことです。本当です。それに理由は――欲分かっています。ママを愛してたからでしょう」
「・・・」
「もういいんです。正直なお話が聞けたから私はいいんです。ですからもう謝らないでください。私もよく謝りますが、”すまない”よりも――”ありがとう”がいいわ」
「ありがとう」
 クムスンははにかむ。
「家に1度来てほしい。時間はあるかな?」
「もう少しあとで・・・あとで・・・もう少し時が過ぎたら」


 さわやかな顔色でキジョンは帰宅した。
「どこに行ってたの」
 ヨンオクが出てきて訊ねた。
「クムスンに会った。手術する前に会いたくて」
「そうだったの」
「手術前に――家で一緒に食事したかったが、もう少し時が過ぎたら来るそうだ」
「たぶん、ウンジュのことがあって・・・」
「俺もそう思う――手術日が決まった」
「いつなの?」


 スンジャはスーパーでジョンシムに出くわした。
「あら、こんにちは」
 スンジャの方から愛想よく挨拶した。
 ジョンシムも愛想よく挨拶を返す。
「ここでも時々顔を合わせますね。お変わりありませんか?」
「もちろん私たちは・・・そちらは?」
「ええ、私たちもです――聞きましたわ。よかったですね。おめでとうございます」
「・・・」
「クマに話を聞き、私もとても嬉しくて――」
「何を・・・?」
「テワンさんの単独CMですよ」
「ああ・・・ええー」
「誰にでも、つらい無名時代があるというけど――テワンさんは本当に今まで苦労なさったわ」
 スンジャの豹変ぶりに腹が笑い出しそうだったが、ジョンシムはこらえ、上品な笑顔で対応した。
 しかし、スンジャは舌をすべらし過ぎた。
「最終オーディションでも何百回も落ちたし・・・だから、身体の苦労よりも心はどんなに傷ついたか」
 ジョンシムの表情は次第に厳しくなった。
「でもすばらしいチャンスが到来したから、今回の仕事を契機に今までの苦労をはねのけて、空高く飛び立つことを心から祈っています」
 ジャンシム愛想笑いを浮かべる。
「あちらに用があるので、これで」
 そう言うなりさっさと行ってしまう。
 スンジャは拍子抜けする。
「はい・・・それじゃ」
 最後は舌打ちする。


 スンジャは不機嫌になって帰宅した。
 ジョムスンが訊ねる。
「何て顔なの?」
「お義母さん・・・ク君に――クマにいい男性の紹介を頼みました?」
「いや・・・」
「ずいぶん前に話したのに・・・クマは孫じゃないですか?」
「そうじゃなくて、テワンさんはどうするの?」
「いえ、テワン・・・婚約者でもないのに、なぜテワンの話を出すの?」
「あら、何を言うのよ。先日はおんぶしてもらったのに?」
「おんぶだなんて誰がですか? クマは若いし多くの男性と交際した方がいいわ。まだ相手を決めなくても」
 スンジャはジョムスンのそばににじり寄った。
「だから・・・ク君に、いい人を紹介してもらってください」
「まったく、何てことを・・・鼻の穴をふくらまして鼻息を私に吹きかけるの?」
 そこにクマが元気な声で帰ってきた。サンドも一緒だ。
「ああ、腹が減った――早く夕食を頼むよ」
 クマが部屋に上がってくる。
「クマ、ママが見合い先を探せと言ってるよ」
「ママ、しつこすぎるわよ」
「ただ私は・・・いろんな人と交際してみて幅を広げるのもいいと・・・」
「まったく、お前は」とサンド。「クマはテワンが好きなんだ」
 クマは怒って部屋に引っ込んだ。


 シワンたちの新居にピルトたちが訪問した。
「父さん、母さん、この子がウジュです」
「ウジュ、お二人に挨拶を」 
 ウジュは頭を下げて挨拶する。
「こんにちは」
「ああ、こんにちは。お前がウジュか。会えて嬉しいよ。いい顔してるな」
「そうね――とても賢そうな子だわ。ねえ、ウジュ――こうして会えて本当に嬉しいわ。よく来たわ。おじいちゃんとおばあちゃんよ」
「そうだ。よく来たな、ウジュ」
「ウジュ、抱きしめてみたいんだけど――いいかしら?」
「・・・」
「大丈夫?」
「・・・」
 ジョンシムはウジュに歩み寄る。ウジュは素直に身体を預ける。ジョンシムは愛情いっぱいでウジュを抱きしめる。
「近くで見たら、ママによく似てるわ。だから美男なのね」
 ジョンシムは髪を撫でながら言う。
「よく来たわね。おばあちゃん家にも遊びに来てね」
「ウジュ、お返事は?」
「はい」
「いい子ね」

