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雨の記号(rain symbol)

韓国ドラマ「アイリス」最終話 後半

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 ヒョンジュンはチョリョンに呼ばれた。化学兵器として殺傷力の高いソマンガスがアイリスの手に渡ったことが伝えられた。
 話がすんだ後、ソンファはスンヒのことを訊ねる。
 ヒョンジュンは答えた。
「もう、大丈夫だ」

 ショッピングモールを襲撃してチン・サウ率いるテロ隊の作戦が開始された。
 特殊部隊が突入を開始するが、出入り口で地雷原に触れて爆発が起こる。
(最終話 前半ラストより)


 人質を取り、防御体制を固めたテロ隊攻略を試みた武装チーム(SWAT)だったが、地雷原にかかって撥ね返され、死傷者が出た。その報はすぐ大統領室にもたらされ、大統領の指示で室内にTP(テレビ会議システム)が準備される。
 現場での指揮権はNSS(TK1→ヒョンジュン)に託されることになった。
 ヒョンジュンはショッピングモール内の状況を把握することを優先させる。
 ファン・テソンがコンピュータを操作し、ショッピングモール内の映像を引っ張り出した。テロ隊が意図的に送ってよこしているもののようだ。

 スンヒはパク室長が止めるのも聞かず人質犯の立てこもる現場に向かった。

 人質の監視カメラの映像はNSS本部にも送られた。人質とテロ隊の様子が映し出される。生物化学用防毒マスクを着用したテロ隊の姿から、ヒョンギュ科学室長は「生物化学の武器が準備されているのは間違いない」と断定する。
 人質事件の報はチョリョンらのもとにももたらされた。チョリョンはアイリスの起こした行動とみてソンファに指示をだし、ピョンヤンとの協議や状況の把握に動き出す。
 モール内の地図を見ながらテロ隊攻略の糸口を模索しているヒョンジュンのところにスンヒがやってくる。
「ここはテソンがいるからいい、君は本部に戻れ」
 ヒョンジュンはスンヒを追い返そうとするが、
「本部で気にするより一緒の方がいい」
 とスンヒはゆずらない。
 言い争っている場合でもない。ヒョンジュンはスンヒの説得をあきらめる。

 テロ隊を仕切るサウは配下に命じた。
「手はずどおり、こちらの要求を出せ」
 傭兵のリーダー格の男がカメラ映像に登場し、我々は現在107名の人質を確保している、と切り出した。
「出入り口は完全封鎖し、ソマンガスを充填した爆弾を要所に配置した。明日午後7時、チョン・ミョンホ大統領が南北首脳会談を発表すると聞いた。我々の要求はチョン・ミョンホ大統領が、首脳会談の中止を発表することだ。さらに、南北経済協力はもちろん、南北対話を中止し、ホットラインを切断する声明も要求する。明日午後7時、会談の場で我々の要求を発表しない場合、ここの107名はもちろん、数千人の市民がソマンガスの犠牲になる」
 男は銃を取り出した。引きずり出した人質を這い蹲らせ、その背に向けて発砲した。目をおおわんばかりの無慈悲、冷酷。現場で恐怖の悲鳴があがる。それを黙らせるためほかの者にも撃った。
 得意満面で戻ってきたリーダー格の男をサウは問い詰めた。
「誰の命令で人質を殺した」
 男は平然と答えた。
「テロとはこうやるものです。・・・それが成功の秘訣です」
「不必要な犠牲は我々の目的じゃない」
「これが私と仲間のやり方です」
 サウは男に銃を向けた。
「お前のいうとおりなら、俺がお前を殺せば、他の者は俺に恐怖を覚えるだろう。最後の警告だ。今度、俺の命令に背けばお前は終わりだ」

 テロ隊の要求はヒョンジュンによって大統領に伝えられた。

 双方、にらみ合いが続き、小康状態に入った。対策本部にソンファも姿を見せる。スンヒに向け、ソンファは一瞬疑いの目を向ける(この演技にはシビレタ。彼女についてヒョンジュンに見せたのとは別の表情・・・この女優も生きた演技をする)。
 サウに第二の要求が伝達される。その時、NSSもそちらに出向いて交渉を行いたい、と申し入れをしていた。
 サウの前に交渉に現れたのはヒョンジュンだった。
 サウは人払いし、ヒョンジュンとの交渉に臨んだ。
 ヒョンジュンは自分たちの昔について語ろうとするが、やめろ、交渉にきたんだろ、とサウは話を遮ろうとする。ヒョンジュンはなだめて、昔の刺青の話などを続けた。

