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藤井聡太七段VS橋本崇載八段戦(順位戦B級2組)から

将棋

2020-07-06 22:52:59

　　藤井聡太七段VS橋本崇載八段戦(順位戦B級2組)から

　藤井七段の将棋はほんとに面白い。佐々木勇気七段に続いて2回戦の相手は橋本崇載八段だった。渡辺三冠と同世代でA級で活躍した時期もある実力者である。
　同世代の旗頭渡辺三冠が棋聖戦で連敗した将棋の内容はしっかり頭に入っていたはずである。
　2人はAbemaTVの早指し将棋で対局していた。居飛車穴組と振り飛車穴熊で対決していたのを見たことがある。
　しかし、公式の対局は今回が初めてだという。
　AbemaTVで２人の対局を視聴しだしたのは午後4時過ぎからだった。
　先手番藤井七段が銀を繰り出して後手陣に攻勢をかけている局面である。攻撃は飛角銀桂と歩の連携でやる、と教えられて将棋を覚えていったものだ。
　しかし、藤井七段はなんと銀と歩だけで敵陣を大きく乱すのに成功しているではないか。

　局後の感想で橋本八段は「４五歩の攻めを軽視していた」と語っていた。彼の口からしきりに聞かれたは「攻めにスピードがあった。対応が遅れた」という意味の言葉だった。
　A級順位まで経験したトップ棋士が、「相手の攻めに対して対応が遅れた」と首をかしげるのはどういうことなのか…？　将棋は一手一手指すもので、交互に一手一手変わりばんこに指すのに手が遅れてしまうのはにわかには信じられない。しかし、藤井七段は橋本八段との対局で指し手の差を広げて勝ってしまった。
　矢倉囲いは金銀3枚の守りは（金金銀）より（金銀銀）の方が上部に対して強固だという。
　橋本八段は右銀を繰り出し藤井七段の攻めに備えようとしたが、矢倉の囲いが一手遅れてしまった。
　すなわち５三から４二、４二から４三に銀が上がる前に、藤井七段の攻めは橋本陣の守備駒をバラバラにしてしまったのだ。
　　
　藤井七段の銀使いも相当なものである。今日の右銀の活躍はそれほどに素晴らしかった。銀使いの名手として羽生九段がしばしば取り上げられる。しかし今日は藤井七段の右銀も遠く敵陣に単独で繰り出し、藤井七段の指に乗って大活躍を見せた。
　
　橋本八段はため息まじりで語った。
　「特に悪い手は指していないと思うのだが、（どんどん）形勢を損ねていってしまった…」

　最後、藤井七段は後手の攻めを切らせる将棋にスイッチした。そのためハラハラドキドキさせられたが、気が付いた時、後手の攻めは途絶えていた。
　藤井七段は終始表情が落ち着いていた。後手が必死の反撃を見せてきた時は、勝ちを読み切っていたのだろう…。