 ソンランが食事の支度をしているとジョンシムが現れた。
「何か手伝おうか?」
「大丈夫です。あとはこれを温めるjだけです――家族全員で来ると思ってました」
「ずいぶん作ったのね」
「味は保障できませんけど」
 ソンランはフライパンを置いてジョンシムを見た。
「お義母さん・・・ありがとうございます」
「何が?」
「感謝してます。ウジュを本心から受け入れてくださって」
「もちろん、本心よ。フィソンもよそに行くし――私は本当に浅はかな人間よ。ウジュを抱きしめながら――フィソンも新しい家で歓迎されますよう願った。フィソンも新しい家で温かく迎えられますようにって」
「・・・」
「今まで辛くあたったわね」
「正直、そうでしたね」
「・・・」
「でも、いいんです。お義母さんのショックに比べたら、何てことありません」
「分かってくれてありがとう。すべて忘れてちょうだい。いつまでいるかわからないけど、ウジュがいる間は私たちがかわいがるわ」
「ありがとうございます。お二人の気持ちのように、フィソンも新しい家で愛されて育ちますよ」
「そうね。きっとそうなるわ」

 食事もすみ、シワンたちはピルトたちを見送りに出た。
「もう戻りなさい」
「はい。お気をつけて」
「ウジュ、あいさつは」
「さようなら」
「ウジュ、いい子でな――行こう」
「おやすみなさい」
「ああ」
 少し行って二人は振り返る。
「お家に入りなさい」
 二人を見送り続けながらソンランはシワンと顔を見合す。
「ウジュ、行こうか」とシワンが言った。
 手を取って歩き出すとウジュが訊ねた。
「何と呼べばいい?」
「・・・」
「シワンさんと呼ぶの?」
 シワンはウジュの前にしゃがんだ。手を取った。頬を撫でた。
「いいや――お前の好きでいい。呼びたいように呼べ。シワンさんが嫌ならおじさんでもいい。そんなことは――重要なことじゃない。お前は俺の息子なんだ」
「・・・」
「息子よ」
 ウジュはシワンの腕の中に飛び込んだ。
 シワンはウジュを抱き上げた。
「よし、行こう」
 先に立って歩く二人をソンランは嬉しそうに眺めた。それから、遠ざかる義父母を振り返った。

「秋風がいいな」とピルト。
「本当ね」 


 クムスンはフィソンを連れてオ・ミジャ宅を訪れた。
「院長・・・」
「いらっしゃい」
 ミジャはフィソンを見つめおろす。
「座って」
 ジェヒがフィソンを誘導する。
「フィソン、あっちに座ろう」
 ソファに腰をおろしたミジャの前にジェヒとクムスンとフィソンが立った。
「母さん、フィソンです」
「フィソン、ご挨拶は?」とクムスン。
「こんばんは」
「あなたがフィソンなのね。座って」
 3人は腰をおろす。
「4歳よね」
「はい」
「そう・・・本当にかわいい子ね」
「ありがとうございます、院長」
「ええ、当然に感謝しないとね。その意味で3つの要求があるの」
「お話しください」
「ひとつめ――同居するのよ」
「もちろんです。同居を望んでたんです」
「ふたつめ――独り身の姑の前で過ぎた愛情表現をしないこと」
「はい」
「母さん・・・」
「あなたは黙ってなさい。最後のひとつ――子供は2人以上よ。本来は3人だけどフィソンがいるから、あと2人ね」
「・・・」
「それ以上でもいいわ」
「母さん、それはいい考えだ。生めるだけ生むから心配しないで」
 ジェヒはクムスンを見た。
「ダメか?」
「それはまだ・・・院長――まだ考えたことがなくて・・・よく考えてみます」
「嫌だとでも言うの?」
「重要な問題なのでじっくり考えてみます」
「わかったわ――それから美容室に復職しなさい」
「あの・・・院長――”秀”でカットテストに合格したんです」
「そうなの。よくやったわ」
「だから今の店でデザイナーになりたいんです。正々堂々と実力でなりたいんです。ですからお願いします」
「・・・」
「母さん、そうさせてあげて」
「分かった――そうしなさい」
「はい。院長――私、努力します。前にも話しましたが――より一層、前進できるように頑張ります」
「そうね。ふたつめは忘れないで」
 二人は苦笑した。
「はい」
「母さん、それは俺が守れそうにないよ」
 ミジャはジェヒを睨みつける。
「さあ、食事にしましょう。フィソン、夕食の時間よ」
 ジェヒはフィソンを抱いて言った。
「母さん、抱いてあげて――フィソン、おばあちゃんだよ」
 最初、嫌そうにしたミジャだが、抱かされると表情が変わった。
「あらあら、まだおっぱいの匂いがするわ。あっははは、笑ってるわ。まあ、かわいい」
 フィソンに頬を摺り寄せる。最後にキスをした。
 その姿にクムスンは嬉しそうにした。