 ヒョンジュンを一人交渉の場に送り出したスンヒとソンファは同じ表情をしている。愛する男の身を案じる不安げな表情である。

「やめろ」
 サウはテーブルを叩いた。
「ここで、そんな話をしても無意味だ。俺もお前もあまりに遠くに来てしまった」
「お前についてわからなくても、ひとつだけわかることがある。お前の選んだ道は間違った。お前は今、後悔している。間違っているか? 昔のお前は少なくとも女や子供を人質に取るような卑怯な男ではなかった」
「もういい。やめてくれ」
 サウはヒョンジュンに背を向けた。抑制した言葉でアイリスの要求を伝え始める。
「北に収容されているアイリスの関係者を即刻解放しろ」
 要求は大統領室を通じてチョリョンのもとに伝えられた。

 要求を受け入れた後、人質を解放できる可能性とテロ隊を鎮圧できる可能性について、大統領はヒョンジュンに訊ねた。
「要求をすべて受け入れたとしても、正直、保証はできません」
 ヒョンジュンは答えた。
「テロ隊のリーダー、チン・サウは反テロ作戦できたえた有能な男です。あいつが率いている以上、犠牲を出さずに事を処理するのは不可能です。犠牲を最小限にとどめるよう努力するしかないでしょう」
 
「相手の条件をすべて呑んでも、人質の全員解放は不可能」
 それならば・・・NSS本部は要求をすべて呑むと見せかけての侵入作戦を決定した。

 ヒョンジュンは一人で再び交渉の場に臨んだ。
「要求はすべて呑むから、女と子供を先に解放してくれ」
 ヒョンジュンは続けた。
「人質全部ではない。女と子供だけだ」
「いいだろう。連れて行け」
 サウは応じた。
「女と子供たちを解放してやれ」
 配下に命じた。
「それはできない」
 部下らはサウに向けて銃を構えた。
「何をしている」
「ここにいる人質をみんな殺すのが私の受けた命令だ」
 サウは叫んだ。
「誰だ。誰がそんな命令を出した」
 男は薄笑いとともに答えた。
「ミスター・ブラック」
 この時点でサウはアイリスに裏切られ、捨てられたわけだった。
 サウとヒョンジュンは身動きが取れなくなった。
 二人を取り囲んだ傭兵らの銃がまさに火を噴こうとした瞬間、サウ唯一の側近が一人目がけて銃を放った。傭兵らがひるんだ間隙をついてヒョンジュンは一人から銃を奪い取った。銃を乱射しながら物陰に逃げ込んだ。サウも身をかくし、銃を撃ち返した。サウとヒョンジュンは始めて共通の敵を相手に銃撃戦に突入する。NSS要員やSWATも建物内へ突入を開始する。
 サウはこの銃撃戦で命を散らした。ヒョンジュンの腕の中で死んでいった。ヒョンジュンを庇い、飛び出して敵方の注目を集めるような乱射を行ったところを見ると、ここを自分の死に場所と決めたようでもあった。

 サウの死を目の当たりにして動揺の収まらないチェ・スンヒのもとに電話が入る。電話を受けた後、スンヒに苦悩の表情が浮かぶ。大統領の命を狙う次の刺客はスンヒなのか(電話をよこしてきたのはミスター・ブラック?)。
 

