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藤井聡太王位 VS 里見香奈女流王位【記念対局】から
里見香奈女流王位が下座に着席して藤井王位の入室を待っていた。
やがて藤井王位がしずしずと入室。程なく両者、丁寧に挨拶し合って対局の準備が始まる。
対局のハンディとして、里見女流王位に先手番と長い持ち時間が与えられている。藤井王位の持ち時間は10分(?)。里見女流王位は1時間(?)。そして切れたら1手60秒未満のルール。
戦いは大方の予想通り、里見女流王位は中飛車。藤井王位は居飛車。両者得意の戦型で始まった。
双方、銀桂と歩を持ち合って中盤へ。
藤井王位が相手を抑え込めるか、里見女流王位が突破口を見出して相手の薄い陣形に攻めかかっていけるかの戦いになった。
しかし、藤井王位は攻撃は最大の防御の戦いを徹底した。前線に立った
右銀は後退せず、そこを足場に小駒を巧みに使い、里見女流王位の捌き(特に大駒)のスペースをじりじりと狭めていった。
戦いは5筋から9筋の間で続いたが、先手陣の飛車角は自陣にくすぶったまま、前線に飛び出していけない。
常に手の遅れる展開となった里見女流王位は、4六に飛車金両取りの角を打たれて苦吟に沈んだ。
5九に戻れば金取りを防げるものの、飛車が自由に動き回れる位置ではない。
里見女流王位は飛車取りを受けず、5四歩と打って攻め合いに出た。
藤井王位は秒読みに入っているが冷静だった。藤井王位は先手の飛車を取らず7六竜と竜の位置を変えて遠く1筋を睨む。場合によっては先手の守りの薄い1筋に竜を活用する狙いである。
守りの薄い1筋から1六と歩を突き、同歩に2六の桂馬の利きを活かしての1四歩打ちの守りは先手いかにも苦しい。
戦いのペースを握った藤井王位は1七歩成りで同玉を誘った後、1四歩で先手銀を3六に引き上げさせ、1筋展開を目指して6五竜とする。
この後、互いに1筋の歩を成りあう展開があり、1四歩と桂取りに打たれた藤井王位は2五に桂を飛ぶ。
里見女流王位は同歩に4六に歩を突き出す。角の睨みで竜の位置を変えようとの狙いだが、藤井竜王は同銀引き成りで応じる。先手は角を切って銀を手中にする。
藤井竜王4六の角を取らずに2四に交換した桂馬を打ち据える。次の3六銀取りが遠見の角の睨みを含んだ両王手となる。
それを放置して先手は4四飛車と歩を取って走る。
次の3六桂にどう対応するのか…。
藤井竜王は1分の秒読みをぎりぎり使って3六桂を実行する。
里見女流王位も1分の読みいっぱいで角の睨みを外して1七玉とする。
ここで藤井竜王は4三歩と打つ。勝利を見切った辛い一手である。
先手は勝負を諦めずに2四に飛車を展開する。
素人が無駄な手を指せば逆転の目もありそうだ。相手が藤井竜王ではすでに大勢は決している。
藤井竜王は落ち着いて4六の角を竜で取り払った。
里見女流王位は離れた5四の銀を飛車で取り返す。藤井竜王は1四の裏から1五に歩を打ち込む。里見女流王位は4九の金を3九に寄せる。
そこで藤井竜王は飲み物を口にした。
立ち合いの人も身を乗り出す。
藤井竜王はおもむろに銀を1六に打ち込む。先手1八玉と下がる。後手、2六歩と桂馬を取って前進する。後手、飛車取りで4五に角を打ち込む。次は桂馬が飛んで空き王手が待っている。
先手4四桂馬と打ち込んで王手する。
藤井竜王は慎重に読んで2三玉とかわす。
里見女流王位は持ち時間をぎりぎり使って投了を告げた。
藤井竜王の完璧な寄せは見事だった。。里見女流王位も勝ちにこだわる執念を見せた。勝負の厳しさを感じさせて素晴らしい対局だった。
藤井王位は里見女流王位の正座に対し、最後まで自分の正座も崩さなかった。精神的にも肉体的にも対等の戦いの姿勢でこの対局に臨んでいるらしい。
人の身体はいろんな事情から常に対等のコンディションとは限らないが、若いながらそういう心がけは立派であった。
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