 ジェヒがフィソンを抱いて玄関を出た。
「寝込んじゃったな」
「・・・」
「すぐタクシーが来るよ」
 クムスンはジェヒを見つめる。
「どうした?」
「何だか夢みたいで」
「夢じゃないさ」
「よけいに夢みたいよ」
「・・・」
 クムスンは自分から顔を寄せてジェヒにキスをした。
 キスを黙って受け、ジェヒはクムスンを見つめる。
「ありがとう」
「・・・」
「感謝してるわ――どう表現したらいいのかわからない・・・私の知ってる言葉であなたへの愛と感謝を表現できないの」
「・・・」
「だから暮らしながら表現していくわ。あなたが空腹なら食事になり、疲れた時には優しく包み込み、悲しい時は一緒に泣き、嬉しい時には笑顔になる。痛むときには薬になって、腹が立つときにはサンドバックになるわ」
「本当に?」
「あなたの望む限り・・・」
「それじゃ俺に望むことは?」
「もうたくさんもらったわ。でも――ひとつだけあるの」
「何だ?」
「私より先に死なないで」
「・・・」
「私と末永く幸せに暮らして」
 ジェヒはクムスンの額にキスをした。
「約束するよ。俺たち3人――必ず幸せになろう」
「はい。私たち3人、幸せになりましょう」
 クムスンはジェヒを”ジョンワンの丘”に連れてきた。
「ここか?」
「ええ、ここよ」
「フィソン――ずっと向こうにパパがいる。挨拶しないと。パパ、こんばんは、って」
「パパ、こんばんは」
 3人は丘から夜空の遠くを見つめた
「ノ・ジョンワンさん――フィソンを任せてください。約束します。フィソンが成人した日、あなたの話をします。手伝ってください。いい父親になれるように。これから俺たちは家族になります。お互いを大切にし尊重しあいながら最善を尽くします」

 ジェヒたちにはジョンワンの無言のエールが聞こえた。

 ピルトはクムスンの帰りが遅いのを心配しだした。
 そこにクムスンが帰ってきた。
「あっ、お義父さま」
「ああ、お帰り」
 ピルトは表の門を閉める。
「寝てしまったのか――ご挨拶は無事に?」
「はい。してきました」
「温かく迎えてくれたか?」
「はい。とても温かく。ウジュはどうでしたか?」
「いや・・・とても賢くかわいいし、ソンランの息子はケチのつけようもない。はっはは」 
「やっぱり予想通りだわ。私も会いたかった」
「家に来るはずだから会えるさ」
「でも、ここで何を?」
「もう入るよ。行こう。重いだろう」
「もしかして私を待って?」
「いや、眠れないしな・・・入ろう。俺によこせ――おっとと・・・フィソン、中に入ろうな」
 フィソンを寝かせ、クムスンは言った。
「お義父さま、何か召し上がりますか?」
「もう寝るからいい。俺を気にせずにお前も休むんだ」 
 ピルトは立ち上がる。部屋を出ていきかけてクムスンを振り返る。
「クムスン――」
「はい」
「実は――気になるんだ。お前に悪いことを言った」
「お義父さま・・・」
「お前を嫁がせるからいつまでも胸が痛いんだ。いくら寂しくてもどうせ嫁に出すのに、幼いお前の心に傷を残し、気持ちよく出すべきなのにすまなかった」
「お義父さま・・・違います」
「クムスン、気に留めるな。こう思ってくれ。お前を大切に思うばかりに、嫁に出すのが寂しかったんだと」
「お義父さま・・・」
 ピルトは気持ちをこめて言った。
「クムスン――今度こそ、幸せになれよ」





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