 北の代表団を迎えての南北首脳会談の記者会見は予定通り行われることになった。チョン・ミョンホ大統領はヒョンジュンらの警護を受けて記者会見場に向かった。
 パク室長から、遺留品らを持ち帰り、その分析を進めているところだ、との報告を受けた後、ヒョンジュンはスンヒがどこへ行ったかを訊ねる。ヤンジョンが記者会見場にいるはずだと答える。
 ヒョンジュンの表情は陰る。
 大統領を乗せた専用車が記者会見場に近づこうとする頃、パク室長から緊急の電話が入る。
「大変だ。我々がショッピングモール内で射殺した人質犯の多くは偽装されたモール内の客だった・・・」
 人質事件は解決し、テロ犯も全員射殺したかに見えたが、彼らの大半は巧妙な偽装作戦をとりショッピングモールから脱出していたのだ。チン・サウ命令下の作戦とそこから次に向かう別の作戦が同時進行していたようである。
 ショッピングモール内を脱け出した傭兵の残党らは、大統領の記者会見場に集結した(テーマを先鋭化するためとはいえ、逃げ出した傭兵が一人もいない風なのは信じられない)。
 彼らの動きとは別に、チェ・スンヒも謎の行動を取る。大統領らの狙撃ポイントに位置を確保し、その登場をじっと待っていたからだ。
 大統領と北の女性代表が握手を交わし、いざ、会見が始まろうとする直前、一発の銃声が響いた。それはチェ・スンヒの放った一発だったか。大統領の狙撃をもくろんだ者を撃ったように見えた。
 その銃声がきっかけとなり、会場は騒然とした空気に包まれた。記者会見席に陣取った傭兵らもここぞといっせい蜂起する。警護隊が大統領の周囲を固めたため、やむなく決起したようにも見えた。
 激しい銃撃戦が展開する中、大統領は二三の警護要員に守られ避難を開始する。その後を追っていくのは大統領秘書室のホン・スジンだ。
 ドアを押して外へ脱け出て行こうとする瞬間、彼女の銃口が火を噴いた。警護要員が撃たれ、大統領は孤立した。
 背後を振り返った大統領はその相手に眼(まなこ)を開いた。
「アイリス・・・お前が」
「あなたは私が収まる器には小さすぎました。その入れ物を壊します」
 そう言って銃を撃とうとした瞬間、別の銃弾が彼女の背中を貫いた(ホン・スジンのリンとした倒れ方もなかなか渋い)。
 後ろから駆けつけたのはヒョンジュンとスンヒだった。



 南北首脳会談は正式に決定された。

 自分の代わりに銃弾を浴びて倒れたソンファを病院に花を持って見舞った後、ヒョンジュンはチョリョンと言葉を交わした。
「明日、ピョンヤンに帰る。今度は委員長をお連れする」
「その時、俺は何をしているだろう。・・・確かなのは、大統領のそばにはいないことだ」
「今度会った時は、お互い争いたくないもんだ」
 スンヒはヒョンジュンに切り出した。
「私、話があるの」
 大統領が現れた時、自分は彼を撃とうとしたのを打ち明けようとするが、心の中のわだかまりはそう簡単に取れるものじゃないよ、とヒョンジュンは逆にスンヒを慰める。彼にとってスンヒの行動は予測のついていたもののようだ。

 NSS内に平和が戻ってきた。

 NSSを辞めたヒョンジュンとスンヒは二人で楽しい日々を過ごす。これからの二人に訪れるのは、陰謀や謀略の渦巻く場所とは無縁のつつましくも平穏な日々のようだ。
 
 しかし、二人に突然悲劇が訪れる。贈り物を買ってスンヒのもとへ駆けつけようとしていたヒョンジュンは何者かによって撃たれた。銃弾は頭部を貫いた。
 愛し合う二人にとって、どちらの死も痛ましい。ヒョンジュンの絶望的な死の表情と幸せ絶頂のスンヒの表情の対比が鮮やかなラスト場面だった。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 最後に、ヒョンジュンを狙撃したのはいったい誰なのかというのを考えてみた。常識的に言って、トカゲの尻尾が切れたに過ぎない「アイリス」の陰謀は、その後も爪を研いでいるに違いないし、そうした時、次に向かうための最初の標的としてヒョンジュンが狙われたのだと考えるのは自然である。
 次に考えられるのは、大統領の手によって彼が消されたという線。彼は強引な政治力を駆使して北との統一をもくろんでいる。ホン・スジンは「器が小さい」と言ったが、ひょっとすると北との統一を成し遂げ、最初の大統領になるのは自分だと確信してやまない人物かもしれない。
 この先、自分の邪魔になるかもしれないヒョンジュンをこの際消してしまえ、と断を下した可能性もないではない。
 個人的な恨みで撃たれたというのは論外。
 
 
 さらに現実的な発想とは別の次元(ドラマのためのドラマとして)でも考えてみたい。このように有能な人間らが国を興していく仕事に携わらず、小市民的でデスペレートな暮らしに安住していいのか。そういった人間を忌み嫌い、国士を賛美する風潮が韓国内にあるかいなかという問題である。
 もしあるなら、市民が彼を撃ったということになるだろう。
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